プロローグ
4月の空はどこか乾いていた。
春の風が頬を撫で、ちらほら咲く桜が揺れている。新しい制服の感触は少し硬くて、まだしっくりこない。それでも、高校生活が始まったばかりのこの空気は、どこか新鮮だった。
タケルとユウカ――久しぶりに再会した幼なじみたちは、昔と何も変わらない。
「なあ、久しぶりに裏山行かね?」
昼休み、弁当を食べていた時、タケルがいきなり言い出した。
「裏山?なんでまた。」
箸を止めた俺は、彼の顔をじっと見る。
「いや、入学記念ってことでさ。あの神社とか懐かしいだろ?写真でも撮ろうぜ。」
ガタイの良いタケルは、こういう思いつきが得意だ。子供の頃から変わらない。
「ふーん、タケルらしいけど。正直めんどくさいね。」
ユウカが冷たい目を向けながらも、箸を口元に運ぶ。
「なんだよユウカ、たまにはこういうのもいいだろ?お前だって昔、あそこで走り回ってただろ!」
「それは昔の話でしょ。私はもう子供じゃないの。」
そっけなく返すユウカに、タケルは肩をすくめる。
「……まあ、暇だし行ってみてもいいかもな。」
俺がそう言うと、ユウカは少し驚いた顔をしてこっちを見た。
「え、いいの?」
「タケルが言い出したら止まんないだろ。どうせなら付き合ったほうが楽だし。」
「よっしゃ!決まり!」
タケルは満面の笑みで拳を突き上げた。俺たち3人は昔からこんな感じだ。