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生贄ゲーム  作者: 奏良
32/47

#31:全ては“彼”のため

2年3組 4人  死亡 26人


  

              NO/4 影松仁(かげまつじん)植田裕樹うえだゆうき) 男『SYADO=』

              NO/6 高松桜たかまつさくら (表真夕おもてまゆ) 女『SYADO=』



              NO/12 小林陸こばやしりく 男

 

  


NO/19 千田泰葉ちだやすは 女


                

 

 

 

「嘘だ!」

陸は、大声で叫んだ。

それは、俺の心からの願いでもあった。

お願いだから、冗談だといってくれよ、表。

「嘘じゃないんだよねぇ」

闇の中に落ちていくような、不快な感覚がする。

「だけど・・・なんで・・・裕樹が・・・」

心臓の鼓動が早くなる。思うように、言葉が出てこなかった。

「嘉人のタメ・・・かな・・・」

表の顔に、少し影が入った気がした。


  ――――――


「僕と桜、それに嘉人は、物心ついたときから、ある施設にいたんだ」

泰葉はそうつぶやく影松仁の声を聞いていた。

頭が痛い。響くように、彼の声が反響して聞こえる。

「その施設は、殺し屋の育成施設のようなものさ。

ある程度の年期を超えると、出ることができるけれど、そこにいる子供たちは、みんな、いろんな事情を抱えていた。

だけど、僕ら3人とも、他の子よりも比べ物にならないほどの事情を抱えていたんだ。

ここではいえないような、大きな事情だ。

だけど、そんな生活も、楽しかったよ」

顔は見えない。だけど、彼は笑っているんだろう。口調から、直にわかった。

「時はたって、桜が施設を出た。2年生ぐらいのときだったかな。

それに続いて、嘉人も施設を出た。4年のときに。桜と同じ学校だって、喜んでたよ。

桜が表真夕っていう名前で学校に通っていることは、施設を通して聞かされていたからね。

僕らがいたのは、すごく危険な育成施設だった。だから、そこを出た子は必ず名前を変えなければいけない。

だけど、嘉人はそれをこばんだ。

こばんで、本名のままで学校に入った。

初めの方は、楽しくやってるみたいで、手紙にも、いろんなことが書かれていたよ。

理科の授業で薬品が爆発しただの、休み時間に転んだだの、あの施設出身者だとは思えないほど、明るい奴だったからね、嘉人は」

影松仁の、奥歯をかみ締める音が、頭に響いた。


  ――――――


「だけど・・・嘉人はいじめられるようになった・・・。

あんたたちのせいで!」

そう叫ぶ、表の声が、憎しみに変わる。

「私たちは、施設出身者であることを隠さなければいけない。

だから、下手に嘉人をかばうことはできなかった・・・。

あんなに明るかった嘉人が、日に日に、暗くなっていった・・・」

陸は、嘉人の顔を思い出した。

けれど、どれも、暗く、冷たい顔ばかりで、無意識に気分が沈んでいく。

「いじめていた理由・・・それを彼らに聞いて、あきれたわ。

面白くないから、俺らに逆らったから、何様のつもりだったんでしょうね、彼ら。

嘉人は、施設の中でも、あまり成績優秀な方ではなかった。

だから、彼らに立ち向かうことも、逆襲することもできなかった」

俺は、そういう表の顔を、見つめていた。

落ち着きを取り戻してきたのか、彼女の顔は無表情に近い。

けれども、目は、笑っても泣いても、憎んですらなかった。

黒かった。真っ黒で、まるで、何も感じていないような・・・そんな顔をしていた。

「私はひそかに裕樹・・・仁に助けを求めた。そして、やっと、仁が施設を抜けて、学校に来られるようになった。なったのに・・・」

表の顔が、再びゆがむ。




「仁が学校に来る前に、嘉人は・・・

死んだのよ」

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