説明してもらわないとわからない
部屋でポテトチップスをばりばり食い散らかしていた相手は、自分を魔王候補だと名乗った。
魔王(候補)を名乗る木崎さんによると。
彼らのいる魔界とかいうところを、束ねる頂点が、魔王と呼ばれる存在で。
その候補となるのは、魔界でもかなり高位の魔力を持ち、自ら治める所領を持つような、大きな家の出の者に限られるらしい。
「へえ……木崎さんエリート階級」
そういうと、酷く嫌そうな顔をした。
坊っちゃんの気に障ることだったらしい。
「……私が選ばれたのは、私のこれまでの努力の賜物、家等関係ない」
嗚呼、成る程。
只の甘やかされたボンボンって訳じゃない、と。もしかして、自分のおうちとうまく行ってないのかな? という考えが頭を掠めたけど、ぐっと飲み込んだ。
初対面でずかずか踏み込むことでもないし。
でもって、候補に選ばれた彼は、自分の資質を魔界に示し、自分が魔王の器たることを証明しなくてはならない。
「具体的に何やるの?」
興味をひかれ、聞いた。
「魔界から他へ行くときには、道が開く」
彼は言った。
「何処に開くかは、通ってみねばわからぬ」
「不便だな」
「行く先を分かった上で道を開けるのは魔王のみ」
一応それにも理由はあるらしい。やたらに他の世界に干渉せず、また、魔界にもむやみによそ者を入れない為。
魔物にも、守るルールがあるというのが、可笑しいような、ほっとするような。
「それで、開いた先が此処であった」
「私の部屋かい……、で?」
「む?」
「だから、具体的に何をするわけ?」
ああその事か、と彼は頷いた。
「一番に出会った相手を、如何に早く虜にするか、が試験ぞ」
言葉の意味が、よくわからなくて反芻する。
「とりこ……?」
「魔界を統べる存在たるもの、魔の魅力を最大限に発揮できねばならぬ、無作為に選ばれた相手を魔物の虜として、初めて、私もその地位を認められる」
非常に、嫌な予感がした。
「一応、確認したいんだけど」
「何ぞ」
「一番に会った相手って……まさか、私じゃないよね?」
「何を寝惚けたことを」
彼は呆れたように首を振った。
「決まっているだろう、なればこそ、私の素性も話したのであろうが……そなたの資質如何では、特例ではあるが、妃の一人として迎えてやってもよいぞ」
彼の最後の言葉と。
「ざけんなっ」
私のぐーパンチが炸裂したのは、ほぼ同時、だった。
(2011/2/22)
見目形がよくても、中味はどうなんだろうね?