形の無いプレゼント@タヌキサンタ
まだセミの声がうるさく鳴り響くある秋の夕方 。
「ごめん」
少年はすまなさそうに言った。
そういったとたん少女の膝が崩れ落ちた。
ぽたぽたと雨が降ってきた。
11月、異様に冷たい風が吹きとおる。
それなのにそこらじゅういちゃいちゃしまくりのカップルばっかりだった。
「たっくん。昨日のデート楽しかったね」
「ああ。また今度も行こうな」
「準君。今日も帰りは一緒に帰ろう」
「ああ」
山田 美緒はイライラしていた。ただでさえこんなに寒いというのにこんなにいちゃいちゃしていたら、寒いと熱いの温度差が激しいじゃないか。それに、昨日のデートって、昨日平日だろうが。後、学校に行っている最中に帰りの話をするんじゃねえぇぇぇぇ。
だけどまあ、顔に出したら変な人に見られるのでギリギリのところで我慢する。すぐにでも何かを殴りたいほどだけど……。
「みーお! おはよう。あれ? 今日もイライラしてない?」
木実麗華が声をかけてきた。麗華は美人なうえ、頭もいいので、モテる。すごくモテる。当然性格もよく、美緒とは比べ物にならなかった。後、一応彼氏もいる。恋愛はなんとまあ市民平等じゃないんだろう。
「え……あれ? 顔に出ている?」
「もろ顔に出ているよ。美緒の周り誰もいないし……」
しまった。と美緒は思った。ただでさえ、さえないのにこんな顔していたら、 彼氏どころか友人さえもできないかもしれない。
「え……これで直った?」
「顔は治ったけど、片手で鞄殴り続けるのはやめて!!」
こんな美緒と麗華だけど、友達ではない。麗華がいい人すぎるので、美緒にもかまってくれている。ただそれだけだった。もちろん美緒にはこれといった友達もいなく、麗華がかまってくれるのだったらそれでいっか。楽しいし。なんて思っているのだった。
昼休み、美緒は麗華を誘おうと声をかけた。
「麗華、一緒にご飯食べない?」
だけど、麗華は申し訳なさそうに、
「ごめん。健太君と一緒に食べる約束なの」
といった。なるほど、今日は一人か。なんて美緒が思っていると……、
「あ、あと、今年のクリスマスパーティーはないよ。健太君とデートする日に決まったから」 「え……あぁ、そう」
きょねんのクリスマスはみんなで一緒にクリスマスパーティーをしたはずだった。その時も麗華が誘ってくれたということは……今年のクリスマスは……一人……。
なんという表情をしていたのか麗華は
「あ……ほんとにほんとにごめんね」
なんて念を押してくる。あ……もういいよ。クリスマスは一人で過ごす。と言おうとすると、麗華は 「美緒も彼氏作りなよ」と言ってきた。
「別にいいよ。一人でも平気だし」というと、麗華は、
「ダメだよ。クリスマスで一人は。ちゃんと彼氏とか作っとかなくちゃ。それにいい人がほかにもいるって」
といった。彼氏を作れ。いい人がいるという言葉が重く美緒に刺さる。
実は美緒は9月、阿部 桂馬に告白したうえ、フラれたのである。しかもその場で直接。その時、 美緒は桂馬君だけだこんなにいい人はとか、桂馬君とならうまくいく気がするなんて思っていたのである。
「もういいよ。そんなのどうせ。うまくいかなくで傷つくだけだし」
「ダメだよ。そんな消極的じゃあ」
「そんなの、理想抱いたって、希望抱いたって、キセキ願っても意味ないんだよ。恋したって、どうせ……ど うせ……そんなのかなわないんだよ!!!」
美緒は苦し紛れに言った。そう。一度フラれて美緒が出した結論はそれだった。どうせそんなのかなわないのなら抱かないほうが傷つかなくて済む。だった。
「なんで? なんでそんなに消極的なの?! そんなの言っているからかなわないんだよ!!」
「でも、どうせ希望抱いたってかなわないじゃない。そんなのなら抱かないほうが傷つかなくていいじゃな い!!」
「美緒は……美緒はそれでもいいって思っているの?!!! そんなので……「いいわけないじゃん。それでも傷つきたくないんだよ!!」
「もういい。美緒がそんなんだから、友達も彼氏もできないんだ。美緒なんかもう一人になっちゃえばいいのに」
