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第11話《side:ケルム(騎士団長かつ豚ヅラの人)》:次から次に

 アルミニウス騎士団はかつてない混乱の最中にあった。

 そして、そのことに騎士団長ケルム・デナウはかつてなく頭を痛めていた。


「……結局、使い物になるのはどの程度だ?」


 書斎の椅子に力なく座りながらに疑問を発する。

 答えたのは、これまた椅子に力なく身を収めるヨギームだ。


「自ら槍を振るえるという意味ではゼロとなります。指揮で陣頭に立つ程度でしたら、まぁ、1割程度かと」


 ケルムは思わず眉間を押さえるのだった。


 悩ましいなどというものでは無かった。

 これが現状だった。

 アルミニウス騎士団の誇る老雄たち、その情けない現状だ。


「……それでどうだ? 彼らの現状によって、このアルミニウス騎士団の力量はどの程度まで落ちる?」

「そうですなぁ。やはり、彼らが土台骨にして大黒柱であり。今までの半分ほども力を発揮出来れば上出来かと」


 もはや、ため息も出ないケルムだった。

 自身の切り札である、カルヌン王国最強の騎士団。

 それが、こうも頼りない存在に変貌してしまったのだ。


「……何故だ? 何故、こんなことになっている?」


 当然の疑問の声に、ヨギームが見せたのは困惑の表情だった。


「一向に分かりません。目下調査中ですが、その兆しもまったく」

「そうか。まったく何故、この時期にこんな……何か理由があるはずだが……」


 原因があれば解決も出来るはず。

 そう思ってケルムは頭を悩ませることになる。


 ちなみにだが、彼の頭にはシェドの存在などは一片として浮かんでいなかった。

 彼は身分の低い者に一片の価値も認めていない。

 すでに忘れ去っていれば当然の結果だった。


 よって、ケルムは原因に思い至ることは無く思考を止めるのだった。

 起こってしまったことにこれ以上こだわっても仕方がない。 

 今後について、建設的に思考を巡らせることにした。


「まぁ、救いなのは計画には現状問題が生じてはいないことか」


 ケルムの言葉に、ヨギームは頷きを見せてくる。


「そのようですな。西の反乱に対し、王家は予定通りの混迷を見せているそうで」

「あぁ。現王などは縮み上がって、亡命などとほざいている有様だ。馬脚を十分に露わにしてくれていれば、鎮圧など夢のまた夢だな」

「ありがたくもですなぁ」

「問題は、頃合いを見計らって私が鎮圧してみせねばならんのだが……どうだ?」


 現状で可能か? という問いだったが、ヨギームの反応は頷きだった。


「まぁ、難しくはないことでしょう。西の反乱は、その周辺諸侯程度では無理でしょうが、閣下の手勢があれば鎮圧も容易い規模です」

「重要なのは圧倒出来るかどうかだが、そこは?」


 その問いに、親友にして熟達の指揮官は淡々と応じてきた。


「十分に可能かと。閣下にはやはり、このアルミニウス騎士団があります。強力なスキルを持つ有望な若手も多ければ、その指揮は百戦錬磨の我々です。そもそも半分程度の力量でも、他の騎士団を圧倒する実力は十分にあります」


 ケルムはほっと息を吐いた。

 現状に少なからず不安を抱いていたのだが、この分であれば大望を果たすことが出来るだろう。


 そう安堵した矢先だった。


「失礼! 騎士団長殿にご報告が!」


 扉が鳴っての注進の声だった。

 ケルムは露骨に嫌な顔をすることになる。

 前回のことが若干のトラウマになっているのだ。

 老雄たちが老いを見せたとの報告は、ケルムにかなりの心痛をもたらしたのだった。


 しかし、さすがに今回はそうでは無いだろう。


 扉の前に立たせておくわけにもいかなければ、「入れ」と応じることになる。

 今回は一体何の報告は何なのか。

 少しばかり不安を抱くケルムの前で、若い団員は機敏に声を張り上げる。


「申し上げます! 西の反乱ですが、無事に鎮圧されたとの報であります!」


 よしよし、今回は騎士団の異変を告げるものでは無かった。


 そう安堵することになったケルムは、しかしすぐに安堵していられる報告では無いことに気づいた。


「西が……鎮圧だと?」

「は。詳細はまだですか、その点は確かです」


 確かと言われて、しかしケルムは信じられなかった。

 反乱を起こした領主の戦力は決して小さくは無い。

 西の周辺諸侯程度が相手ならば、一年は軽く戦える実力があるはずなのだ。


「……反乱の報があってから、まだ20日も経ってはおらんのだぞ?」

「は。驚くべき報ですが、しかし情報は確かのものと……か、閣下?」


 団員の疑問の声に、ケルムは応じることが出来なかった。


 思わぬ事態に、ただただ椅子の上で呆然とするしか無かったのだ。


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