ある観覧車の独り言
なろうラジオ大賞6の応募作品です。
わたしはとある遊園地の観覧車。
古くなった先代が取り壊され、新しく建て替えられた若輩者。観覧車にしては珍しく、ペットも乗る事もできる。犬さんばかりだけど。
この遊園地は公園もあり、緑豊かなのでわたしに乗れば春は桜、秋は紅葉の絨毯を見ることができる。
夏は暑いので乗りたがる人はあまり居ない。
客層は老若男女様々な人が来るが、
小さい頃から来ているお客さんが大人になり子供を連れて来て、その子供が成長して自分の子供を連れて来て、というのが多い。
そんなわたしが好きな事は乗客の観察。
皆色々な話をしていて見ていると楽しい。
わたしの事を褒めてくれる人もいる。
でもお客さんが多い時期は誰を観察しようか悩む。
この時期は卒業シーズンで、就職前の思い出にと乗る人も多い。感慨深そうにしてる。
新生活頑張れ!
デートで乗る若いカップルはいない。残念。
ラブラブな姿が見たいのに。
老夫婦が2人乗った。思い出話に花を咲かせている。先代の話も出て来て人気だなぁと思う。あ、今わたし褒められた!わーい♪
こっちは男子同士で乗っている。
あら好きな子に告白して振られたのね。
泣いている子を慰めているルームメイト。
人生はまだ長い、いい出会いも待ってるよ!!
今度はおばあちゃんとお母さん、女の子の3人組。
通っているスイミングスクールで泳げるようになったんだ、っておばあちゃんに嬉しそうに話す女の子。
まだそんなに長くは泳げないし、少し怖いけど頑張るって言っている。
おばあちゃんも嬉しそう。
この間乗った時にはまだ泳げなかった女の子。
泳げるようになったんだね、やったねおめでとう!
次に乗る時には長く泳げるようになっているのかな?わくわく。
あ、男の人が猫さん連れて乗ってきた!!
猫さんは初めてだよ!可愛い!!
びっくりしてるみたい。お目目まんまる。でも
大人しく抱っこされている。
飼い主の顔を見て、外を見てを繰り返し、
落ち着いたのか外の景色をガン見しだした。
それを見て優しく撫でる男の人。微笑ましい。
あ、いつもお散歩後に乗ってくる人だ。
この景色が好きでいつも来るんだ。先代からずっと。
こんばんは!元気?うん、わたしは今日も元気!
いつもありがとう。
そして営業は終わり。人がいなくなる。
楽しかった!皆乗ってくれてありがとう。
明日はどんな人が乗るかな?
お読み頂きありがとうございます。