4話目
自意識過剰だと言われるかもしれないけれど、職員室に行く間
すれ違う生徒からものすごく見られている気がする。
(私何か変なのかな・・・?)
視線を合わさないようにできるだけ早く歩いた。
職員室に入ろうドアノブに手をかけた瞬間、ガンッと扉が開く。
『きゃっ』
ドサドサッ――。
私は驚いて鞄を落としてしまった。
急いで自転車の鍵を入れた鞄は、ちゃんと締まっていなかったらしく、
ノートがあたりに散らばってしまった。
『すみません!』
すぐにノートを拾って鞄にしまっていく。恥ずかしさのあまりに顔が火照ってきた。
おそるおそる見上げると、目つきの悪いツンツン頭の男が仁王立ちで
こっちを見ている。
学ランのボタンを全部はずし、中のシャツがだらりと出ている。
ズボンを下げ、ベルトにはチェーンがついて動くとジャラジャラ音がした。
私の顔を見て男はチッと舌打ちすると、足を引きずりながらどこかへ行ってしまった。
「おいコラ!!待てって――おっと・・・。」
無精ひげが生え、ボサボサ頭の白衣を着た先生が男を追いかけようとしたが
しゃがんでいた私に気づいて足を止めた。一瞬首を傾げたが「あぁ!」と納得して
「もしかして転校生の宮下凛さん?」と聞いてきた。
離婚してしまったため、斉藤から母の旧姓の
宮下に変わったのだがまだ呼ばれなれていないため、
一瞬自分のことを言われているのか分からなかった。
さっきの男のせいで半べそをかいてた私はコクンと頷くのが精一杯だったが、
先生はそんな私を察してくれて「気にするな。」と言った後、
校長室へ案内してくれた。
首からぶら下げたネームプレートに笠原大介と書かれていた。
私は胸に抱いた鞄をぎゅっと抱きしめてゆっくり笠原先生の後についていく。
職員室の中はストーブのおかげですごく暖かかった。
すれ違う女の先生が会釈をしてくれたので私も慌てて挨拶した。
校長室の前で足を止めると、
「部屋に入ったら息を止めとけよ。」と笠原先生が言った。
私は不思議に思いながらできるだけいっぱい空気を吸った。