5話目
コンコン――。
「はい。」
「失礼します。」
中へ入るとひょろりとした細い男性が胸を押さえて立っている。
黒縁眼鏡をかけ、少ない髪の毛を無理やり分けてビシッとスーツを着ている。
息を止めていても整髪料の臭いがきつくて、少しむせてしまった。
私はさっきの言葉にやっと納得した。
「教頭、連れてきました。」
「宮下くん!遅かったじゃないか!笠原先生あなたはまた私の血圧を上げる気かね!?」
大声を出されて、反射的にビクッとしてしまった。
『はっはい!すみませんでした。』と慌てて謝る。
笠原先生は慣れているのか、「はぃはぃ。」と話を流していた。
「私は7時半からここへ来ているんだ!次から気をつけるように!
それにその髪は校則違反だ!髪留めは無いのか?全く最近の子はだらしがない!」
『・・・はい。気をつけます。』
別に遅刻したわけじゃないのに・・・。
なんだか急にテンションが下がってしまった。
身だしなみだってちゃんとしたつもりだったし、
せっかく楽しみだったのに気分が台無し。
「校長は急に会議が入ってね、昨日から大阪へ言っているんだ。
今日は私から入学のことに関してお話しするよ。
我が学園はとても優秀でね。素晴らしい大学に入学した生徒も沢山いるんだよ。
それに~~~~で~~~~~~だから~~~~と~~~~~~~でね。」
だらだらと長い話は予鈴のチャイムがなるまで続いた。
「あ~~まぁまた詳しい話は担任の笠原先生から聞くように。」
「よろしく。」と笠原先生がそっけなく言う。
『よろしくお願いします。』
私はお辞儀をしたが先生はこっちを見ていなかった。
ようやく教頭から解放されたが、私は不安ともやもやでいっぱいになった。
笠原先生と一緒に職員室を出るとふーーーーっと大きなため息が聞こえた。
教室までの廊下をゆっくりと歩く。
「校長がいないからって調子に乗りやがってぁのバーコード。 」
と文句を言ってくれたので私の気持ちも少しすっきりした。
『あの私ヘアゴム持ってきて無いんですけど・・・。』
「あ~ほっとけほっとけ。どうせ誰も言うこと聞きゃしねーから。」
『でも・・。』
「お前教室入っても逃げるんじゃねーぞ。」
『え?』
笠原先生はまた意味深長な事を言って2ーFと書かれた教室へ入っていく。
私が教室へ入った瞬間、どっと騒がしくなった。
私はクラスを見回して混乱してしまった。
(女だ女がきた!!)
(うっわーーーかわいーー!!)
(あの子だよ!廊下ですれ違った子!!)
(ヒューヒュー♪)
「うるせー黙れ!席に着け!!えー今日は転校生を紹介する。名前は・・・」
『笠原先生!ちょっと!!』
私は慌てて先生を廊下へ引っ張り出した。
『これは・・・・どうゆうことですか?』
「何が?」
『何がって・・・女子が全くいないじゃないですか!!!?』
笠原先生は面倒くさそうに頭をかいた。