16話目
「凛ちゃん大丈夫?」
アキちゃんが上着をそっとかけてくれた。
「直樹!お前は停学中だろう!今すぐ寮へ帰れ!!」
「ケッ」
直樹は私をしばらく睨みつけるとガンッと机を蹴って教室からゆっくり出て行った。
まだ涙はおさまったが、震えが全く止まらない。
「宮下後で科学室に来い。」と笠原先生が言った。
ホームルームの後、アキちゃんと一緒に向かった。
『なんで職員室じゃないの?』
「直樹が停学中でしょ?バレテ問題になるとやっかいだから科学室へ呼んだんじゃない?」
『そっか・・。直樹をかばったんだ。』
なんとなくアキちゃんの機嫌が悪い気がした。
コンコンとノックをして科学室へ入った。
私は先生の元へ行き深々とお辞儀をした。
『笠原先生。さきほどは本当にありがとうございました。』
顔をあげると先生は真剣な顔をして聞いてきた。
「お前これから本当にやっていけるのか?」
『・・・・』
私は黙ってしまった。
本当に自分でもどうすればいいのか分からない。
でも折角母が一生懸命働いて学費を稼いでくれているのに
今更辞めるとも言いづらかった。
「今回は未遂でよかったものの、もしもそれ以上の事があってからでは
遅いんだぞ?直樹のことだ。きっと仲間を使ってなにか企んでるに違いない。
お前はそれでも耐えられるのか?」
「凛ちゃん・・・。」
アキちゃんがぎゅっと手を繋いでくれた。
しばらくして先生が深いため息をついた後、
「返事は今じゃなくてもいいからもう一度よく考えるんだ。」
心の中に立ち向かっていく気の私と弱虫で泣いてばかりの私がいて
なかなか決心がつかなかった。
『はい。すみませんでした。』
科学室を出るとアキちゃんが急に怒り出した。
「納得いかない!凛ちゃんを追い出そうとしてるだけじゃん!!
なんでカサピーは直樹や間たちには何も言わないの!!?」
『きっとその前にあったこと見てなかったんじゃないかな?』
「違うね。」
私は?と首をかしげた。
「もしかしてカサピー弱み握られてんじゃないの?」
私はアキちゃんの言ってる意味がよくわからなかった。