#4:犠牲者と次のゲーム
2年3組 30人
NO/1 阿木将太 男 NO/2 伊上美加 女
NO/3 石見紀子 女 NO/4 植田裕樹 男
NO/5 卯木多凌 男 NO/6 表真夕 女
NO/7 薫由梨絵 女 NO/8 陰山幸 女
NO/9 川丘琥珀 男 NO/10 川角緒美 女
NO/11 神谷りい 女 NO/12 小林陸 男
NO/13 佐野之治 男 NO/14 柴田啓二 男
NO/15 曽根浩太 男 NO/16 田中伊代 女
NO/17 田部大吾 男 NO/18 宝麗佳 女
NO/19 千田泰葉 女 NO/20 樋乙矢 男
NO/21 寧都留香 女 NO/22 春哉将 男
NO/23 長谷川美穂 女 NO/24 藤原飛鳥 男
NO/25 松井悟 男 NO/26 松原成美 女
NO/27 三浦慶 男 NO/28 森安哲也 男
NO/29 安田沙織 女 NO/30 和久利洋介 男
「・・・」
哲也君が出て行ってからも、みんな硬直したままだった。
「クラス委員、指示を出せよ」
裕樹君が私に向かって言い放つ。
「え・・・でも・・・」
「早くしないと、みんな死んじゃうんだ!そんなの、ダメだ」
つらい決断のはずなのに、裕樹君の声は微塵も不安や恐怖が感じられず、いつもどおり堂々としていた。
「わかった」
そう言ったのは、陸君だった。
「俺は、行くよ」
それにつられるかのように、みんなぞろぞろと歩き始める。
裕樹君は、満足げにしっかりとうなずいていた。
「じゃあ、行くね」
「あぁ、出来るだけたくさんの人が生き残れること、祈ってるよ」
「いつか、会おうね」
私はそう言い残して、ドアを閉めた。
そのときだった。
ドガン
という、大きな爆発音の後、教室のドアは吹っ飛んだ。
幸い、誰も怪我をしてはいなかったものの、こんな状況で安心できるはずもない。
私たちは呆然と吹き飛んだ教室を眺めていた。
見ると、向こう側の壁は完全に残っているのに、床は突き抜けている。
天井も無事だ。
けれど、そこに裕樹君の姿はなかった。
「ひっ・・・」
誰かが小さく悲鳴をあげた。
向こう側の壁に、べったりと、おそらく血だと思われる真っ赤なしみが出来ていた。
「いやだ・・・死にたくない・・・!」
みんな、本当は信じていなかったんだ。
誰だよ、こんな太刀の悪いいたずらしやがって。
そんな風に思っていた。
もちろん、私も。
でも、実際に裕樹君が死んでしまった。
これは、本当に現実なのだろうか?
それすらわからなくなるほど、事態は混乱していた。
「私たち・・・どうしたらいいのかな?」
誰かが、ポツリとつぶやいた。
「哲也君もいないし・・・単独行動は危ないよ」
「それにしたって、ここからどうやって出るって言うんだ」
どうしようもないままに、時間だけが過ぎていく。
そんな時、私は見つけた。
“SYADO=”と名前の入った封筒を。
「これ・・・」
私はそれにかけより、中身を引っ張り出した。
「泰葉?どうしたの?」
「これ、封筒が」
「・・・読めよ」
促されるままに私は文章を読み始める。
「友を裏切った裏切り者たち。
心の準備は出来ていますか?
次のゲームは食料を配布することにもかかわってきますので、よくきいてください。
この先の音楽室に、全員分の食事が準備してあります。
しかし、音楽室のドアを開けるのには誰かの血液2・5キログラムが必要。
もちろん、その血液は一人分のものでなければなりません。
誰か一人が多量出血で死ぬか、全員が餓死するか。
それは、あなた方の自由です。
では、健闘を祈ります・・・―――――」
裏切り者、という言葉に、読んでいても胸がずきずきと痛んだ。
私たちは、もう、人殺し。
「また、誰かが死ななきゃいけないの?」
悲しくて、涙を必死でこらえた。
「哲也は、どこかな・・・」
乙矢君がぼそりとつぶやく。
「いいじゃんか、あいつのせいで、裕樹は死んだんだ」
凌君が苦虫を噛み潰したような顔をする。
私たちは、この殺人ゲームが何時まで続くのかともやもやとした疑問を感じた。




