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僕の彼女は可愛い

『私の彼氏……』の彼氏視点を書いたので載せてみました。

「ヤンデレ……?」と疑問がありますが生暖かい目でご覧いただけたら嬉しいです。



 彼女が嘘をついた。

 今日は僕が委員会の話し合いがあると前々から言われていた日。

 一緒に帰れないことは前々から分かっていたことだけど、何かあっては心配だから絶対にまっすぐ家に帰ってねとお願いしていたのに……。

 彼女も一緒に帰れないと分かった日には笑って頷いてくれたのに。

 だけど今日。彼女に何かあっては心配なので、委員会の集まりに行く前彼女の教室によったら何故か慌てて教室を出ようとしていた彼女。

 疑問を持ったけど下から見上げる彼女が可愛すぎて些細なことはすぐに忘れてしまった。

『どうしたの?』なんて下から上目遣いで見上げる姿は可愛すぎる。万が一この姿をみた馬鹿が出ないようにしないといけないと思い、教室に入ってくる時に確認した男子生徒に後日話し合いをしようと心に決めた。

 だけど今は彼女との大事なひと時。少ない時間も無駄にはできないと思い彼女の頬に書類を持っていない右手で触れる。

 本当はこのまま腕に囲って思うままにキスをして抱きしめたい。けど、そんなことをすれば恥ずかしがりやな彼女はこれだけで顔を真っ赤にして困ったような笑顔を見せるからそれ以上は今は我慢だと自分に言い聞かせる。

 いつかは、とも思うけどこのはにかんだ顔も可愛いからその顔が見られなくなってしまうのも残念だし、と思ってしまい彼女に対しての悩みは尽きることがない。

 だけど彼女、弥生やよいさんはいつもなら顔を真っ赤に染め潤んだ瞳で恥ずかしそうに僕に助けを求めるように見つめてくれるのに、今日は違った。

 一緒に帰れないのは不安だからまっすぐ帰ってねとお願いした僕に、弥生さんは笑って了承してくれるのに……。

 今日の弥生さんはどこか慌てたように視線を彷徨わせたかと思うと何度か吃った後、僕の顔を見ずに返事をした。

 怪しい。

 これは誰が見ても怪しい。いつもは僕の顔を見て話してくれるのに。そんな仕草でさえ可愛いけど、これは何か隠しているとしか思えない。

 彼女の不審な行動に考えを巡らせている間に弥生さんは『後で電話するね!』と言って僕の腕から軽やかに抜け出すと走り去ってしまった。

 弥生さんの突然の行動に驚いているうちに同じ委員会の人間に連れられ会議に参加させられたけど、そんなどうでもいいことよりも頭の中を占めるのは弥生さんの事だった。

 彼女が僕に隠し事をするなんて何があったのか。それだけだった。

 彼女に言い寄る害虫おとこが何も知らない弥生さんに嘘をつかせたんじゃないか。彼女があまりにも可愛いから騙して誘い出したんじゃないか。

 そして何も知らない弥生さんを言葉巧みに誘導して最後にはホテルに……。

 そこまで考え、こんな所で無意味に時間を費やしている場合じゃないと会議を早々に切り上げる。

 周りが何やら騒がしいけど、そんなことよりも弥生さんのことが心配だ。もし知らない害虫おとこが弥生さんに無理強いをしていたらと思うだけで何かしてしまいそうだ。

 弥生さんと分かれてからすでに一時間は経っていることを確認した僕は、学校を出る時念のために弥生さんの弟に電話を掛けることを忘れない。

 もしも僕の考えが杞憂なら弥生さんはすでに家に帰りついているはずだから。

 だけど弟からの返事はNo。

 その答えに胸の中がザワザワと騒めくのが分かる。どんな理由があったにしろ彼女が僕に嘘をついたということだ。

 やっぱり監禁してしまおうか。僕しか見ることが出来ないように、僕だけのことを考えるようにしてしまおうか……。

 仄暗い考えが、考えれば考えるほど思考を塗りつぶしていく。

 だけどそんな考えを今はまだ早いと頭を振ることで振り払った。

 そして帰り支度を早々に整えると彼女の弟が電話口で口にした場所へと足早に進んでいく。あまり楽しくない電話だったけど、彼女の行方を聞くことが出来た。それだけはよかった。

 喫茶店に寄ってから帰ると話していたとの情報で一つの喫茶店が浮かぶ。少し前に弥生さんがケーキが美味しくてお気に入りだと話題にしていた店。

 きっと彼女は其処にいる。

 彼女は気に入ると暫くは同じ場所に足を運ぶから間違いない。

 その喫茶店は確か学校から一番近い駅の側にある商店街の一画にあったはずだと思い出したら後はひたすら街中を無言で歩いた。

 そして商店街の端にあるその喫茶店まで来たら、窓から弥生さんの可愛い顔が見えた。

 ああ、困って俯く顔も可愛い……けど、目の前に僕の把握していない害虫おとこが座っているのは一体どういうことなのか。

 彼女の周りにいる男は害虫にならないようきっちり彼女と付き合うまでに把握していたはずなのに……。なのに初めて見る顔。

 あの害虫おとこはどう料理(話し合い)をしようかと頭の中で考えながら店内に足を踏み入れる。

 弥生さんは下を向いていたから僕のことを見ていなかったため、ばれることはなかった。

 これを利用してあの害虫と何を話しているのか確認できるかな?

 丁度この店は持ち帰り用のスペースと飲食スペースが離れている。良い場所に観葉植物もあって、これなら彼女にばれることもないだろうし。

 ……ああ。弥生さん僕の前以外でそんな可愛い顔で笑ったら駄目ですよ。

 男は皆狼なのに、そんな見るからに女に慣れていないような害虫の前で笑いかけたら勘違いして襲われるじゃないですか!!

