13話目
『どうゆうこと?』
「病院に居るときは大変だったけど、入学式の時はさわやかで
明るくていい奴だったよ。
同じクラスだったし病院で何回も会ってたから
たまに話してたんだけど、
足を引きずって歩いているのを見て女子が笑ったんだよ。」
『・・・・そんな。』
「直樹は1日何時間もリハビリして
やっとあそこまで歩けるようになったのに、そりゃムカつくよね。
女子に好かれたい男子までもグルになって直樹をからかいだした。
でもあいつずっと我慢してたよ。あの日までは。」
なんだか嫌な予感がしてきた。
『・・・何があったの?』
「いつも大事にしていたぼろぼろのお守りを直樹の目の前で女子が燃やしたんだよ。」
私はごくりと唾を飲み込んだ。
『ひどい・・・。ひどすぎるよ。』
「それであいつがブチ切れて女子をぼこぼこに殴ってその子は入院。
あとは転校したり辞めたやつもいたな。
直樹はじいちゃんがこの学校の理事長みたいでPTAや教育委員会と
色々問題になったけど、謹慎処分のみで退学には免れてた。」
私は言葉がでなかった。
何も知らなかった。
ただ一方的に怒りをぶつけてしまったことを悔やんだ。
暴力はいけないことかもしれないけど、直樹は何も悪くない。
諸悪の根源はその女だ。
『ねぇアキちゃん。その入院してた女の子に会えないかな?』
「・・・どうする気?」
『上田くんに謝ってもらおうと思って。』
アキちゃんは、はぁーーと大きなため息を吐いた。
「やめたほうがいい。」とはっきり言った。
『どうして?それが原因で上田くんが苦しんでいるなら
助けてあげたいって思わない?』
「そうゆうのをおせっかいって言うのよ!」
ビシッと言われてしゅんとしてしまった。
「確かに凛ちゃんの言ってることも分かるわよ?
でも過去の話をほじくり返して、忘れたい記憶を蘇らせれば
また同じようにもめるだけ。直樹がまた傷つくだけよ?
もうこれは済んだことなの。だからかかわっちゃダメ!」
『でもそんなの上田くんがかわいそうだよ・・・。』
しばらくアキちゃんは考えてとんでもないことを口走った。
「そんなに気になるんなら直樹の彼女になっちゃえば?」
『・・・・えええええええええ!!!!』
「コラ!あなたたちなにやってるの!?今授業中でしょ?」
帰ってきた保健の先生に見つかって
「すみません!!!」と慌ててその場から逃げた。
階段で少し止まって息を整えているとアキちゃんが
「アタシが知る限り凛ちゃんみたいな子は直樹のタイプだよ。」と
余計なことを言ってくる。
廊下を全力疾走したからこんなに動悸が激しいというワケじゃない。
「彼女」という言葉に動揺したからだ。
『ない!それはないから!!』
「え~良い考えだと思ったのにな~」
私は肩を落としてしまった。
アキちゃんは確実に私で遊んでいる。
ゆっくり教室に帰ると笠原先生は「早く席に着け。」としか言わなかった。
授業はもうすぐ終わる。
私はこれからどうやってこの学校でやっていくか冷静になって考えてみると
「彼女」というアイデアも正直悪くないかもと思ってしまったのだった。