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生贄ゲーム  作者: 奏良
4/47

#3:偽善者

2年3組 30人


NO/1 阿木将太あぎしょうた 男  NO/2 伊上美加いがみみか 女

NO/3 石見紀子いわみのりこ 女  NO/4 植田裕樹うえだゆうき 男

NO/5 卯木多凌うぎたりょう 男  NO/6 表真夕おもてまゆ 女

NO/7 薫由梨絵かおるゆりえ 女  NO/8 陰山幸かげやまさち 女

NO/9 川丘琥珀かわおかこはく 男 NO/10 川角緒美かわすみおみ 女

NO/11 神谷かみやりい 女  NO/12 小林陸こばやしりく 男

NO/13 佐野之治さのゆきじ 男  NO/14 柴田啓二しばたけいじ 男

NO/15 曽根浩太そねこうた 男  NO/16 田中伊代たなかいよ 女 

NO/17 田部大吾たなべだいご 男  NO/18 宝麗佳たかられいか 女

NO/19 千田泰葉ちだやすは 女  NO/20 樋乙矢といおとや 男

NO/21 寧都留香ねいとるか 女  NO/22 春哉将はるやしょう 男

NO/23 長谷川美穂はせがわみほ 女  NO/24 藤原飛鳥ふじはらあすか 男

NO/25 松井悟まついさとる 男  NO/26 松原成美まつばらなるみ 女

NO/27 三浦慶みうらけい 男  NO/28 森安哲也もりやすてつや 男

NO/29 安田沙織やすださおり 女  NO/30 和久利洋介わくりようすけ 男

ふざけるな、何で、俺が死ななきゃいけないんだ。


洋介が読み上げた文章を聞いて、真っ先に森安哲也は顔をしかめた。

「誰か一人、生贄になれば、それ以外の全員が助かる・・・」

「でも、この教室を出たところで、それ以外の全員が生き残れるとは限らないんだよな・・・」

「それでも、少しの犠牲で大勢の命が助かるんだろう?」

偽善者たちが、勝手に話を進めていく。

みーんな、本当は大吾の事嫌ってるくせに、俺がなぜかいじめのボスに成り上がっている。

始めたのは、裕樹じゃないか。

しかも、知らない間に離脱しやがって。

偽善者、偽善者、偽善者・・・―――――――。

「誰が、生贄になるか―――――――」

クラス委員の千田の小さな呟きで、俺は我に帰った。

全員の視線が、大吾の方に向く。

俺も、大吾を見た。

おびえきった表情で、俺たちを見返している。

「ぼ・・・僕・・・死にたくない」

「うるせぇな、んなもんは、みんな一緒なんだよ!」

大吾のつぶやきに、乙矢が叫んだ。

俺は、その様子をニヤリと笑ってみる。

そうだ、これで、あの鬱陶しい大吾を消せるんだ。

いつもいい子ちゃんで、地味なくせにグループに入ろうとやっきになる、うざったいチビを、消せる。

「そうよ・・・」

「あいつが生贄になれば、俺たちは助かるんだ」

「大吾を生贄に」

「そうだ・・・」

だが、

「おい、止めろよ」

裕樹が言った。

また、あいつが話をややこしくする。

せっかく、満場一致で決まっていたじゃないか。

偽善者め。

本当のボスは、裕樹、お前だろう?

「大吾、うざいからさ、いじめてやろうぜ?」

そう言ったのもお前じゃないか。

俺の中に、怒りという感情がふつふつと湧きあがってきた。

「こんなときに、大吾をいじめたって、何にもならないだろう。こんなときこそ、いじめは止めて、真剣に考えようじゃないか」

「ふざっけんな!」

俺は、知らず知らずのうちに叫んでいた。

「この、偽善者が!大吾いじめ始めたのは、てめぇじゃねぇか!いまさらいい子ぶってんじゃねェよ!」 

叫んでも、怒りは収まらない。

「んなこというんなら、てめぇが生贄になれ!」

「お、おい、哲也・・・」

俺は、やけくそだったんだ。

あいつに腹が立っただけだった。殺したいなんて、思ってもなかった。

なのに――――――

「あぁ、わかった。そうだな、哲也の言うとおりだ。俺が、生贄になるよ」

裕樹は、そう言った。

「は?」

「だから、俺が生贄になる。みんな、早くそのドアを開けて外に出ろ」

ふざけんな・・・。

こんなときまで格好つけやがって。

「でも・・・」

さっきまで声を張り上げていたはずの乙矢が、しゅんとしている。

みんな、その場に立ち尽くしたままだ。

「早く出るんだ。出ないと、みんな死んでしまう」

「でも、裕樹はどうすんだよ?」

裕樹の下っ端の陸が、心配そうに裕樹を見上げる。

あいつも、凌も、裕樹がいなければ何にも出来ないんだろう。

「俺は死ぬ」

裕樹がきっぱりと言い切った。

「だから、早くここから出るんだ!」

口調が厳しくなる。

俺は、そんな裕樹の態度に余計イライラした。

「・・・あぁ、そうさせていただくよ!」

そう言って立ち上がったのは、俺だった。

乱暴にドアを開け、外に出る。

悔しい。

結局、裕樹がいい奴で、俺は悪い奴か。

ぼろを出させてやろうと思って、生贄になれって言ったのに、本当に生贄になりやがった。

畜生。

俺は、結局余計な罪までかぶることになっちまった。

畜生。

俺は、他の奴が出てくることを待たず、勝手に廊下を走って突き進んだ。

止まりたくない。

止まったら、悔しくなるから。

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