#40:全ての答え
2年3組 1人 死亡 29人
NO/15 曽根浩太 男
「は?」
「だから、あいつらをこの施設に連れ戻して、我々と同じ監修役兼殺し屋として働いてもらう」
俺は思わず呆然とした。
何でだよ・・・何でだよ・・・何でだよ・・・!
「何でだよ・・・!」
「何でって言われてもなぁ」
飯神が、苦笑いをして頭を掻く。
俺の反応が意外だったのか、あれだけ経験をつんでいた飯神でさえ、目が驚きを隠しきれていない。
「絶対ダメだ!」
「施設の決定だぞ」
「それでも、ダメだ!」
声を引きつらせて、俺は叫ぶ。
こんな思いを、彼らにだけはさせちゃいけない。
絶対!
「もう、決定したことなんだ。こんな世の中の浄化に貢献できるんだ。あいつらだって、望んでることさ」
こいつは、本気でそんなことを思っているのか。
俺は、目を見開いた。
「それに、もう決定したことなんだ。変えられない」
その場で、飯神を殺す事だってできた。
だけど、そんなことをすれば、この施設の存在が公になりかねない。
それだけは、避けねばならなかった。
だから俺は、飯神が笑って出て行くのを、ただ見つめるだけだった。
俺が、望んで人を殺しているはずが無いじゃないか。
他の職員だってそうだ。
この世に、自ら望んで人を殺す奴なんて、いるはずが無いんだ。
人間には、情がある。
決して、解けない「情」という鎖があるのだ。
けれど、飯神はそれすらも解いてしまった。
その鎖を解いてしまった奴は、もう、人間じゃない。正真正銘の、バケモノなんだ。
奴は、それに気付いていない。
誰もがそう感じていると思っている。
自分の行動を正当化しようとしている。
そんなのは・・・そんなのは、俺たちの間で起きている、いじめと全く同じなんだ。
俺は、施設の職員だ。
物心ついたときから、この施設で殺し屋として育てられてきた。
様々な「悪」を犯した奴を、裁く。
それが俺の仕事。
そして、俺はあの施設の育成機関に入り、今の実況を本部に伝えていた。
それと兼用して、もちろん殺しもしていた。
昔は無我夢中で殺しにかかっていたが、今は訳が違う。
人を殺すのは、苦しい。
施設の考えにも、賛成できなくなっていた。
誰にも、人を裁く権利なんて無いのに。
この世は、複雑だ。
悪が正当化され、誰もそれをさばくことはできない、
なのに、人間は、そのありもしない権利を振り回す。
それでは、誰が悪人を葬ればいいのか?
飯神は、それは自分だと思ったのだ。人を裁く権利は、自分にあると思ったのだ。
鎖をとく鍵は、それだった。
俺には・・・できない。
そう、仁と桜にも、そんな思いをさせるわけには行かない。
だから、仁と桜を殺した。
彼らも死ぬように仕向けた。
これが、全ての答えなのだ。




