9話目
長く重い沈黙が続いた。
私は耐えられず口を開こうとした瞬間・・・・。
ぐ~ぎゅるるるるるる~
と お腹の音がなってしまった。
私が真っ赤になって謝ると ぷっとアキちゃんが笑い出した。
「ご飯食べよっか!」
『・・・うん。』
アキちゃんは「行こう。」と手を差し出してきた。
私は一瞬ためらったが、思わず手を繋いでしまった。
アキちゃんは嬉しそうな顔をしてぎゅっと握りしめてきた。
私の心臓は一気にうるさくなっていく。
すれ違う人にすごく見られてますます恥ずかしくなった。
『やっやっぱり離して!』
「ふーんそんなこと言うんだ。
せっかく直樹のこと教えてあげようと思ったのに。」
『え!本当!?』
「アタシはまだ凛ちゃんと一緒にいたいしね。」
『アキちゃん・・・ありがとう!』
お腹は空いているはずだった。
せっかくおばあちゃんが私の好物ばかり入れてくれていたのに
味がしない。私は箸を止めてちらりとアキちゃんの方を見た。
私は上田直樹の話をどう切り出していいかわからず、もじもじしていたら
「うちの学校ね元々男子校だったの。」とアキちゃんが言ってくれた。
『そうだったんだ。』
アキちゃんは遠くを見つめながらゆっくりと話始めた。
「うん。でも見てのとおり田舎でしょ?昔は子供もいっぱい居たんだけど
どうしても地方に行っちゃったりして5年前に共学に変わったの。」
『それで女子が元々少ないんだね。じゃあ上田直樹は?』
「直樹は3歳から中学までテニスをやってたらしいけど
事故が原因で足が動かなくなったの。」
私は足を引きずっていたのを思い出した。
「最初はもう一度テニスをしたい!って言って頑張っていた
らしいんだけど、どうしても事故の後遺症が残ってしまって
テニス一筋だった直樹は一生運動できないって言われて
相当落ち込んでやばかったみたい。」
『そんな・・・』
「自暴自棄になって親も手に負えなくなって誰も知らない
田舎のリハビリ施設がある病院に直樹を捨てたって感じかな。」
『ちょっと待って!なんでアキちゃんはそんなに詳しいの?』
「言ってなかったっけ?アタシの家がその病院なの。
学校の近くにあったでしょ?」
『大通りのところね。朝通ったわ。』
「うん。今は退院して学校の寮で生活してる。でもアイツすごいよ?
すっげー頭いいの!!常に学年で1位。」
『・・・すごいね。』
「どうだいぶ分かってきた?」
『うん。でもなんで女子をいじめるのか分からない。』
「それは・・・」
急にクラスが騒ぎ出した。
アキちゃんはみるみる真っ青になっていく。
振り返ると私の後ろに上田直樹が立っていた。