2話目
どんな親だって久々に連絡があったと思えば家に大量のダンボールが届き
娘が離婚をし、子供を連れて帰ってくれば文句も言いたくなると思う。
おばあちゃんは今日ずっと不機嫌のままだ。
ひとりでさっさとお風呂に入った母は気抜けたのか、しばらくして寝てしまった。
私は布団を取りに階段を降りると台所からトントンと包丁の音が聞こえてきた。
のれんをくぐると白くて大きな冷蔵庫と、きっちりと並んだ調味料と食器棚があり、
おばあちゃんの几帳面さを現していた。
かっぽう着姿のおばあちゃんが晩御飯の準備をしている。
隣の居間ではおじいちゃんがはんてん姿でこたつに入ってテレビを見ていた。
声をかけようかためらっていたらおばあちゃんが後ろを振り返り私に気がついた。
「あんれどうしたの?」
『お母さんが寝ちゃったので毛布を取りに来ました。』
「はー全くあの子は・・・・。」
おばあちゃんは眉間にしわをよせて、布巾で手を拭いた後、
ぶつぶつ言いながら寝室へ行ってしまった。
私も手伝おうと思っていたらおじいちゃんに
「新聞」
と言われてしまったので慌てて新聞を探して渡した。
おじいちゃんはじっと私の顔を見て
「ああすまんすまん。ばーさんかと思っていたら、凛ちゃんだったか。」
がははっと大きな声で笑われて、私もつられて笑った。
しばらくしておばあちゃんが腰を押さえて帰ってきた。
「あの何かお手伝いしましょうか?」
と言うとおばあちゃんはびっくりした顔をしていたが、しばらく私の包丁さばきを見て
ほうほうと感心していた。
「うまいもんだね。律子と大違いだ。」
『母はお仕事で忙しかったんで、私が料理を作っていたんです。』
「そうかそうか。本当にうちの娘にゃもったいないね。
凛ちゃんはいいお嫁さんになるよ。」
そう言われて少しくすぐったい気持ちになった。
おばあちゃんの鼻歌とお鍋がリズムに合わせてぐつぐつ歌う。
初めてガスを使ってお米を炊いたら火加減が難しくて少し焦がしてしまった。
しょんぼりしていたらおじいちゃんが、
「そのコゲがうまいんじゃ。」
と言ってくれた。
晩ご飯は肉じゃがとブリ大根ほうれんそうのおひたしにお味噌汁。
全部母の大好物だ。母にとって最高のご馳走だろう。
おじいちゃんが意地悪して「三人で先に食べよう。」と私たちに言った。
いつも一人でご飯を食べていた私だったから、おばあちゃんと一緒に作った
ご飯が本当においしくて、2回もおかわりしてしまった。
「ちょっと何先に食べてんのー!?」
と母が起きて文句を言いっていたけど、やはりおふくろの味は最高らしく
うまいうまいと食べながら涙ぐんでいた。
これもおばあちゃんなりの歓迎なんだろう。
なんだかんだ言っても久々に娘に会えて嬉しかったんだと思う。
これからどうなるのかと不安だったけど、なんとかやっていけそうな気がしていた。