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転校生  作者: 藤堂あき
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3話目

『いってきまーーーす!』


私は勢いよく玄関を飛び出した。

新しく買ってもらった自転車にまたがると、五年ぶりにのったもんだから

少しよろけてしまった。母が心配そうに私を見つめる。


「いってらっしゃい。気をつけてね。」


私は振り返り左腕を上にあげて母にピースをした。

すると母は少し安心したのか「グッジョブ」と親指を立てて返してくる。

私は前を向いて思い切りペダルを踏んだ。


学校までの距離は歩いて三十分程。

校長先生と担任の先生からお話があるから早く来てと言われていたが、

何度も鏡の前で身だしなみのチェックをしていたら遅くなってしまった。

でもテニス部で鍛えた脚力のおかげで十分もあれば着きそうだ。


下り坂にさしかかりスピードにのった自転車は風をどんどん切っていく。

冬の冷たい空気で息が白く濁った。

母の実家は前と住んでいた頃に比べると田舎で辺りは畑や田んぼばかり。

駅から2時間ほど行けば街に出れるらしく、母に今度そこへ行って

買い物をしようと誘われた。

後個人的に困ったのがコンビニがないということ。

おばあちゃんは「スーパーがある!」と言っていたけれど、それは違う!

学校の帰り毎日寄るほどコンビニ好きな私にとってそれはとてもショックだった・・・。


でもこっちに来ていいこともたくさんあった。

空気は澄んでおいしいし、空もずっと高くて星がきれいだった。

近所の人たちもとっても優しくて、挨拶周りに行ったとき畑で取れた野菜をくれた。

そしてなによりおばあちゃんのご飯が最高なのだ!!


夜になると急に寂しくなって友達には何回か携帯にメールをしたけど、

父と先輩には連絡を取っていない。

先輩からもらったあの手紙も、読む勇気が無くてまだあけれてない。

私はどこまで臆病者なんだろう。


しばらくして大通りに出た。小さなスーパー、病院、本屋、公園の隣に

自動販売機があった。

三つ目の信号を右に曲がれば学校だ。

同じ制服の子達がちらほら見えてきた。


最後の信号にひっかかりブレーキをかける。

しばらく待っていると大きなあくびがでた。昨日緊張してなかなか寝付けなかったのだ。

不安と期待が入り混じる。あくびをおさえた手がかすかに震えていた。


(今日から新しい学校での生活が始まるのか。友達できるかな。)


信号が青になると同時に後ろに停まっていた車がゆっくり動き出す。

私は我に返って瞬きを数回した後、しっかりハンドルを握って学校へ向かった。



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