表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

『第5回「下野紘・巽悠衣子の小説家になろうラジオ」大賞』参加作品

彼女が帽子をかぶるワケ


「なあ葵」

「なあに司」


「俺たち映画観に行くんだよな?」

「そうだけど?」


「なんでそんな格好しているんだ?」

「え!? もしかして……帽子似合ってない?」


「いや、そのニット帽は可愛いと思うけど……」

「けど何よ」


「目出し帽にニット帽の重ね着はちょっと防御力高すぎるんじゃないのか」


「貴様、何を申しておるのか。このような事象は、非常識であると言い張るのか」 

(何言ってんのよ、こんなの普通だって)


 どうやら触れてはいけなかったらしい。葵は動揺すると言葉遣いがおかしくなるクセがある。


「いや、別に悪いって言ってるわけじゃないんだ。ただせっかくのデートだろ? 葵の可愛い顔が見れなくて残念だな~って思ってさ」


「ば、馬鹿なり。わが身、可憐なりとか、あり得ぬことなりや」

(ば、馬鹿じゃないの!? わ、私が可愛いとかありえないし)


 いかん……機嫌を取るつもりが深みにはまってしまった。


 これ以上葵を動揺させると理解不能なこと言い出しかねないからな。



「とりあえず映画館入ろうか。もうすぐ始まるみたいだし」


「そうだな、貴様の言う通りだ。この世界は、私たちの想像力次第で、いかようにも変えられるのだ。だが、それを為すためには、私たちは、決断すること、己を信じ、そして、過去の自分自身をも超えることが必要だろう」

(うん)


 ふう……危なかったな。どうやら厨二病レベルに戻ったみたいだ。このまま落ち着いてくれると良いけど。



「わあ……すごい迫力だね!!」


 良かった。葵も映画を楽しんでいるみたいだし。さすがに暑かったのか、上映中は目出し帽もニット帽もかぶっていない。


「……可愛いな」


 横目で眺める葵は本当に可愛い。おそらく地球上のあらゆる生物の中でも上位に入ると思う。割と本気で猫といい勝負になるんじゃないかな。



「映画楽しかったね」

「そうだな」


 上映が終わると再び目出し帽にニット帽の重ね着が復活した。


「何よ……その残念そうな顔は?」

「ダッテ、カオミエナイカラ」

「なんでカタコトなのよ」


 お前が動揺しないようにしているんだけどな。


「そんなに見たいの?」

「うん」

「でも駄目」


 ガックリ


「だって司以外の男に見られたくないから」


 葵さああああん!!!


「それより司こそなんで似合わないサングラスかけてんの?」


「だって直に見たら葵の眩しさで目がやられちまうからな」


「……ば、馬鹿なり、彼女を口説くことに何等の意味があるのか」

(……ば、馬鹿、彼女を口説いてどうするつもり?)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 「だって司以外の男に見られたくないから」 は葵が正しい。 今の世の中、可愛い女連れてやがるチクショーぶっ殺してやる。 そんな理由で、通り魔殺人が起こる可能性もありますから。
[良い点] 彼女可愛いwww [一言] 言葉遣いがおかしくなるところツボでした。 好きすぎてヘンテコになってる。かわゆし、かわゆし♡
[良い点] 好きな人以外には顔を見せない……平安貴族女性のような奥ゆかしさですね。 司くんも彼女が大好きすぎてまともに見られないなんて、お似合いすぎの二人です。 [一言] 彼女だろうが妻だろうが、口…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