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生贄ゲーム  作者: 奏良
3/47

#2:“SYADO=”

2年3組 30人


NO/1 阿木将太あぎしょうた 男  NO/2 伊上美加いがみみか 女

NO/3 石見紀子いわみのりこ 女  NO/4 植田裕樹うえだゆうき 男

NO/5 卯木多凌うぎたりょう 男  NO/6 表真夕おもてまゆ 女

NO/7 薫由梨絵かおるゆりえ 女  NO/8 陰山幸かげやまさち 女

NO/9 川丘琥珀かわおかこはく 男 NO/10 川角緒美かわすみおみ 女

NO/11 神谷かみやりい 女  NO/12 小林陸こばやしりく 男

NO/13 佐野之治さのゆきじ 男  NO/14 柴田啓二しばたけいじ 男

NO/15 曽根浩太そねこうた 男  NO/16 田中伊代たなかいよ 女 

NO/17 田部大吾たなべだいご 男  NO/18 宝麗佳たかられいか 女

NO/19 千田泰葉ちだやすは 女  NO/20 樋乙矢といおとや 男

NO/21 寧都留香ねいとるか 女  NO/22 春哉将はるやしょう 男

NO/23 長谷川美穂はせがわみほ 女  NO/24 藤原飛鳥ふじはらあすか 男

NO/25 松井悟まついさとる 男  NO/26 松原成美まつばらなるみ 女

NO/27 三浦慶みうらけい 男  NO/28 森安哲也もりやすてつや 男

NO/29 安田沙織やすださおり 女  NO/30 和久利洋介わくりようすけ 男

本当に申し訳なかった。

でも、これは、学校を守るために、絶対必要なことだったんだ―――――――。


2−3担任の水橋は誰もいない教室で一人溜息をついた。

「2−3の生徒を全員この薬で眠らせること。そして、もう一枚の紙に表記されている場所へ全員を運べ」

その手紙が届いたのは、おとといの朝だった。

学校の新聞受けに入っていたのだ。

最初は、教員の誰も信用なんてしなかった。

たちの悪い生徒のいたずら。誰もが、そう思っていた。

ところが・・・

次の日、日直の先生が見つけたものは、荒しに荒らされた理科室だった。

まるで、何かが爆発したんじゃないだろうかと思わせるような変貌振りに、教員の誰もが驚いた。

そして、その日も手紙が入っていた。

「明日、あの場所に2−3の生徒が現れなかったら、学校全体を爆発させる」

その短い文に、誰が震え上がらずにいられようか。

校長は、やむ終えず、という言葉を使い、2−3の生徒をあの場所に連れて行くことを決定した。

自分の担当の生徒を、学校を守るために得体の知れない奴に売る。

それが、どれだけ苦しいことだか、きっと誰にもわからないだろう。

いや、きっと、誰もわかっちゃいけないんだ。

私は一人、生徒全員の無事を祈った。


 ―――


「おい、クラス委員」

男子の声で目を開けた。

まだ、視界がぼんやりしていて、誰に声をかけられたのかわからない。

「おい、ここ何処だよクラス委員!」

は?

私は慌てて飛び上がった。

裕樹君、陸君、凌君の3人が目の前に立っている。

「お前、先生からなんか聞いてんだろう?教えろよ!ここは何処で、何があったんだよ!」

「そ・・・そんな、私は何も・・・」

そう答えながらきょろきょろとあたりを見回す。

クラスメイト全員が、床にうつぶせに倒れていた。

見るとここは、いつもどおりの教室と同じ風景。

なのに、扉には妙な装置のようなものがつけられ、他の生徒の声すらしない。

今のところ、目を覚ましているのは、私と3人だけだ。

「ンな訳あるかよ!言えよ!」

陸君に肩を揺さぶられる。

「だから・・・本当に知らないのよ・・・」

私は泣きたくなった。

先生に、強制的にクラス委員にされ、いい事なんて今まで一度もなかった。

何か問題が起きるたびに、「クラス委員はどうしたんだ!」と声を上げられ、全部私のせいにされてしまう。

挙句の果てには、これだ。

学校のようで、学校でない場所で、私は全責任を押し付けられている。

本当に、頬を涙が伝った。

「っ・・・」

その光景に、やっと信じてくれたのか、陸君は私の肩を離した。

「・・・とりあえず、みんなを起こそうぜ」

凌君の声の元、私たちはクラスメイトを起こしにかかった。

けれど、私も、3人も、おきてきた残りのクラスメイトも、まだ知らなかったんだ。

地獄は、これから始まることを。


私と3人の男子は、とりあえずわかっていることをクラスメイトに粗方説明した。

「は?」

「意味わかんない」

「さっさとここから出せよ!」

そんな声が飛び交うが、私はどうすることもできなかった。

そんなときだった。

「ねぇ、これ、何だと思う?」

紀子が恐る恐るといった様子で封筒を持った手を挙げた。

「何、それ?何処にあったわけ?」

凌君が尋ねる。

「わかんない、そこのロッカーに入ってたから・・・」

おびえたように、紀子は小声で本当の学校ならば、みんなの荷物が入っているはずのロッカーを指差す。

「ロッカー?」

それを受け取った洋介君が袋を開けて、中に入っていた文章を読み出した。

「2−3の諸君、お目覚めでしょうか?我名は、SYADO=。

これから、君たちにはゲームをしてもらいます―――――――」

洋介君は、そこまで読んで、一旦みんなを見た。

「これさ、本物だと思う?」

「いいから、続き読めよ」

おもしろがって封筒を受け取ったであろう、いつも元気なはずの洋介君の目が、完全におびえている。

裕樹君が続きを促した。

「・・・そう、これは、ゲームです。

あなたたちが、いつもやっている“遊び”と同じ。

ルールは簡単。

この部屋から脱出するだけ。

ですが、脱出するのには、あなたたちの中の誰か一人以外のみ。

そして、この教室にいる人間が一人になったところで、

この教室は爆発します。

何もしなければ、あなたたちは一生をここで遂げることになります。

生贄を出すか、ここで死ぬか。

それは、あなたたちの自由です。

ただし、この教室を出たところで、まだ、ゲームは終わりません。

誰が、最後まで生き残れるでしょうか?

では、健闘を祈ります」

ざわついていた教室が、静まり返る。

全員の視線が、ドアについている装置に向いた。

「誰か一人、生贄になれば、それ以外の全員が助かる・・・」

「でも、この教室を出たところで、それ以外の全員が生き残れるとは限らないんだよな・・・」

「それでも、少しの犠牲で大勢の命が助かるんだろう?」

でも、問題は・・・――――――――。

「誰が、生贄になるか――――――――」

全員の視線が、今度はいじめられっこの大吾君に向いた。

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