#8:亀裂
2年3組 29人 死亡 1人
NO/1 阿木将太 男 NO/2 伊上美加 女
NO/3 石見紀子 女
NO/5 卯木多凌 男 NO/6 表真夕 女
NO/7 薫由梨絵 女 NO/8 陰山幸 女
NO/9 川丘琥珀 男 NO/10 川角緒美 女
NO/11 神谷りい 女 NO/12 小林陸 男
NO/13 佐野之治 男 NO/14 柴田啓二 男
NO/15 曽根浩太 男 NO/16 田中伊代 女
NO/17 田部大吾 男 NO/18 宝麗佳 女
NO/19 千田泰葉 女 NO/20 樋乙矢 男
NO/21 寧都留香 女 NO/22 春哉将 男
NO/23 長谷川美穂 女 NO/24 藤原飛鳥 男
NO/25 松井悟 男 NO/26 松原成美 女
NO/27 三浦慶 男 NO/28 森安哲也 男
NO/29 安田沙織 女 NO/30 和久利洋介 男
「こんなの、何時まで続くのかな?」
麗佳が震えるままつぶやいた。
川角緒美は、隣にいる麗佳を見つめる。
「嫌だよ、家に帰りたいよ!死にたくないよ!シャドーって誰なの?何がしたいの?家に帰してよぅ!」
「麗佳!落ち着いて!」
そう言う私も、全く落ち着いていないし、こんな言葉で落ち着けるほど事態は軽いものでないことなどわかっていた。
「でも・・・陸、どうしたんだろう・・・あんな調子になって・・・普通じゃねェよ」
将太がおびえたように隣の之治に話し掛ける。
「裕樹の死が、よっぽどショックだったんじゃねェか?でも・・・あそこまで行くのは、異常だよ」
「崇拝の度がおかしすぎるよな」
「・・・」
その言葉を、凌が黙って聞いている。
「なぁ、凌、お前、何かしらねぇ?」
「俺は・・・何も・・・」
凌は視線を反らしてうつむいた。
「そういえば、哲也、どうしてんだろう・・・大丈夫かな・・・」
「死んだり、してないよね?」
成美と美加が心配そうにつぶやく。
私たちのクラスでは、元々“裕樹派”と“哲也派”、“無関心”の3つのグループに分かれていた。
二人とも、哲也を過剰に評価しすぎる哲也の追っかけ派で、みんなの怒りをかいやすい。
今も、その台詞はみんなの反感をかってしまった。
「哲也?あんな奴知るかよ!」
琥珀が吐き出すように叫ぶ。琥珀は元々無関心派だったけれど、今になって、裕樹派に回っている。
「うちのクラスのまとめ役、死に追いやったんだぞ?!」
「あいつがあんなこといわなけりゃ、裕樹は生きてたんだからな」
大吾を一緒になっていじめていた輩まで、今になって裕樹派に回っている。
「そこまで言うことないだろう?」
乙矢がやんわりと、出来るだけ刺激しないように言った。
「んあ?てめぇも同罪だろ。哲也のパシリの癖に!」
慶が怒鳴り、思わず立ち上がる。
「ちょっと、止めようよ・・・今は、そんなこといってる場合じゃないでしょう?!」
留香が慶を制すように睨む。
慶が留香を睨み返して渋りながらも座った。
「泰葉は・・・大丈夫かな?」
真夕が心配げにつぶやく。
私たちは陸についていった泰葉を思った。
「何で、あの場に残るの?普通こっちくるでしょう?」
「泰葉は、責任感強いから、りいちゃん、見捨てた気分になるんじゃないの?」
「確かにな・・・」
みんな、そうめいめいにつぶやくもの、誰もあの場所に向かおうとしない。
その時、
「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
りいの、絶叫が聞こえた。
「何?!」
みんな、震え上がった。
私の横では、麗佳がパニックを通り越して、真顔になっている。
琥珀が彼女の伊代と思わず抱き合い、美加が頭を抱えているのが見える。
私は驚きで体が動かなかった。
「りい・・・死んじゃったの?」
まるで、幼い子供のように麗佳が真顔のまま尋ねてくる。
「死んじゃったの?全部血抜かれて?死んだの?私も死ぬの?」
紀子が絶叫した。
その次の瞬間、ドアを締め切った教室で、不意に天井から煙が噴出した。
みんな、その煙を吸ったとたん、意識を手放した。
これが、最後の良き夢だとも知らず。