 害虫が少しでも弥生さんに変なことをしたら直ぐに動けるように害虫を睨み付けていたら害虫と視線が合った。

 なので弥生さんが見ていないことを確認して口パクで手を出すなと忠告をする。

 害虫が顔を真っ青にしているが、そんなことは関係ない。弥生さんに近づいてもいいのは僕だけ。それなのに弥生さんに近づくと言うならそいつは僕の敵。それなら容赦はしない。

 弥生さんが害虫の視線に気が付いてこっちを向いたけど、その前に観葉植物の陰に隠れる。

 害虫には口パクで弥生さんには伝えるなと伝えておく。

 そして弥生さんが害虫の方を向いて話始めたことを確認してから少しだけ体を出して話に耳を傾ける。

 害虫に彼女が誑かされているんじゃないのかと心配していたけど、どうやらそれは杞憂で終わったようだ。

 話の内容は相談だった。

『自分が僕に相応しいのか心配』そんな内容。

 そんな事を真剣に考えていたなんて……。

 弥生さんってば本当に可愛い。

 だけど相談ならこんなよく知りもしないような害虫じゃなくて僕にしてくれればいいのに。

 そしたらすぐにでも抱きしめて思いっきりキスして不安なんて感じてる暇もないくらい愛を囁いてあげるのに。

 僕には弥生さんしか、弥生さんには僕しかいないんだって何度でも言ってあげるのに。

 なのに、なんで、害虫なんかに相談しているんだろう?

 笑った顔も、困った顔も、全部僕だけが見るだけでいいのに。

 あの害虫は誰の許しを得て弥生さんのあんな可愛い顔を見てるのさ。

 誰に許可を貰って弥生さんに話しかけてるのさ。

 あああ。イライラする。本当イライラする。

 何で僕よりも害虫が弥生さんの近くにいるのさ。

 そんなこと許せるわけない……。


「そんなの愚問だよ、弥生さん。貴方は今のままでとても魅力あふれる人なんですから。俺こそいつも弥生さんの隣にいていいのかって悩んでるくらいだし、これ以上魅力的になって僕以外の奴が弥生さんの魅力に気がついて万が一にでも言い寄ったりしたらと思ったら嫉妬で何するか分からないんだからね? ……例えばこの害虫おとこみたいに、ね?」


 ……ああ、弥生さんの匂いだ。

 害虫の存在にイライラして気が付いたら弥生さんの傍まで来て後ろから抱きしめてしまっていた。弥生さんを腕に閉じ込めるように。

 弥生さんを抱いてその温もりを肌で感じ、そうすることで少しだけ気の高ぶりが静まる。

 だからこそ弥生さんの近くにいればどんなに怒りに思考が奪われていても、無意識にでもいつもの僕でいられると改めて実感する。


「ふふ。恋人さんは面白いこと言いますね。山田さんには相談にのってもらってただけですよ? それより恋人さんはどうしてここに?」

「ん? 丁度この近くを通ったら弥生さんがここにいるの見えたから来ちゃったんだけど、迷惑だった?」

「ん~ん? そんなことないよ」

「良かった。もし弥生さんに迷惑だだなんて言われたら、僕きっと悲しくなっちゃうから……」

 

 急に後ろから抱き着いたことで驚いたのか一瞬体を強張らせる弥生さん。だけどすぐに僕だと気が付いて体の力が抜けた。

 そんな所も可愛い。

 無意識なのか頭を僕にもたれさせ甘えてくれるところも、もっと色々な弥生さんの表情が見たくてわざと悲しそうな表情をしたら少し首を傾けて腕を抱きしめてくるのも全部が可愛い。

 だけどここはまだ外。

 目の前で青ざめてる害虫のように弥生さんに近寄ってくる虫は後を絶たないから本当に心配で仕方ない。

 弥生さんのこんな可愛い姿を見たらいらない害虫がまた増えてしまうと思い早く家に帰れるため、名残惜しいけど弥生さんを腕から離す。


「じゃあ弥生さん、山田さんもこの後何か用事があるみたいで忙しそうだし僕の家に行きましょう?」


 これ以上弥生さんの可愛い姿を誰にも見せたくなくて害虫の予定なんか知らないけど、尤もらしいことを口にする。

 早く早くと気ばかりが焦る。

 僕の言葉に何の疑問も持たない弥生さんは害虫に優しい言葉をかけてるけど、それで勘違いすることがないように害虫をきっちり睨み付けておく。

 今日の害虫は勘違いはしていないようだからすぐに喫茶店から出ることが出来た。

 念のため帰る道で何をしていたのかさり気無く聞いてみると楽しそうに今までのことを話してくれた。

 その姿に何かあったとは思えないけど、あまりにも嬉しそうに話すから今度あの害虫とはきっちりお話し合いをしておこうと固く心に誓った。


「そっか……。じゃあ今度何かお礼でもしないといけないね」

「そうですね。今度は山田さんが好きそうなお菓子でもお土産にしようかと思います」


 考えていたことを思わず口に出してしまった。

 それを聞いた弥生さんは律儀にもそんなことを笑顔で言うから、一人で行かないように釘を指しておく。

 弥生さんが害虫と話をするだけでもイライラするのに、これ以上僕のいないところで仲良く話すなんて許せるわけがない。


 だって彼女は僕の者で、僕は彼女のものなんだから。



お読みいただきありがとうございます。

ヤンデレって難しいね! と思いつつ、次回は虫こと、山田君か彼女の弟君視点を考えてます。

そして何時になるかはまだ書いていないので未定です。

また次回もよければお読みいただけると嬉しいです♪

ありがとうございました。

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