30歳会社員の俺が魔法少女になるんですか!?
俺の名前は乙姫 チハル、
華奢な見た目とこの名前のせいか、小さな頃から「かわいい」「女の子みたい」と言われ続けてきた。
そういった周りの言葉の影響もあったが、
実際、俺は女の子らしい可愛いものを好んでおり、それは社会人になった今も変わらなかった。
そして迎えた30歳の誕生日、
たまたま入った雑貨屋で購入した、ハートのコンパクトを家に持ち帰って開けてみると、甘い香りと共に、綿あめのような煙が上った。
「か、火事っ!?」
そう口にした次の瞬間、目の前に手のひらサイズのぬいぐるみのようなものが現れた。
「ふぅ…やっと出られたプリ…あ、お前が開けてくれたんだプリね!ありがとうプリ!」
目の前のぬいぐるみが喋っている…
きっと疲れているんだと思い、ベッドに横になると、先ほどのぬいぐるみから思いっきりビンタを食らった。
「何してるプリ!寝てないで、ちゅきちゅきパワーを集めに行くプリ!」
「ちゅ、ちゅきちゅき…パワー…?」
呆気にとられる俺をよそに、目の前のぬいぐるみは立て続けに喋り始めた。
「ぼくはプリプルン!プリプリキュルルンランドから来たプリ!ぼくたちは、キミたち人間のちゅきちゅきパワーを糧に生きているんだプリ!」
「プリプリ…キュルルンランド…?」
「そうプリ!でも最近、ちゅきちゅきパワーを盗む悪いヤツらがいるんだプリ!そいつらを倒してほしいんだプリ!」
全くこの状況についていけない俺であったが、
プリプルンは意外にもかなりの怪力で、無理やり俺の服を着替えさせ始めた。
「ちょちょ、待っ…」
「さぁ、魔法の呪文を唱えて、お前も魔法少女になるプリ!」
「ちょ、魔法少女って…俺今日で30のおじさんなんだけど…!?」
「は…?お前、オトヒメ チハルだプリね?男……?」
そこから詳しく話を聞いてみると、
どうやらプリプルンは、この紛らわしい名前と見た目のせいで、間違って俺を魔法少女に指名してしまったらしい。
とんだとばっちりだが、魔法少女は力仕事の部分もあるらしく「まぁいいでしょ!」とのことで、
その日から俺は、魔法少女になってしまった…
「プリプリプルン♪プリプルン♪みんなだいちゅき、ちゅきちゅきアタック♡」
それからというもの、俺は魔法少女として、幾多の敵と戦って来た。
ちなみに、先ほどのセリフは俺の必殺技の呪文で、可愛く言わないと効果がない。
30歳の成人男性にはキツいものがある気もするが、非日常を楽しんでいる俺もいた。
ある日、いつものように敵を追いかけていると、俺の普段の勤務先のオフィスに逃げ込んでいった。
「まずい…」
かなりまずい、俺は病欠で休んでいることになっている上、魔法少女の格好をしている。
だが、ちゅきちゅきパワーを奪う悪いやつを見過ごすわけにはいかない。
「チハル、行くんだプリ!!」
「南無三っっ!!」
覚悟を決めてオフィスに飛び込むと、先ほどの敵がハゲ上司を盾に、ニヤニヤと笑っていた。
「卑怯だぞ!ハ……田中課長を離せ!!」
「嫌だね、これまで集めたちゅきちゅきパワーをこちらへ渡すなら離してやってもいいぞ!」
緊急事態である。
周りの同僚たちがざわついているが、もはやそんなことはどうでもいい。
「こうなったら、あれしか無いプリ…!」
プリプルンが深刻そうにそう言うと、俺は覚悟を決めて最終奥義を放つことにした。
「プリプル♪プリプル♪プリプルルン♪みんなだいちゅきっ♡ちゅきちゅきパワー全開っ!おしりプリプリ、ピーチアターーック!!」
そう唱えて思いっきり尻をぶつけると、敵は一瞬で爆発四散したが、田中課長も吹っ飛んでいってしまった。
「終わった……」
そう、色んな意味で終わった。
俺はさっさと今日は帰って、明日退職願を持ってこようと決意し、その場を立ち去ろうとしたが、
その場にいた同僚たちに必死で引き留められた。
「待ってください!乙姫……いや、チハルちゃん!!」
「行かないでチハルちゃん!」
「離してくれ…俺にはもう居場所はない……」
するとそこへ社長が入ってきた。
「全部見ていたよ!!乙姫くんがこんな人間だったとはね…」
「申し訳ございません…」
「何を言っているんだ!最高じゃないか!!我が社の広告塔になってくれないか!?」
「………え?」
次の日から俺は、ポスターやネット広告で会社の広告塔となり、親や友だちに魔法少女である事実を知られ、
本格的に魔法少女として、第2の人生を歩むのであった…。




