私の何が悪いのか理解出来ないわ。
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ここはとある学園の卒業記念パーティー。卒業生は皆きらびやかなシャンデリアの下、色とりどりの美しいドレスを身にまとい、ある者はダンスを。ある者は軽食をと思い思いにパーティーを楽しんでいる。その中でも一際目立つのは深紅のマーメイドドレスを身にまとった艶やかなプラチナブロンドの髪の少女と複数の男達の揉め事だった。
「アリストワーズ・シャロン公爵令嬢。貴様と婚約破棄を宣言する。」
アリストワーズ・シャロン。彼女は4大公爵家のシャロン家のご令嬢である。彼女のエメラルドのように煌めく瞳には不快感が表れていた。
「カイル様。いえ、カイルベルト・ミリトアーナ王子殿下。わたくしは婚約破棄でも構いませんが何故なのか説明してもらってもよろしくて?」
「説明だと?そんなのお前が一番わかっているだろう。お前がミズキを苛めた事はわかっている。しらばっくれるのも大概にしろ。」
そう言い放った王子の後ろには少女がいた。腰まである黒髪は艶やかで黒曜石のような漆黒の瞳はほのかに潤んでいる。肌は透けるように白く頬は薔薇色に色ずいている。美しいというよりは愛らしいという言葉が似合う少女は白から淡紅色へ変わるグラデーションが美しいドレスを着ている。王子の後ろに隠れている彼女に目を向けるとニコリと微笑んでいるようだった。
「お前はミズキを転ばせたり俺がプレゼントした物を奪い捨てたりしただろ!。」
王子は怒りを隠さずに吐き捨てた。ここが公式の場だと理解できていないのだろう。大声で喚く姿は大変見苦しい。
「何故わたくしがそのようなことをしなければならなくって?」
理解出来ないと言うアリストーワーズの言葉が王子の怒りを増長させる。なぜならその言葉のなかにあるミズキへの嘲りの様子を馬鹿な王子でも感じ取ることが出来たからである。流石に十数年貴族として生きてきてこのくらいの皮肉さえ解らないとなれば王子は貴族としていよいよ終わりだっだろう。
「わたくしはその……ミズキとやらには本日初めて会いましたの。苛める理由なんてなくってよ。」
アリストーワーズは初めましてとミズキへ声をかけるがミズキはアリストーワーズの方をちらりとも見ることはなかった。
「苛める理由だと?そんなの俺がミズキに構うから嫉妬したんだろう。」
「自意識過剰も大概になさっては?わたくしが嫉妬?あり得ませんわね。」
始めから貴方を好きだと思ったことはないと口外に口にするアリストーワーズの口元には馬鹿な王子に対する蔑んだ笑みが浮かんでいた。
「しらばっくれるのも大概にしろ。こちらにはお前が苛めていたという証拠があるんだぞ!」
「証拠ですって?」
「ああ。俺がこの目で捨てられている物をみたんだよ!」
「それに僕達だって転ばされている所をみたんだよ。」
王子の取り巻きの騎士団長の息子や、魔法団長の息子の双子が口々にわめきたてる。美しい顔を醜く歪ませ騒ぐ彼らには周囲の呆れた視線やクスクスと笑う声は届いていないようだった。
アリストーワーズは不敵に笑い
「そんなのは証拠にならなくってよ。自分がみたから?馬鹿馬鹿しい。もっときちんとした証拠をだして下さらないとお話になりませんわ。」
このような証拠をね。
そう言い、アリストーワーズは映像を写し出す事ができる魔道具を取り出し再生した。
夕暮れに染まる学園。そこにミズキはいた。 美しい髪飾りーーとても細かい装飾がほどこされているその髪飾りは一目みただけで高級な物だとわかる。ーーを手にしたミズキは何を思ったかそれを壊し使用人に片付けさせた。綺麗なはずの髪飾りは見るも無残な姿になっていた。その髪飾りにはサファイアの、そう、王子の瞳と同じ青色の宝石がついていたのだった。ただの貴族には買えるはずがない高価なそれは王子からの贈り物だったのでは無いだろうか。
「まだ続きはありますわよ。」
その言葉に周囲はひそかに沸き立つ。社交界では人の不幸は蜜の味。他人、とりわけ高位貴族の醜聞はとても面白いものなのだ。王子か公爵令嬢か。どちらにつく方が良いのか皆考え込んでいる。より自身が家が利益を得られるように状況によって媚びる相手を変える子息令嬢達は良くも悪くも貴族だった。