ああ、どんどんいたちごっこや、売り言葉に買い言葉だ。と美緒は思ったがもう止められなかった。友達も彼氏もできない。そういわれたことに腹が立っていた。
「ああ、どうせできないよ!! だから麗華も早く彼氏のところに行けば?! 私 なんか……私なんかほっといてよ!!」
この言葉を言ったとたん麗華の目から輝くものが落ちた。そのまま教室のドアに向かって走っていった。 その時、教室の中では誰もが口を開かなかった。
「ああ。もうほんっとむかつく麗華」
本当にむかつくのは自分だが怒りの矛先が見つからないので麗華にあたってしまった。
本当に反省している。反省しているのだが、麗華のあの言い方にもほどがあるだろう。友達も彼氏もできないだなんて……と美緒は一人、静まった教室の中で考えていた。みんな美緒から逃げるようにして帰っていったのである。
「ほんっとむかつく」
ひとりで悪態ついてみる。誰も返事をしてくれないことがこんなにさみしいこととは。まあ、今に分かったことじゃないが……すると……ドアのほうからカタカタっと小さな音が聞こえてきた。
「誰?!」
と、美緒がにらみながら言うと、その人はひっと言いながら出てきた。
「何? それ、失礼じゃない? 人を見てひっだなんて。私は幽霊じゃないのよ」
「ご……ごめん。まさか発見されるとは思っていなかったから……」
いかにも弱弱しそうな男子だった。美緒より背はちょっと高いくらいで、全体的に細めだった。おどおどする行 動の時も瞳はずっとまっすぐを向いていた。確か……名前は……
「なんだっけ?」
「え、まさか僕の事? 峰 一成だよ。そっか。僕、影が薄いから。実は同じクラスだよ」
「えぇぇ!!」
ま、、まじで。確かにどっかで見たことある顔だと思っていたけどまさか同じクラスだったなんて…… 美緒が面喰っていると、一成が
「そういえば、昼に、麗華ちゃんとけんかしていたね」
と張り付くようなジト目で見ながら聞いてきた。 あぁ。このパターンの人か。麗華は人気があるから、こうやって口論した時は麗華ファンに何かといわれてうるさかったな。と思いながら
「そうだよ」
と力なく返していた。
「麗華ちゃんって案外性格悪いんだね。言い方も悪かったし……」
「え?」
美緒は驚いていた。こういう輩は麗華ファンが多かったのに……ていうか一成、麗華ファンじゃなかったんだ!!と思っていると……
「でも、美緒ちゃんもだめだよ。希望なんてないだなんてマイナス思考になったら」
と指摘してきた。うん。やっぱりそうなるか。と思いながら、
「でも、本当の事じゃん! 経験したことあるから」
と強く言うと、一成は、一瞬ひるんだけど、まっすぐ何かを決めたような瞳で
「美緒ちゃん。その日々、楽しくなかったの? 希望抱いていたその日々。恋愛していたあの日々」
「え?」
美緒が訳も分からず目を白黒させていると。一成は「ねえ。楽しくなかったの?」と一層強く聞いてくる。
なので美緒は思い出してみた。桂馬に出会えるかなって思ってわくわくしてい た日々。桂馬と近くの席になったらうれしいなって思った日々。楽しくなかったはずがない。
「楽しかった……」
と美緒は力なく吐いた。
でもしょうがないじゃん……結局駄目だったんだし……と言おうとすると一成が一層強く、
「ね。楽しかったんでしょ。それにね……」
一瞬ためて一成が
「希望なんてないだなんて思っていたら。本当になくなってしまうよ。あるって、思っていたらかなうかもしれないよ」
と強くいった。
その時一成は一番笑っていた。屈託のない笑顔。ひまわりのような。見る人を元気づけるような笑顔だった。だけど、その笑顔に、一成に美緒は惚れてしまっていた。 そして、気づくと美緒も笑っていた。
あの後、一成とはメールアドレスの交換をした。美緒は今まで一度もメールアドレスの交換をしたことがなかったので、うれしかった。そのあと、いろいろと楽しく話をして、一成とは別れ、美緒は家に帰って自分の部屋に行ったところだった。
「うふふふ」
は! 気づいたら、口から変な声が出ていた。うわぁ。と思うが面白いような楽しいような気持ちは収まらない。
