とりあえず出会いから
「ちょっと! 何、人んちでバリバリ食ってる訳!」
目の前の光景の異様さとかは、二の次だった。
私の!
愛しのポテトチップスがっ!
「私は、木崎成則と申す者」
色々あった後(そりゃあ、ポテチの袋からこの妙な物体を引き剥がし、きっちり落とし前、じゃなかった、事情説明等聞かなくては先に進まない……故に、大人の反応をした)、渋々、相手は口を開いた。
「あ、そう……木崎、さん、じゃなくて!」
「何ぞ、問題でもあるのか? この名に」
「そうじゃなくて、そもそも」
木崎さん、何者?
木崎と名乗った相手は、端正な顔立ちをしていた。色白の肌に、柳眉。形のよい目。
頭に被った妙な形の帽子(やたらとんがった妙なあれを帽子と呼んでいいかわからないが、それ以外の語彙が私にない)の下に見え隠れしている、如何にも柔らかそうな茶の髪。
ごく普通に道ですれ違ったりしたら、あら綺麗な……という感想を持つだろう。
まあ奇異に見える服装は、考えないものとして。
問題は。
何故私の部屋に彼がいるのか、ということであり、そしてもっと問題なのは。
彼がどう見ても、掌サイズ……ちっさい、ということである。
「私は、魔王候補である」
まるで、自分は学生ですとか、会社員ですとか。そういうノリで。
あっさり、魔王(候補)とか言われても。
「は?」
「何ぞ、その間抜け面は」
それ以外の反応など、どうして出来ようか。
「魔王って……あの魔王ですかね」
「此方には、あの魔王だとか、この魔王だとか、いるのか?」
逆に聞かれてしまった。
「いや、魔王は魔王ですね……私の知る限り」
「ならば問題はないな」
うっかり流されて頷くところだった。
「いや! 大有りだろ」
(2011/2/22)