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R2  作者: Mislgi
2/10

02


「どうでしたか?今年の一年は」


会長不在の生徒会室で副会長と執行部が集まっていた。


「駄目、良くてDクラス止まり」


凜は残念そうに答えた。


「堂治郎と明日葉はどうです?」


「こっちはほとんどがFだったよ」


「うちも似たようなもの」


左目に眼帯をした少年、御来屋堂治郎(ミクリヤドウジロウ)と長い髪を後ろで一つに結った少女、清水明日葉(シミズアスハ)が答えた。


「属性と星の成長に期待するほかないですか」


「成長したとて雑魚は雑魚だ」


部屋の陰から声が聞こえた。


「そんなことはありませんよ、K」


楓とレイが部屋に入ってきた。


「例え一人の力は小さくても、協力し合えばどんな大きな力にでも対抗できます」


「ふん、詭弁だな」


Kは鼻で笑うと姿を消した。


「本当、あいついっつもいっつも会長に」


レイはKに対して憤慨した。


「レイ、彼をそんなに悪く言うものではありませんよ」


「でも…」


「分かり合えない相手でも自らがその道を断たなければいつかは分かり合えます」


「はい…」


「まあ、実際あいつの障壁で何度もこの学院が護られているだから、一概に悪くは言えないのは事実だな」


堂治郎は二人の会話を聞き言った。


「今日はこれで解散です、あとは各自の仕事に戻って下さい」


楓と弥生以外は出て行った。


「身体はもう大丈夫なのか?」


「気付いていたのね」


「幼い頃から一緒にいるんだから、少しの変化にも気付く」


弥生は眼鏡を少し持ち上げた。


「少しはリングの力を自分の為に使ってもいいんじゃないか、楓」


「この力は皆の為だけに使うと決めたから、でも…ありがとう、弥生」


そこに生徒会室の扉を叩く音が聞こえた。


「失礼します」


凜が部屋に入ってきた。


「言い忘れていたことが…」


「言い忘れていたこと?」


「これを」


凜はリングから破損したリングエボクの魔法陣を出した。


「エボクのシステム破損なのか、分からなくて」


「分かりました」


弥生は王冠の紋様と星が三つ入ったリングに破損したリングエボクの魔法陣を取り込んだ。


「じゃあ、お願い」


凜は生徒会室から出て行った。


「私はこれを持って西都第一区画に行ってきます」


「でしたら、お父様へこの議事録を届けて頂けないでしょうか?」


楓は弥生に書類の入った封筒を渡した。


「分かりました」


弥生は書類を王冠の紋様と星が三つ入ったクイーンのリングに取り込み、生徒会室から出て行った。


颯太、篠、小夜の三人は食堂で食事を終え、実技場に繋がる渡り廊下を歩いていた。


「此処が実技の練習場らしいけど誰もいない…」


颯太は入り口から中を見ていると篠が奥の方にいる人影を見つけた。


「いや、奥の方に誰かいる」


三人が近付いていくと大剣を持った碧い瞳の長髪の少女が声を掛けてきた。


「君達、新一年かい?」


「はい」


三人はその問い掛けに答えた。


「そうか、わいは三年のアイリッシュ・ストラウス」


「僕は猪上颯太」


「篠政幸、篠って呼ばれてます」


「蓬田小夜です」


三人は自己紹介した。


「基本スキルはもう試してみたかい?」


「いえ」


「じゃあ、試してみるといい」


「式の時に基本スキルの内容は聞いてるよね?」


「サーチとストアですよね」


