#6:運命と確信と
2年3組 29人 死亡 1人
NO/1 阿木将太 男 NO/2 伊上美加 女
NO/3 石見紀子 女
NO/5 卯木多凌 男 NO/6 表真夕 女
NO/7 薫由梨絵 女 NO/8 陰山幸 女
NO/9 川丘琥珀 男 NO/10 川角緒美 女
NO/11 神谷りい 女 NO/12 小林陸 男
NO/13 佐野之治 男 NO/14 柴田啓二 男
NO/15 曽根浩太 男 NO/16 田中伊代 女
NO/17 田部大吾 男 NO/18 宝麗佳 女
NO/19 千田泰葉 女 NO/20 樋乙矢 男
NO/21 寧都留香 女 NO/22 春哉将 男
NO/23 長谷川美穂 女 NO/24 藤原飛鳥 男
NO/25 松井悟 男 NO/26 松原成美 女
NO/27 三浦慶 男 NO/28 森安哲也 男
NO/29 安田沙織 女 NO/30 和久利洋介 男
「お前、哲也が憎くないか?」
真っ先に聞こえたのは、そんな声だった。
安田沙織は、二人の会話が気になって、トイレに行くと泰葉に偽り、聞き耳を立てていたのだ。
「・・・」
「なぁ?」
「憎いよ。あたりまえだろう?裕樹ころされて・・・うらまないはずがない・・・」
凌君は吐き出すように言った。
陸君が、にやりと笑って凌の耳元でささやく。
「じゃあさ、復讐、しねぇか?」
「復讐?」
「哲也、絶対見つけ出して、俺らの手で息の根を止める」
そんな・・・!
私は思わず叫びそうになった。
復讐?そんな事したって、裕樹君は戻ってこないじゃない!
「そんな・・・」
凌君も、驚いたように目を見開いている。
「忘れたのか?裕樹、殺されたんだ。あいつにだ」
そして、凌君は少し困惑したような表情をして、陸君を見た。
「でも・・・」
何か言い出そうと、小さく口を開くが、
「っ・・・そうかよ、いいよ、俺一人でやる」
陸君は舌打ちをして、その声をさえぎる。
「え?」
「俺が、絶対あいつ見つけ出して、殺してやる」
それだけ言うと、陸君は、こっちに向かって歩いてきた。
私は慌てて身を隠す。
「お、おい、陸!」
凌君が慌てて引きとめようとするが、全く聞く耳を持たないで私の目の前を通り過ぎていく陸君。
私は息を潜めたまま、その様子をうかがった。
「何で・・・そういう考えしか浮かばないんだよ・・・」
凌君がつぶやいているのが聞こえた。
そして、彼もみんなのもとへもどっていく。
私は困惑して、その場にとどまった。
私自身、美加や成美や乙矢君のように、哲也君と仲が良いわけでも、美穂や陸君や凌君のように、裕樹君と仲が良いわけでもない。
だから、哲也君を殺したいほどうらまないし、別に、裕樹君が死んでよかったと思っているわけではない。
正直、あの場で裕樹君が生贄になってくれて助かった、とすら思っている。
人間、一番大事なのは結局自分なのかもしれない。
「沙織ぃ?」
留香の声がして、私は慌ててみんなの元に戻った。
「どうにかして、誰も死なずにこの場を回避できないかな?」
泰葉がそう口にしているが、私は完全に上の空だった。
もう、誰にも死んでほしくないのに、殺したいほど、誰かを恨んでいる人がいる。
それに、音楽室の扉を開けないと、みんなが死んでしまう。
少しの犠牲で、みんなが助かる――――――。
私は、誰かが言っていたその言葉を思い出していた。
やっぱり私も人間だった。
結局、心の中で、私以外の誰かが犠牲になって、私は生き延びることを確信している。
自分は死なない。
なぜか、そのゆるぎない自身が、心の中を占領していた。
これから、自分がどんな人生をたどるかなど、知る由もなく。




