少女
またまた思いついちゃったので新作投稿です
がんばります
よろしくお願いします
「シャンティアを連れて来い」
美しい夕焼けの中、海へ迫り出したバルコニーに佇む一人の男が呟いた。
周りに控えていた数人のメイド達が音も無く一礼して邸の中に引き下がる。
ここはとある大国の海辺にある街。
波と風の音が絶えない海に面した大きな邸。
住んでいるのは成金ものの金持ち貴族と使用人達。
「旦那様、シャンティアを連れて参りました。」
先ほど邸の中に下がって行ったメイド達が戻ってきた。そして、その後ろには……豪勢に着飾り、両手足と首に枷をはめられ、目隠しで両目を覆われ、終いには鳥籠のような檻に入れられた十代半ばの少女がいた。
「さぁ歌え、シャンティア。」
先ほどの男が少女――シャンティアに言った。
その直後、小さな声が辺りに響き渡った。
シャンティアの鼻歌であった。
声すら出していないのに、周りの人間は全員シャンティアの歌に聴き惚れていた。
しかし
「貴様、いい加減に声を出して歌わぬか!貴様はこの私の奴隷なのだぞ。貴様は私に飼われているのだ。言うことを聞かぬか」
男は納得しなかった。
シャンティアが声を出さないのはいつものこと。しかし、この貴族の男は少女の声が聞きたかったのだ。その為にこの少女をわざわざ買ったのだから。
シャンティアは、主の指図など聞いていないように鼻歌を歌い続けている。
とても小さな音が辺りに流れている。
その音だけでも、男の気を静めるのには十分だった。
歌い続けるシャンティアに男はもう何も言わなかった。
「船長、次の狙いは決まりましたか?」
船長――そう呼ばれた男は地図を見て笑っていた。
ドンッ
「あぁ、決まった。次の狙いは、この街にいる成金貴族野郎だ」
その音は地図にナイフが突き立てられた音だった。
「出航だ」
船長が呟き、周りにいる奴らが笑い、船全体に向けて叫ぶ
『野郎共!次の目的地が決まった。・・・・・・出航だ!』
男が、トランペットのような形をした物に叫んだ瞬間、船全体から歓声が上がった。
夕日が綺麗だった空には、もう既に星が煌めいていた。
シャンティアは未だに歌い続けていた
「もう良いシャンティア、下げろ。」
鳴り続いていた音がピタリと止み、周りにいた者達がシャンティアの入れられている檻を引き摺って、邸の中に運んでいく。
その様子を一瞥し、貴族は笑った。 声高らかに、笑い続けた。