小夜が答えた。


「そう、サーチはリングの属性や能力の検索、ストアは装備の収納や換装。どちらも入学試験の時に使った模擬リングと本物のリングは性質以外は同じだから難無く使えるよ」


アイリッシュは基本スキルの説明をした。


「まずはストアでリング内に何があるか確認しとくといいよ。大概はスキルにあった装備が入ってるけど」


アイリッシュはそう言うと大剣を剣の紋様と星が三つ入ったナイトのリングに収納した。

「まあ、取り敢えずはやってみることね」


後ろ向きに手を振りながら去って行った。


「んじゃ、早速試してみようか」


篠と小夜、颯太はストアを使ってみた。


篠は制服姿から茶系ロングコートと黒系の衣服を着て、右手に太めの腕輪を着けた姿に変わった。


小夜は制服姿から胴が短めのベストにショートパンツ、そして、二丁のリボルバーが太股のホルダーに納められた動きやすい服装に姿が変わった。


篠と小夜は換装を終えたが颯太だけが何の変化も見られなかった。


「やっぱりポーンじゃ、何もないみたい」


「…のようだね」


篠は颯太の落ち込んだような表情を見て紛らわすように笑った。


「僕は今日はこれで帰るよ、二人は自分の属性と能力を確認して置くといいよ」


颯太はそう言うと去って行った。


「颯…」


小夜は颯太を引き止める為に名前を呼ぼうとしたが篠に止められた。


「今は一人にしてあげよう、表層は落ち着いているけどあいつはプライド高いからな」


「…うん…」


篠と小夜は去っていく颯太の背中を見つめていた。




山側に隣接する学校、西都陽光学園生徒会室では、会長である陽備悟(ヨウビサトル)と副会長である澤村荘司(サワムラソウジ)が会話していた。


「一年は少しはマシになったか?」


指に十字架のついた王冠の紋様が入ったリングを嵌めた短髪の少年、悟が椅子の背もたれに寄り掛かりながら言った。


「Dクラスが数名とEクラスが数十名ってところだから使えるっ程でもないね、けど特質した人物はいる。Cクラスの神楽夜姫、Fクラスながら星が三つの蓑井春翠、この二人はすぐに実戦で使えるよ」


耳に掛かる程の茶髪で指に星が三つ入ったクイーンのリングを嵌めた少年、荘司が答えた。


「向こうはこちらよりも収穫がなかったようです」


室内に悟や荘司より遥かに若い少年、新村斎(ニイムライツキ)が現れた。


「斎くん、戻っていたんだ」


「さきほど」


「それで?」


「相変わらず強力な障壁で護られているので引き出せた情報は一年の大半がFクラスということぐらいです」


「執行部を集めろ」


悟は斎の話を聞くや居直や椅子から立ち上がり、言い放った。


「呼ばなくても、みんなもう来てるね」


華奢な身体に眼鏡を掛けた少女、李飛嵐(リ・フェイラン)がそう言うと室内には体格が大きな少年、暁小十郎(アカツキコジュウロウ)と長髪を色違いのリボンで結んだ双子の少女、音無りりん(オトナシリリン)と音無かりん(オトナシカリン)の三人と飛嵐を合わせた四人の執行部がいた。


「今夜、奴らの戦力を削る、一年だろうと盾、いや戦力になるから連れていって構わない」


悟の指示に執行部の面々は各自、返事をした。


神月学院から少し離れた図書館では一人、颯太は二階の窓から憂鬱そうな表情を浮かべ、溜め息混じりに下を眺めていた。


「…何になるかなんて自分の持つ魔法核次第だけど…まさか最低ランクのポーンだなんてしかも、あれから何度も試したけど基本スキルであるはずのサーチやストアすら使えなかった…試験の時には確かに使えたのに…」


