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生贄ゲーム  作者: 奏良
7/47

#6:運命と確信と

2年3組 29人  死亡 1人


NO/1 阿木将太あぎしょうた 男  NO/2 伊上美加いがみみか 女

NO/3 石見紀子いわみのりこ 女  

NO/5 卯木多凌うぎたりょう 男  NO/6 表真夕おもてまゆ 女

NO/7 薫由梨絵かおるゆりえ 女  NO/8 陰山幸かげやまさち 女

NO/9 川丘琥珀かわおかこはく 男 NO/10 川角緒美かわすみおみ 女

NO/11 神谷かみやりい 女  NO/12 小林陸こばやしりく 男

NO/13 佐野之治さのゆきじ 男  NO/14 柴田啓二しばたけいじ 男

NO/15 曽根浩太そねこうた 男  NO/16 田中伊代たなかいよ 女 

NO/17 田部大吾たなべだいご 男  NO/18 宝麗佳たかられいか 女

NO/19 千田泰葉ちだやすは 女  NO/20 樋乙矢といおとや 男

NO/21 寧都留香ねいとるか 女  NO/22 春哉将はるやしょう 男

NO/23 長谷川美穂はせがわみほ 女  NO/24 藤原飛鳥ふじはらあすか 男

NO/25 松井悟まついさとる 男  NO/26 松原成美まつばらなるみ 女

NO/27 三浦慶みうらけい 男  NO/28 森安哲也もりやすてつや 男

NO/29 安田沙織やすださおり 女  NO/30 和久利洋介わくりようすけ 男

「お前、哲也が憎くないか?」

真っ先に聞こえたのは、そんな声だった。

安田沙織は、二人の会話が気になって、トイレに行くと泰葉に偽り、聞き耳を立てていたのだ。

「・・・」

「なぁ?」

「憎いよ。あたりまえだろう?裕樹ころされて・・・うらまないはずがない・・・」

凌君は吐き出すように言った。

陸君が、にやりと笑って凌の耳元でささやく。

「じゃあさ、復讐、しねぇか?」

「復讐?」

「哲也、絶対見つけ出して、俺らの手で息の根を止める」

そんな・・・!

私は思わず叫びそうになった。

復讐?そんな事したって、裕樹君は戻ってこないじゃない!

「そんな・・・」

凌君も、驚いたように目を見開いている。

「忘れたのか?裕樹、殺されたんだ。あいつにだ」

そして、凌君は少し困惑したような表情をして、陸君を見た。

「でも・・・」

何か言い出そうと、小さく口を開くが、

「っ・・・そうかよ、いいよ、俺一人でやる」

陸君は舌打ちをして、その声をさえぎる。

「え?」

「俺が、絶対あいつ見つけ出して、殺してやる」

それだけ言うと、陸君は、こっちに向かって歩いてきた。

私は慌てて身を隠す。

「お、おい、陸!」

凌君が慌てて引きとめようとするが、全く聞く耳を持たないで私の目の前を通り過ぎていく陸君。

私は息を潜めたまま、その様子をうかがった。

「何で・・・そういう考えしか浮かばないんだよ・・・」

凌君がつぶやいているのが聞こえた。

そして、彼もみんなのもとへもどっていく。

私は困惑して、その場にとどまった。

私自身、美加や成美や乙矢君のように、哲也君と仲が良いわけでも、美穂や陸君や凌君のように、裕樹君と仲が良いわけでもない。

だから、哲也君を殺したいほどうらまないし、別に、裕樹君が死んでよかったと思っているわけではない。

正直、あの場で裕樹君が生贄になってくれて助かった、とすら思っている。

人間、一番大事なのは結局自分なのかもしれない。

「沙織ぃ?」

留香の声がして、私は慌ててみんなの元に戻った。

「どうにかして、誰も死なずにこの場を回避できないかな?」

泰葉がそう口にしているが、私は完全に上の空だった。

もう、誰にも死んでほしくないのに、殺したいほど、誰かを恨んでいる人がいる。

それに、音楽室の扉を開けないと、みんなが死んでしまう。

少しの犠牲で、みんなが助かる――――――。

私は、誰かが言っていたその言葉を思い出していた。

やっぱり私も人間だった。

結局、心の中で、私以外の誰かが犠牲になって、私は生き延びることを確信している。

自分は死なない。

なぜか、そのゆるぎない自身が、心の中を占領していた。

これから、自分がどんな人生をたどるかなど、知る由もなく。

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