ヘッドフォン少女
耳障りなのだ。
全て、全て…。
人のざわめきが声が機械音が嫌いなのだ。
学校とか人気のお店だとかが音で溢れて苦しい。
耳に響いて頭に言葉が文字が音が詰め込まれて気持ち悪い。
気持ち悪くて叫びそうになる。
全部の音をかき消すように、全部の音を飲み込むように。
そんな風に叫びたくなって世界を無音にしたくなるんだ。
だから人工的ではない。
本当に自然的な自然の音が好きなのだ。
小鳥の小さな鈴の音のようなさえずりが、森で吹く風の爽やかで包み込むような音が、川や滝の透明度の高く澄んだ音が好きだ。
混じり気のない純粋な音を愛している。
でも普段の生活で常に聴けるわけじゃない。
だからこそ私はヘッドフォンをつけているのだ。
流れ出す音楽は主にサントラに偏る。
それでもたまに本当に好きになれる歌手の人とかはいる。
低くて耳に落ちるような男性ボーカルは好きだし、音の波紋を作るような女性ボーカルも好き。
ゆとりある音が声が好きだ。
でもやっぱり人の声の入らないクラシックやサントラは外せない。
クラシックはよく聴きにも行くから親しみがある。
要するに沢山の音が溢れる世界に私達は存在するのだ。
それでも人は音を実感することがあまりない。
私は敏感になり過ぎているだけなのかも知れない。
それでも、何でもいい。
理由なんていいんだ。
無音が愛しい音…静かが愛しい音。
それだけを耳に入れて生きたいんだ。
ヘッドフォンはもう体の一部のようだ。