………続き。そういってアリストワーズが写し出したシーンにはアリストワーズ自身とミズキが写っていた。
学園の廊下を歩いているミズキ。何もない所で転んだミズキの近くをアリストワーズが通りかかかる。
「あら?大丈夫ですの?」
そう声をかけるアリストワーズ。声をかけられたミズキは涙目になりながらアリストワーズを睨んだようにみえる。そこに王子や双子達が通りかかり王子はこの状況をみてアリストワーズがミズキをこかしたかのように勘違いをした。
「おい。一体何をしている!」
「あらカイル様ご機嫌よう。」
声をあげる王子をよそにアリストワーズは優雅に挨拶をする。
「俺は何をしているんだと言っているんだ。早く答えろ!」
掴みかからんばかりの勢いで王子は言う。
「まぁ。大声をあげてはしたないですわ。わたくしはただこの方が転んだようですので声をかけただけですわ。」
「じゃあなぜミズキは泣きそうな顔をしているんだ。お前が足を引っ掻けて転ばせたんだろ。」
「そんな事するだなんて有り得ませんわ。」
「ふん。もういい。お前と話しても無駄だ。それよりもミズキの手当ての方が重要だ。」
そういい放ち王子たちはミズキを立たせその場から去っていったのだった。
こうして一部始終を見ると王子の言っていることが間違いでアリストワーズが言っていることが正しいのだとわかる。王子は勘違いで公爵令嬢を陥れた事になるのだ。この断固たる証拠をみて公爵令嬢ではなく王子側につこうと考えていた者は居なくなった。令息令嬢の大多数が公爵令嬢側につき王子達は完全に孤立したと言っても過言ではない。
「おいミズキ!どういうことなんだ!俺はミズキを信じていたのに。」
自分が勘違いしていた事にようやく気がついた王子は感情的になりながらミズキを問いただす。
「お可愛そうに頭の緩い王子は騙されてしまいましたのね。」
「だが、お茶会等もミズキだけ呼ばれなかったのを俺は知っているんだぞ。」
お前が他の令嬢に圧力をかけたのだろうと王子は口にする。王子は今さら自分が悪いのだと認めたくないのか必死になり公爵令嬢が虐めていたと言う証拠を探す。
「お茶会?あぁ、ありましたわね。わたくしはマナーのなってない子は呼ばない主義なのですわ。それに習って他の方々が呼ばなかったとしてもわたくしの知ったことではありませんわ。」
口外にミズキのマナーがなっていないからだと口にするアリストワーズ。
ねぇ。みなさん?わたくしがミズキさんを呼ぶなとでも言ったことがありまして?
そう周囲に尋ねると他のご令嬢方は口々に
『そんなことないわね。』
『そもそもミズキって平民よね?呼ぶわけないじゃない』
『お茶会に呼ばれたいならすることがあるんじゃないのかしら?』
『平民を呼んだとしてもねぇ。』
『そもそも仲良くなりたい訳でもないし呼ばないわよ。』
と口をそろえる。貴族のご令嬢には平民をお茶会に呼ぶメリットが一つもない。もし平民が粗相をしてお茶会を台無しにすればその責任はホストの令嬢にある。そんなリスクを負ってまでよく知らない平民を呼ぶことがないのはわかりきったことである。それを聞いて王子は崩れ落ちた。ここまで言われてしまえば自分に非があるとミズキが悪いのだと認めざるを得なかった。
その様子をアリストーワーズは横目にみてフンッと鼻で笑った。ここはアリストワーズの独壇場であった。
「もういいかしら王子殿下?わたくしは一切悪くないと言うことがおわかりになって?」
もういいでしょう。とアリストワーズは兵を呼んだ。
「この平民の悪女を追い出して牢に入れてしまいなさい。」
「は。畏まりました。」
兵に腕を捕まれミズキは引きずられながらここから出ていく……………
はずだった。ミズキは屈強な男の兵の手を振り払い声をだした。
「ちょっと待って。」
鈴がなるような澄んだ声。その声は決して大きい訳ではないのだが何故か会場一体へと響きわたった。
「あらミズキ様?何か言いたいことがおありなのかしら聞いてあげてもよろしくってよ。」
牢に入ってしまえばお会いすることもないですからね。とアリストワーズは笑う。
「ねぇアリス?私が物を捨てるのは悪いことなのかしら?」
純粋なる疑問。
心底訳がわからないわと言うミズキに周囲は戸惑う。皆、ミズキが何がいいたいのかが理解できなかったのだ。
