1話目
引越しの片付けが終わると母は畳の上に寝転がった。
「あーやっと終わった。もう疲れたわ。何もしたくない。」
と言いながら背伸びをした。
私はミネラルウォーターを飲んで、ふぅとため息をついた。
たかが二人分の荷物だと思ってあなどっていたけれど、
オシャレな母は服や鞄にアクセサリーと圧倒的にダンボールの数が多い。
私もその遺伝子を受け継いでいるのか、ショッピングが大好きで
欲しいと思うと我慢できないので買ってしまう。
そしてなかなか物を捨てられないというなんとも厄介な性格なのだ。
母は今年で45歳だが、年齢を感じさせないほど若く見える。
小学校の頃、家庭訪問で先生が母を姉と勘違いしたくらいだ。
母が起き上がり手を差し出してきたので、キャップをしっかりしめて渡した。
ゴクゴクといい音が聞こえる。よっぽど喉が渇いていたんだろう。
『おばあちゃんすっごく怒ってたね。大丈夫かな?』
「あの人は昔っからそーなのよ。憎まれっ子はなんとかって言うでしょ?
無駄に長生きしちゃってさー。」
『お母さん、それは言いすぎだよ。』
「あたしの親だからいいの。本当は二人で暮らしたかったんだけど引越し費用で
無くなっちゃったし、お金が貯まるまでしばらくの辛抱よ。」
『私は別にどっちでもいいよ。おばあちゃんもおじいちゃんも大好きだし。』
私が笑ってそう言うと、母は安心したのか、かすかに微笑んだ。
「これから忙しくなるわね・・・。」
そう言いながらも私にはなぜか母が楽しそうに見えてしまった。