「くふふふ」
美緒は携帯のアドレス帳、電話帳に一成の名前が入っていることを確認した。そしてもう一度、
「ふふふふ」
は! 気づけば3回も!! だめだめ。これじゃあまるで私が一成のこと好きみたいじゃない。なんて頭を振って考えるが……かおのにやけ度は止まらない。むしろ、大きくなってきている。
「好きなのかぁ~。一成の事」
美緒は独り言を言ってみた。途端に恥ずかしくなって顔をうずくめた。でもなんかやっぱり楽しいっていうか、 わくわくっていうか……。
今の私の顔どうなっているのだろう。熱い……。
よく考えると、そういえば桂馬の時はこんなんになっていたっけ? 楽しかった けど……こんな気持ちだったっけ? なんて美緒は考えていると…… ピロロロロローー
携帯が鳴った。
「わ!びっくりしたー」
こんな時間にだれだろう。と思って画面を見るとそれは一成だった。
「わわわわわ。どどどどうしよう」
美緒でもわからないくらいテンパっていた。のどの調子を確認したり、深呼吸したり、しまいには見えないくせ に髪の毛も少し整えた。
「も、もしもし……」
「もしもし、美緒ちゃん?」
その声が聞こえただけで、うれしくて顔がまたにやけてしまった。
「な、なに?」
美緒はできるだけ冷静を装って返答した。さぞかし無愛想だと思われているだろう。
「僕の家って、学校行くまでに美緒ちゃんの家通るから、一緒に朝学校に行か ない?」 え……えぇーーーーーーーーーーーーーーー! と叫びそうになったけど寸前のところで止める。今回もできるだけ冷静に、
「う、うん。いいよ。一緒に行こう」
「じゃあ、僕が美緒ちゃんの家に行くね」
「うん。バイバイ」
「バイバイ」
ほ……ほぇぇーーーーと声が出そうなほど緊張した。電話かかってきたときはうれしかった、けど緊張して……一緒に学校に行こうって誘われたんだよね?
わわわゎぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーーー!と叫びそうになった。いや叫んだ。 それって……カップルみたいじゃない。なんて思った。顔の火照りが収まらなかった。 明日になったら大丈夫普通に接することができる。なんて美緒は自分に言い聞かせ、明日の準備をしたのだった。
一か月後。
12月23日雪が降ってもいいくらいさむいかぜが吹き通る。カップルたちは今日も仲良く登校していた。
美緒は一成と一緒に学校に来ていた。普通なら、カップルとうわさされてもいいはずだけど、あの麗華との喧嘩以来、そういうものは一切ない。危険対象というふうにみられているのだろう。それならそれで安心だが……。
そんなことを考える前に美緒は顔のにやけと、緊張を抑えるので必死だった。
「美緒ちゃんって、なんか明るくなったよね。いいことあったの?」
バカ。あんたが好きになったからだよ。って勢い任せに言いたかったけど、必死に抑えて、
「あの時の一成のおかげだよ。希望なんてないなんて思っていたら、本当になくなってしまうっていう言葉の」
そういうと、なぜか一成の顔が赤くなった。なぜか口ごもって「え・・あ、そ う」などと言っていた。
美緒はそれに気づかず、続きをしゃべっていた。
「そのおかげでね。希望持てるようになったんだ。ありがとう」
といった時には一成はもう何も聞こえていなかった。ただ、顔が寒さも感じさせないほど赤く染まっていた。そのことに美緒は気づかなかった。
昼休み、富田 美海が
「一緒にひるごはん食べない? 」
と美緒に聞いてきた。 美海は最近美緒にできた友達である。美海は特別仲がいい友達がいるわけでもなかったので、美緒と気が合ってこうして友達になったのである。
「いいよ。今日は弁当だから教室で食べようと思うけど、美海はどうする? 」
「私も弁当だから一緒に食べよう」
そういい、2人は机に弁当を広げた。
美緒は一成はどこにいるのか探したけど、見つからなかった。たぶんほかの友達とでも食べているのだろう。少 しさみしかった。
「そーいえばもうすぐク・リ・ス・マ・スだね」
