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呑んだくれ道具屋の死神祓い  作者: 清泪(せいな)


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第3話 死神祓い

 死神だ。死神だ。死神だ。死神だ。


 酒の回った頭で酒場で聞いた話を思い出しながら、道具屋は目を擦り死神を見る。酔って見える幻覚か、などと考えるもハッキリと見えている。幻覚っていうのはもっとぼんやりとしたものだ、と昔薬草と間違えて惑わし草を売ってしまった客から怒られて知っている。


 じゃあ、コイツは? 本物か?


「何をしてるんです!? お願いします、助けてください。司祭様を呼んできてください!」


「あ、アンタ、コイツを見えるかい?」


「はい? 何を言ってるんです? ああ、アナタ酔ってるんですね、なんてこと。神よ、戦士様をお救いならないのでしょうか!」


 死神越しに僧侶が大声をあげる。僧侶の顔の前に立つ死神を、僧侶は全く見えていないのだ。僧侶の大声に民家の明かりがついて何やら物音が聞こえ始めたが、死神が消えることはなかった。民家から村人が出てきて騒々しくなっていく中、道具屋は死神にそーっと近づいた。


 小馬鹿にするほどの与太話だったが、試すなら今しかない。夢を夢のままにしてモヤモヤするのはうんざりだった。嘘ならば嘘で諦めがつく。


「何してるんです!? もういいです、他の方に頼みます。アナタは近づかないでください」


「あー、あー、いいから、ちょーっと黙っててくれねぇか。えーと、えーと、アンジャラ、えーと、何だっけ? ア、ジャラ・・・・・・カモク、レン・・・・・・ナ、ロウ・・・・・・テケレッツ、の、パー!」


「アナタ、いい加減に──」


 自信なさげに呪文を呟く道具屋に僧侶が怒鳴ろうとしたとき、横たわる戦士が足元からばあっと一瞬光を放った。道具屋の目には溶けるように消えていく死神の姿が映る。


「え、何!?」


「お、おい、アンタ、そいつの、その戦士のち、治療をやってやってくれ!」


 消えた死神の跡から目を離せずに道具屋は身震いしていた。やはり酔った際に見えた幻覚が消えただけなのか本当に死神を祓ってしまったのか。


「何を、私の力じゃもう彼は──」


「お、俺からも頼む・・・・・・僧侶さんよ、俺はまだ生きれる、だろ?」


 先程まで虫の息であった戦士が胸に当てられた僧侶の手を強く握りしめた。僧侶は驚き声をあげるが気を取り戻して治癒処理に集中し始めた。


 何度か僧侶が驚きの声をあげかけては道具屋の顔を見て再び治癒処理に集中するということを繰り返した。


 そうして戦士の身体の傷が見るからに癒えた頃に村人の誰かが呼んだ祭司がやって来た。祭司が戦士の状態を確認すると、一緒にやって来た村の男達に指示して戦士の身体を担ぎ上げさせ教会へと運んでいった。


「あ、アナタ、何をしたんですか?」


「え、あ、いやー、死神を祓った、みたいだな」


「死神を、祓った? 嘘、じゃないみたいですね」


「あ、ああ、嘘、じゃないみたいだ」


 僧侶はその場に座り込んだまま道具屋を見上げていた。手のひらと交互に目をやり自分が戦士の治癒促進を行ったことを信じられずにいる。道具屋は運ばれていく戦士を見ていた。


 そのあと道具屋は僧侶や野次馬に駆けつけた周りの村人達に声をかけられたが耳に入ってこず、ぼんやりする頭のまま帰路についた。家のドアを開けてから気づいたが妻は就寝しているようだったので、忍び足で静かに入った。寝室はまずいと思い台所で就寝することにした。



 道具屋が再び目を覚ましたのは妻の騒がしい声でだった。昨日の酒が響き頭がガンガンとする中、それよりもガンガンと響き渡る声で妻が呼び掛ける。昨日の怒りの続きかと思ったが、そうではないようで無理矢理起こされては店先へと連れていかれた。


 眠たい瞼を擦りながら止まらない欠伸を繰り返し店先に出ると、近隣の住人が集まっていた。何だと驚く道具屋の顔を見るや近隣の住人が一斉に駆け寄ってきた。


「おい、道具屋さん、あんた昨日戦士を助けたってのは本当かい?」


「僧侶も諦めかけてた状態だったのを何かして助けたんでしょ?」


「なぁ、良い薬草仕入れたんだろ? 売ってくれよ」


 怒濤の質問攻めにあい道具屋は困惑する。道具屋が戸惑っているとその背中を妻が強く叩いた。振り向くと妻が腕を組んで鼻息荒く立っていた。


「あー、戦士を助けたのは本当だ。良い薬ってのは仕入れちゃいないから残念ながら売れない。助けた方法については、あー、上手く説明できない」


 道具屋のぼんやりする頭に一つ思いついたことがあった。酔いの覚めない頭だが、どうにかこれで金儲けが出来ないか。何の才能も無い自分の突然訪れた好機だ。博打だ。打ってみるのも悪くない。


 道具屋は住人達の説明をやんわりと誤魔化してその場をおさめると店内に戻って商売の方法を練り始めた。

 

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