「何がいいたいのかしら?」
呆気にとられる周囲をよそにミズキは続ける。
「私はいらないものを捨てただけよ?物を貰うのだって私が欲しいと言ったわけではないわ。」
「欲しいといったわけではないから許されるといいたいのかしら。わたくしの婚約者であった王子から髪飾りを受け取っているにもかかわらず欲しいと言ったわけではないから関係ないとでも思ってるのかしら。それとアリスというのはわたくしのことかしら?目上の者を相性で呼ぶのはマナー違反でしてよ。」
あぁ。これだから平民はなっていないわ。と言うアリスワーズ。
「アリスとは貴女の事よ。私がなんと呼ぼうと私の勝手でしょ。」
「な!本当に失礼な子ね。」
アリストワーズは躾のなっていない平民の口のききかたに憤りを隠せない。それを他所にミズキは続ける。
「ねぇアリス?貴女は自分より下の者が貢ぎ物を持ってきたとしてそれに何か思うのかしら。」
「え?」
「思わないでしょ。それと同じ事。王子達だって勝手によってくるのよ。そんなの私には知ったことではないわ。」
「ミズキはわたくし達が自分より下の存在だとでもいいたいのかしら?」
平民が王子に公爵令嬢に対してそんな事を言うなんて処刑されてもおかしくはない。だがこれはあくまで平民が言った場合である。
「ねぇアリス?私貴女と喋るの気分が悪いわ。」
ミズキの美しい顔が歪められる。すると威圧感が増し会場は静かに氷つく。傍観していた子息令嬢は急に起こった出来事に怯えその場から動けなくなる。
「人間なんて虫以下だわ。たかが人間の小さな国の王族貴族に何故私がかしずかなければならないの?私は水の精霊の王族よこんな国なんて一瞬で滅ぼす事が出来るわ。上下関係はあくまでお前達が下なのよ。」
私はお呼ばれしたから来てあげたのだけどこんなところになんか来ない方がよかったわ。
「上の者‘’私‘’ に下の者‘’人間‘’が媚をうるなんて当然のこと。貢ぎ物を捨てようが私の自由だし上の者には下の者が近寄ってきて機嫌をとるものではないの?」
貴女は知っているでしょう?
「私がしていることは貴女と同じことよ。貴女の周りに下の身分の取り巻きが集まり貢ぎ物をもってきて媚をうるのと同じこと。それを誰も文句を言ったりしない。だって当然のことだから。」
「これでも貴女は私が悪いというの?私と会ったことないなんて平気で嘘をついて?自分にいいように言うことが出来たのは下の者が貴女に媚をうって口裏を合わせているだけでしょ?」
貴女にはそれが許される立場にある。だってそれは貴女が上だから。貴女の機嫌を損ねれば出世が見込めないから媚をうる。じゃあ私は?私の気分次第で死んでしまう人間は私に媚をうらなければならないのではないの?。 私の機嫌を損ねると出世が出来ないなんてものじゃないわ。
「ねぇアリス?私何が悪いのが理解出来ないわ。」
だからしっかりと私の悪いところを説明してね?貴女のせいで国が滅んでしまうかもしれないわ。
駄文を最後まで読んでくださってありがとうございます。拙い、分かりにくい所もあり申し訳ないです。
軽く設定です。
王子→第2王子で優秀な王太子がいるため絶対王になることはない。王子自身はぼんくらで世間知らず。ポーカーフェイスが出来ず感情顔に出す。周囲のお小言で息が詰まっていたときに出会った自由なミズキに引かれていった。
騎士団長の息子→作中では空気。顔が怖いため令嬢が話しかけられる事もなかったときに普通に声をかけたミズキに引かれた。
魔法団長の息子達→作中では空気。双子。見分けられるミズキに引かれた。なおミズキは顔や姿ではなく魔力の色で見分けている模様。
アリストワーズ→公爵令嬢。ゴージャス系美人。卒業パーティーで婚約破棄されることを事前に知っており証拠を用意しておいていた。頭も良く運動も出来る文武両道。彼女の唯一の失敗はミズキが手を出してはいけない存在だったこと。なおミズキのことは虐めてはいない。
ミズキ→水の精霊の王族。国々のお偉いさん方に呼ばれて各国を巡っている途中だった。この国も事前にミズキがくる事は知っていたが若い子達には教えていなかった。得意なのは勿論水系の魔法だけど王族なので全属性つかえる。水分は何でも操れる。
結末はご想像におまかせします。
ありがとうございました。