なぜか美海がクリスマスを強調させて言ってきた。
「そーだね」
と美緒はそっけなく返す。すると
「そーだねじゃないよ! せっかくのクリスマスなんだからさ……」
「?」
「一成とデートしてきなよ! ! 」
「? ! ! ! ! ! 」
美緒は思い切り吹き出した。 まさかそうなるとは思わなかった。美海って発想力すごいんだな。
「発想力とかの問題じゃないよ。普通カップルならデートするんだよ」
と美海が心を読んだように話し始める。そんなに顔に出てたかな? と美緒が思っているとあることに気が付いて顔が赤くなった。いや、なっているだろう。
「かかかかかか、か、かカップル?」
自分で聞いても噛みすぎだろうって思ったけど、美緒はそれどころじゃなかっ た。今は美海の勘違いに否定するので、精一杯だった。
「え? あれ? 二人って付き合っているんじゃないの? 」
「違う違う違う。あれはただ家が近いから一緒に来ているだけであって」
美緒は早口で否定した。たぶん普通の時だとこんなに早口でしゃべれないと思う。
「へ~。そうなんだ。じゃあさ。美緒ちゃんは一成君の事好きなの? 」
「! ! ! ! ! ? ! 」
美緒は固まった。正確には静止した。
「なるほどなるほど。美緒ちゃんは一成君のことが好きなんだね」
美緒はまだ固まったままである。
「え? 好きじゃないの? じゃあ私が一成君と付き合っちゃおうかな? 」
と美海が言ったとたん、
「ダメ! ! 」
素早く美緒は美海の腕をつかんで叫んだ。
美海は少し驚いた顔をして、
「へ~。やっぱり好きなんだ。も~顔にすぐ出てるんだから。かわいい」
美緒は何も言えなかった。美海はすごいと思った。たぶんからかっているだけだと思うけど顔がさらに赤くなっているだろう。
「じゃあさ。クリスマスの時にさ。告白。したら? 」 「む……無理」
と美緒は蚊の鳴くような声で返答した。すると
「そんなんでいいの? クリスマスはね。貴重な時間なのよ。カップルにとっては。だから大事にしなきゃ。それにクリスマスの時に告白してそのままデートしちゃうってパターンもありだと思うよ」
と美海は言った。確かにそうかもと美緒は思った。クリスマスに出かけるなんて一度もしなかったし、それもデートだなんてうれしいと思うけど……告白と思うとやっぱり……
「怖い」
前に美緒はフラれたばかりなのだ。だから怖いのだ。
「そんな弱気だったらダメ。前に進まなきゃ。弱音を吐くのはいいけど、そのたびに一歩進まなきゃいけないの。ていうか、そんなんだったらいつまでたっても進めないよ」
何故だろうか美緒はその言葉に元気づけられた。たぶん一成と出会う前だったらこんな気持ちにならなかったのだろう。うざいなんて思っていたのだろう。美緒は一成のおかげでここまで変わることができたのだ。だから、今回だって……いける。
「わかった。美海、私告白する」
「そうこなくっちゃ」
美海は微笑んだ。そうだ希望を捨てちゃいけないって、誰かが言っていたな。 誰か……急にあの日のあの時の一成の言葉があの笑顔とともにフラッシュバックのように頭の中に浮かんで きた。
希望なんてないだなんて思っていたら。本当になくなってしまうよ。あるって、思っていたらかなうかもしれな いよ。
一成……私はその名を頭の中で呼んだ。私を変えさせてくれた大切な存在。一成と一緒にいることが楽しくて、ずっと一緒にいたくて、甘えていた。ずっと甘え続けていた。一成の気持 ちも考えずに。 麗華とけんかしたばかりの私、あのときの醜い私。 そんな私といるだなんてどんな苦痛だろうか。まるでそんなの考えたことがなかった。考えたくなくて、甘えていた。
けど、このままじゃいけないんだっていうことが分かった。 告白。すごく怖い。フラれるかもしれない。フラれたらたぶん立ち直れないだ ろう。
けれどまだ決まったわけじゃない。少しの希望でも信じていたらかなうかもしれない。
美緒はあの時の言葉を信じて挑戦してみることにした。 告白を。
「美海の言うとおり、私は今しなければいけない時が来たんだと思う。だから頑張るから応援して」
