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【完結】身勝手な旦那様と離縁したら、異国で我が子と幸せになれました  作者: 綾雅「可愛い継子」ほか、11月は2冊!
本編

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76.我が願いを聞き届け給え――SIDE皇帝

 あの日、幸せは突然壊された。可愛い末娘にそっくりの愛らしい孫娘バレンティナは、屋敷に入り込んだ賊に傷つけられたのだ。


 彼女は傷ついてきた。結婚した夫はクズで、モンテシーノス王家が処断した。手ぬるい処理に納得できず、モンテシーノス王国との交易ルートを絞る。これにより王国の思い上がりを正す。間に位置するアルムニア公国も同意し、同じ措置を取った。


 カルレオン帝国まで連れ帰った娘や孫を大切に保護し、屋敷や地位を与える。この国で出戻りは珍しくなく、離縁を理由に傷つけられる心配はなかった。だが皇族に相応しい屋敷や地位は必須だ。


 父である先皇ナサニエルが率先して動き、反対する国内勢力を一掃した。幸いにして、アルムニア大公家の後継オスカルが、バレンティナを気にかけている。まだ若いのだからゆっくり距離を詰め、幸せになって欲しいと願った。


 愚かなグラセス公爵家の後妻がもたらしたトラブルを片付ける。夜会で傷つけられたのは後妻の両親で、事実上の当事者だった。社交界の貴族の間で「自業自得だ」という見方が広がる。それも当然だろう。元公爵家の肩書を利用し、他の貴族を詐欺にかけたのだから。


 ここ1年で起きた事件の処理を行い、ようやくひ孫のナサニエルに顔を見せる余裕が出来た。この時期に、なぜこのような……悲劇が?


 捕まえた犯人は、迎賓館の元使用人だった。エリサリデ公爵家を興すに当たり、迎賓館を屋敷として与える。ところが宮殿から派遣した役人の報告では、驚くほど管理に手を抜かれていた。多額の管理費用が着服され、温室は密林のごとき荒れよう。屋敷は蜘蛛の巣が張り、埃だらけであった。


 不備を咎めて、管理人や使用人を放逐した。大量に使い込んだ金は彼らの借金となり、実家や家族が弁済に走る。全額返済するよう命じ、事件は終ったかに思われた。しかし、彼らは納得しなかったのだ。


 己の振る舞いや悪行を棚に上げ、かつて職場であった屋敷に忍び込んだ。建物の構造を知り尽くした男3人は、公爵家から金目の物を奪う強盗を企てる。忍び込んだ先で、リリアナとエルを見守るバレンティナと遭遇した。


 そのまま逃げればいいものを……男達はバレンティナの装飾品に目をつけた。我らから見たら、普段使いの首飾りや髪飾りだった。だが借金に追われる男達には、値千金の価値があったのだろう。後ろから襲い、バレンティナを失明させた。


 悪意を持って皇族を傷つけた男達は、専門の機関が牢に収容した。命じたのは簡単に死なせるな、とそれだけ。生きていることを悔やみ、己の罪を自覚させるまで殺すな。だが死なせてくれと哀願したら殺せ。


 残酷で結構。冷酷で当たり前。皇帝という肩書きに付随する血塗られた役割は、常に重く冷たい。なぜもっと護衛をつけなかった? 罪が発覚した時に、関係者を全員処刑しなかった! 後悔と怒りで拳が震えた。


「あなた、ティナのために祈りましょう。あの子が幸せになれるように」


 爪が食い込んだ拳を両手で包み、妻である皇后が囁く。その言葉に、心から神に祈った。我が目と引き換えに、可愛い孫娘の目を治して欲しい。あの子は、まだ見なければならない広い世界があり、見守るべき可愛い息子がいる。


 どうかこの願いを聞き届け給え。

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― 新着の感想 ―
[一言] あくま「そこのジジイの目は要らんが、ティナたんを(一時的に)失明させたアンポンタンどもの公開処刑とティナたんの視力でトレードしない?」 皇帝陛下「おっけぇ~♪ 皇族に弓引いた愚か者どもの末路…
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