「君、どうしたの?」


長髪に癖がついた少女、上野結菜(カミノユウナ)が声を掛けてきた。


「すいませんが放っておいてくれませんか…」


「残念だけどそれは出来ないよ」


「どうしてですか…」


「もう閉館時間だから」


「…分かりました…」


颯太はそう言って立ち去ろうと振り返った。


「理由はだいたい分かるわ、リングに関することでしょう?」


「どうしてそれを!?」


颯太が驚いたが結菜の姿をよく見ると神月学院の制服を着ていた。


「うちの学院の制服…」


「私もそんな時期があったからね」


本棚の陰から颯太達の様子を伺う陽光学園の生徒がいた。


「暁先輩、図書館で神月の生徒を発見」


陽光の生徒は耳に着けた通信機で小十郎と連絡を交わしていた。


「おっしゃ!わしが行くまで待っとれい」という馬鹿デカイ声が通信機から聞こえ、陽光の生徒は通信機を耳から離した。


「早く此処から出た方がいいわ」


結菜は本棚の陰にいる陽光の生徒に気付き、小声で颯太に話し掛けると星が三つ入ったビショップのリングから手に何かを出した。


「どうしてですか?」


颯太は結菜に尋ねると突然、辺りは灰色の世界へと様変わりした。


結菜は颯太の腕を掴み、すぐさま近くの本棚の陰に隠れた。


「機関も感知してDFF(次元断層領域)を展開したようね」


「これがデフ?」


一階から破壊音が聞こえた。


「何処じゃ〜」


小十郎が図書館の扉を壊して入って来た。


結菜は図書館全体にサーチを使ったが、何の反応も示さなかった。


「サーチが使えない?」


結菜はサーチを何度も試してみたがやはり、何の反応も示さなかった。


「まさか、陽光のジャミング?」


結菜は考えを巡らせて呟く。


「此処で待っていて」


結菜は颯太にそう言うと二階の吹き抜け部分に向かい一階の様子を見た。


「あれが敵」


そこには仁王立ちして周囲を見渡す小十郎がいた。


「そこかぁあ!」


小十郎は結菜の姿を見つけ、飛び上がると二階に着地した。


「さあ、試合おう!」


小十郎は拳を構えた。


「ヴィンスティック」


結菜の手の中から蔦が伸びて絡み合い、杖の形へと変わった。


「そんなもんで何しようゆうんじゃ、わしの装甲は固いぞ」


小十郎は足を踏み締めた。


「どりゃあああ…」


地面を蹴り、拳を向けてまっすぐ結菜に飛び込んできた。だが、結菜に攻撃を躱されて小十郎は壁に突っ込んで破壊した。


「なかなかやるな」


舞い上がる壁の塵の中から出てきた。その瞬間を狙って結菜は蔦の杖を小十郎に投げた。


「ヴィンバインド」


すると絡み合っていた蔦が解け、小十郎の身体に巻き付いた。


「君、行くよ」


結菜は本棚の陰の颯太に向かって言うと結菜と颯太は一階の出口へ向かった。


「またんかい!」


小十郎は身体に巻き付いた蔦を外そうと力を入れるがびくともしない。


「外れんんんん…」


小十郎はさらに力を入れた。すると蔦から煙りが上がりはじめた。


「何処へ行くんですか?」


「一先ず、外に出ないと多分この中にいるよりはマシよ」


二人は図書館から出た。


「よかった、外には敵はいないようね」


並木道の先に図書館の敷地の外が見えた。それと同時に小十郎に巻き付いていた蔦が燃え上がり灰になった。


「逃がさんぞぉおお」


小十郎の馬鹿デカイ声が図書館の中から聞こえた。


「走って」


結菜は颯太に走るように促すと一緒に敷地の外に向けて駆けていく。


「外に出たら学院に向かうといいわ、あそこが一番安全な場所だから」


結菜はそう言うと立ち止まり、図書館の方へ向きを直った。


「あなたはどうするんですか?」


颯太も立ち止まり、結菜に聞いた。


「私はあなたが逃げる時間稼ぎ」


突然、二階の窓ガラスが割れ、小十郎が飛び出てきた。


「そんな…僕も戦います」


「今のあなたには無理よ」


颯太は自分がFクラスのポーンであることを再認識し俯いた。


「でもね、どんな力も最初は小さいものよ、けれど鍛え方次第でどんなものにも負けない大きな力になるのだから、今は逃げなさい!」


颯太は俯いたまま境界へと走った。


「闘う気になってくれたようじゃな、それでこそ男というもの」


「私は女ですけど」


「ん?そうじゃったかこれはすまんかった、だからと言って手加減はせんぞ」


小十郎の皮膚の表面を覆うように炎が現れた。


「シールド強化ぁ!」


「火にシールド、相性は最悪か…でも、あの子が逃げる時間は稼がないとね!」


結菜は両手を広げ、左右の木に魔力を送った。


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