美緒は美海に応援を頼んだ。すると
「いいよ。よーし。これから頑張るぞー」
美緒は笑った。美海も笑った。新しい未来に向けて新しい希望に向けてかなわないかもしれない恋にむかって 一成に12月24日の午後9時に駅前のクリスマスツリーの下で待ち合わせする メールを送った。
放課後、美緒と美海と一成は帰ろうと靴箱に向かったところだった。 美緒は靴箱を開けて靴を取ろうとするとヒラっと何かが落ちた。なんだろう? と思ってそれを拾うとそれ は……ラブレターだった。 正確には手紙だったのだが……雰囲気で分かった。雰囲気で分かるというのは本当らしい。 美緒は不審がられる前に素早く手紙を鞄に入れ、美海と一成に
「っ今日は用事があったの忘れてた。ごめん先帰っていて」
と告げると美緒は校舎の中に再び入っていった。 残された二人は不思議そうに首をかしげた。
再び美緒は教室に戻った。もちろん誰もいなかった。むろん、先生がいたとしても忘れ物を取りに来たといえばいいだけの話なので、問題ないのだが…… 考えていても時間がもったいないだけなので美緒は高ぶる心臓を抑えてラブレ ターを開けてみた。
”山田美緒さんへ
好きです。付き合ってください。
小野浩二” と書いてあった。その文字を見た途端ドキッとした。小野浩二って誰だろう? と考えるとすぐ浮かんできた。
同じクラスの人だ。と思った。
でもいきなり好きとかわからない。と美緒は思った。
「や、山田? 」
突然の来客に美緒は身震いをした。全然気づかなかった。
「な、なに? 」
いろんな意味で高ぶる心臓を抑えて素を装って返答した。
「その手紙、みた? 」
「見た」
と美緒が言った瞬間、時間が止まったように二人は止まった。もう一人の人”小野 浩二”が
「あ、そっそう」
というまでは。
「あ、えっと。いきなりこんなことしてごめん。でも、せっかくのクリスマスだし…いきなりとか決められないよな」
「あ、ま、まあ」
美緒はただ鳩が豆鉄砲を食らったように返事をするくらいしかできなかった。
「でも俺のきもちはほんとだから。それだけはわかって」
「うん」
美緒も告白したことのある身だ。その気持ちはすごくわかる。勇気すごくあるな。と思った。
「あ、でもクリスマスパーティー明日するからこれに参加して。みんなもいるし別に付き合うとかそういうのはまたあとでいいから」
明日……つまり12月23日。美緒が一成に告白する日だった。
けど、せっかくのチャンスを無駄にしていいのかと美緒は自問自答した。
けれどやっぱり私が好きなのは…… ガタっと大きな音がした。
二人はその方向を振り返った。そこには美海と……一成がいた。 終わった。と美緒は思った。けどこの誤解を解かないとと思って浩二に本当の気持ちを言おうとした時だった。
「美緒ちゃん。よかったね」
一成だ。顔には悲しさと喜びがにじみ出ている。
「クリスマスパーティー楽しんできてね」
そういうとどこかへ行ってしまった。 美海はばつの悪そうな顔をして一成を追いかけた。
「あ、じゃあまあよろしく。山田。クリスマスパーティーで」
「う・・・・うん」
そういって二人も別れ家に帰っていった。
その夜、家に帰るとそのことばっかり美緒は考えていた。
「どうしよう」
一成に9時に待ち合わせすることになっているけど……クリスマスパー ティーの件、一成は楽しんできてといっていた。そりゃ告白されたのはうれしいけど…… その日美緒はあまり眠れなかった。
結論は一応パーティーに行ってみようということになった。行くだけならいいだろう。とおもった。 学校ではすごく一成とは気まずかった。 家に帰って着替えた後、小野浩二と一緒にパーティー会場に行った。
パーティー会場はクラスの女子の家だった。駅前からはすごく遠かった。行くまでに2時間もかかってしまった。
パーティー会場はすごく飾りつけされていた。おそらく、美緒と浩二が着くまでに飾りつけをしたのだろう。
大きな机の真ん中にはすごく大きいケーキがあった。パーティーには8人くらいしかいないのに食べ切れるのだろうか?
