弐・暴露
俺は周りにも聞こえるよう、大きな声で喋った。
その意図に気づいたのか、誠司は周りを見渡した。顔を赤くし、そして怒鳴った。
「うるせぇ! お前、何様のつまりだ。俺は邑財務大臣の息子なんだぞ!! 父さんに言えば、どうなるか分かるよな!?」
……ここまでの腐れっぷり。家柄の良さだけで差別するような人に容赦などしない。あまりこの手段は使いたくなかったが、仕方ない。
俺は大きく息を吸い、言い放った。
「そんなに家柄に固辞するなら、言わせてもらう。お前、養子の分際で何粋がってるんだ?」
「……なん、だと……」
誠司は一歩後ろに後ずさった。やはり、俺の情報は間違っていなかったようだ。
俺はさらに付け加えた。
「邑大臣は子供ができないまま妻が他界したため、養子をとった。それがお前だ。さらに、お前は昔から生意気でよく揉め事を起こしていたそうじゃないか。挙句の果てに、警察沙汰にまでなったそうだね。それも何度もね」
誠司は何歩もさがり、終いには尻餅をついた。
「それと、お前は今まで身分を使ったいじめや絡みを繰り返したせいで、父親から注意勧告を受けていたよね? たしか『次なにか問題を起こしたら、お前を勘当する』だっけか」
「……」
もうひと押しだ、俺はそう思った。見てみれば、心が折れかけているようだが、まだダメだ。やるなら徹底的にだ。
「実はね。俺は君の父親と知り合いなんだよ。このことを話せば、君はどうなるんだろうね? それに……俺の父親は警視総監なんだ。この際、君がやってきたことを調べ直してあげようか? まぁ、もう知ってるけどね」
ここだけの話、俺の父は警視総監だ。とにかく正義感が強く、その性質は俺にまで遺伝していた。
そんな俺は自分でも分かるほど、悪い笑みを浮かべた。その顔に恐怖したのか、誠司は『うわぁぁぁ!!』と叫びながら、走り去った。まだ話足りないことが山ほどあるんだけどね。
問題児を追っ払ったら、周りから拍手が送られた。俺は恥ずかしくなり、華蓮の手を掴んで走り出した。少し離れた所で走るのをやめた。息切れて立ち止まっていると、華蓮が話しかけてきた。
「流くん、かっこよかったよ」
「あぁ、ありがとう。はぁ、入学初日から目立っちゃったな」
「そうだけど、流くんがかっこよかったから私は大満足だよ」
確かにな。俺も華蓮の笑顔が見れて幸せだよ。いつものように一緒に帰った。すると、華蓮が鋭い質問をした。
「それにしても、よく知ってたね。個人情報じゃないの?」
一瞬言葉を詰まらせたが、前々から考えていた言い訳を口にした。
「父さんが警察官だから色々と知っていて、その伝手でね」
「なるほど。流石は流くんだね!」
俺は少し照れながら家に帰った。
華蓮と一緒にいる間は楽しすぎてしょうが無かった。