#44:理不尽
2年3組 1人 死亡 29人
NO/15 曽根浩太 男
「は?」
それ以外、言葉が出てこなかった。
大吾が嫌いな奴を消す・・・つまり、あいつ専属の殺し屋をしろといっているのだ。
信じられなかった。
俺は目を見開き、大吾を凝視する。
「だーかーらー、俺が嫌いな奴、殺ってよ。別に、そういうことするためによくわかんない施設にいたんだろう?いいじゃん、ちょっとくらい」
にやにやと笑い、大吾が言った。
反射的に、俺は、目の前の大吾を殴っていた。
ばしっという、鋭い音とともに、あいつは地面に倒れこむ。
「ふざっけんな!お前に、俺らの何がわかるんだよ!」
俺は、そう言って大吾を睨みつける。
しばらく唖然としていた大吾だが、直にもとのニヤニヤ笑いに戻り、腫れた頬に手を添えたまま言った。
「まぁ、そうも言ってられなくなるよ?」
正直、あきれていた。
俺は踵を返すと、歩き始める。
信じられなかった―――――――目の前の男が。
俺らが、本当に好きで殺しをやっているとでも思っていたのだろうか。
そんなワケ無いじゃないか。
ちゃんとした両親の間に生まれ、俺たちのような深刻な悩みも抱えず、不自由なく暮らしてきた奴が、気に入らない奴を殺せと?
バカじゃないのか?
桜のように、あの施設しか住む場所がなかった奴だっているんだよ!
本当は、殺しなんてしたくない、でも、でも生きていくためには、それをするしかない、そんな人間の気持ちが、あんな奴にわかるか?!
俺だって・・・俺だって、本当なら、普通に暮らしたい。
まだ、桜たちの立場の方がましだ。
誰にも心を開くことができない。
仲間だと思ってくれている奴だって、俺の本当の顔を知らない。
あんなへらへら笑って、自分の正体を隠して、偽善者ぶって、自分が一番偉いと思い込んでる奴に、桜や俺を人殺しなどと批難されたくはない。
だから―――――――許せなかった。
あいつだけは、どうしても、許せなかった。
だから、仁と桜が復讐を決意していることを知り、俺は同時に別の計画を立てた。
大吾を怪しまれないように殺す。
それから・・・水橋の始末。
水橋を殺したのは、俺だ。絵馬嘉人、という、俺の当時の偽名を口に出すことで、より、苦しんで死んでいっただろう。
これは、飯神の命令だ。
俺や、仁や桜の人生を狂わせた、張本人の命令。
こんなことなら、施設に行き着く前に死んでしまえばよかった。
何度そう思ったことだろう。
人殺し―――――――ばれていなくても、周りからそう見られているような気がして、施設にいるみんなが、精神的に可笑しくなっていく。
施設の大人は、それに気付かない。
理不尽さは、徐々に広がっていった。
その理不尽さが、俺に決意を決めさせた。
俺の本当の復讐の相手――――――――――施設に。