そのほか、チキンなどのいろんな料理と、クラッカーなどがあった。
着くといきなり、
「メリークリスマス」
といってクラッカーをパンとならされた。
正直そういう気分ではなかった。
パーティーは順調に進んでいった。
このパーティーのおかげでいろんな人と仲良くなった。 けど、ぜんぜん楽しくなかった。すごく、一成が気がかりだった。
「大丈夫? 」
と浩二が聞いてきた。
「大丈夫」
と美緒が答える。
美緒は掛け時計を見た。
もう8時を回っていた。
美緒はすごくもやもやしてきた。
すごく帰りたい。いきたい。一成のもとに。私はこんなところにいる場合じゃない!! 甘え続けているばあいじゃない!!
「ごめん」
と美緒はみんなに言った。え? とみんなが聞くと、
「用事があるから先に帰るね」
といった。 浩二はおくるよといったけど、
「急ぐから来なくていいよ。楽しんでいて」
と言って玄関から飛び出した。
美緒は走った。無心になって。何度もこけそうになったけど、なんとか耐えて走った。クリスマスツリーのもとへ。一成のもとへ。
たぶん時間には間に合わないだろうと思った。けど行かなきゃいけないそう思った。だから走った。伝えなきゃいけない。そう思ったから。
時間を確認すると8時45分だった。間に合わない。けど走った。
着いた頃にはへとへとになっていた。
時間は10時になってしまっていた。 クリスマスツリーがやけにきれいだった。
そこに一成はいなかった。やりきれない思いが胸にこみ上げた。わかっていた。来ないっていうこと。だけどつらかった。伝えたいことを伝えれなかった。あの時すぐにふっていたらよかったのにと自分に後悔した。嗚咽が 漏れた。気づくと泣いていた。悔しかった。悲しかった。つらかった。いろんな気持ちがあふれてきた。来なかったのだろうか。帰ってしまったのだろうか。少し待ってくれたのだろうかなどと考えてみた。けれど、ダメだった。という現実には変わりはない。 クリスマスツリーがむやみに光る。 その明るささえもウザったいと思った。
すると目にある笑顔が浮かんできたあの時の一成の笑顔。もう一度見たかった。一緒に歩きたかった。遊びたかった。などと思っていると……誰かが近づいている気配がした。 美緒は泣きながら振り向くとそこには……一成がいた。 幻覚かもしれないそれに私はしがみついた。
「一成! 」
一成は一瞬驚いたような顔をすると優しく美緒を抱きとめた。
「一成。一成……」
魔法のような時間が過ぎる。
美緒はわんわんと子供のように泣き続けた。
美緒にとってはとても過激すぎた。だからただ会えたそれだけで、うれしかった。 だけど、伝えないといけない。この関係を壊したくない。だけど伝えないといけないことがあるんだ。 急に美緒は一成に向き直った。美緒は泣きそうになるのを抑えながら……。
「一成、今まで一緒に仲良くしてくれてありがとう。好きです。付き合ってください」
うまく言えただろうか。それは自分でもわからなかった。ただ美緒は一成の返事を待ち続けた。涙がこぼれそうになる。怖い。フラれるかもしれない。そう思うととても怖かった。 沈黙を破ったのは一成の素っ頓狂な声だった。
「え? あ、それ本当? 」
美緒はゆっくりうなずいた。
「・・・・」
また沈黙が続いた。 そのあと、一成が何かを決意した顔で美緒に向き直った。
「僕も。僕も美緒ちゃんのことが好きだ! ! 」
一成がそういったとたんツリーが明るくなったいや世界が明るくなったように感じた。 そしてそういった一成がいつもとは違ってかっこよく見えた。
「ほ、本当? 」
と美緒が聞いた。美緒は信じられなかった。こんな私を好きと言ってくれる人なんていないと思った。私は絶対に結ばれないものだと思っていた。だからこそ確認した。本当だということを 信じて。
「本当だよ。僕は嘘をいってない。これが僕の本当の気持ち」
その言葉を聞いた途端胸に明るいものが広がった。うれしさを通り越して感動した。顔は笑っているだろうか泣いているだろうかわからない。けれど、今うれしいということだけわかった。 心臓の鼓動が早くなる。いろんなつらさも吹き飛んでしまうほどうれしい。
だんだん安心してきた。不安だったものがすべてなくなった。 そして口から出たのは、
「両想いだったんだ」
という言葉だった。
「うん。まさかとは思ったけど」
「思ったの! ? 」
「嘘。騙されやすいね」
「だましたな~! 」
いつも通り。けど何かが違う。もっと楽しい。ああ、こんなにも両想いって素敵なことだったんだ。
「あ、僕思ったんだけど……」
「何?」
「両想いってすごく偶然だと思うんだ。確率が少ないと思うんだ」
「うん?」
「だから、僕たちが結ばれたのはサンタからの贈り物だったりして」
「ぷ」
美緒はその言葉を聞いて思わず吹き出してしまった。
「何?
一成は少し不機嫌そうにした。
「いや。一成らしいな。って思って」
「本心は? 」
「かわいいなって」
ますます不機嫌な顔になった。
「それ、ふつう立場逆じゃない? 僕が言うんだよ」
「だって、私なんかかわいくないしー」
「そんなネガティブなこと言わない! 十分かわいいのだから・・・」
その言葉を聞いたとたん美緒の顔が真っ赤になった。
それを見て一成も赤くなる。
幸せそうな二人。
「じゃ、じゃあ遊びに行こうか」
二人は夜の明るいイルミネーションの中へと消えていった。
メリークリスマース!!
上空1000メートル赤い暖かそうな服に包まれた中年男性が髭の間から叫んだ。
目線の先はある少年少女のもとである。
「それぞれみんななりにクリスマスがある……クリスマスは人の数だけクリスマスがある……か…… クリスマスには笑顔でいてほしいものだからのぅ」
と悲しみともいえる笑顔で男性はそつぶやき、最後にもう一度叫んで夜の闇に消えていった。
メリークリスマス!
本日は『形のないプレゼント』を読んでいただきありがとうございます。
後、GHP企画に誘っていただいた螺旋 螺子さんありがとうございます。
おかげで初めて完結まで飽きずに書くことができました。
ところで、この小説は私の(正直)半分理想です。今まで私、告られたことも、告ってOKってなったこともないですからね。付き合うってどういうことなのか正直まだわからないんです。
そこらへんは想像で(理想)で書きました。
クリスマスって付き合っている人とかデートとかするのでしょうか。クリスマスって、クリスマスパーティーとケーキ食べる以外は何をするのかあまりわかりません。ケーキも正直23日とかに食べたりするし・・・・・
あとはサンタさんを待つだけですか。私は今は半信半疑ですが、まあ今年は来ることを信じましょう。(正月を
楽しみましょう)
それではみなさん
メリークリスマス