#2:“SYADO=”
2年3組 30人
NO/1 阿木将太 男 NO/2 伊上美加 女
NO/3 石見紀子 女 NO/4 植田裕樹 男
NO/5 卯木多凌 男 NO/6 表真夕 女
NO/7 薫由梨絵 女 NO/8 陰山幸 女
NO/9 川丘琥珀 男 NO/10 川角緒美 女
NO/11 神谷りい 女 NO/12 小林陸 男
NO/13 佐野之治 男 NO/14 柴田啓二 男
NO/15 曽根浩太 男 NO/16 田中伊代 女
NO/17 田部大吾 男 NO/18 宝麗佳 女
NO/19 千田泰葉 女 NO/20 樋乙矢 男
NO/21 寧都留香 女 NO/22 春哉将 男
NO/23 長谷川美穂 女 NO/24 藤原飛鳥 男
NO/25 松井悟 男 NO/26 松原成美 女
NO/27 三浦慶 男 NO/28 森安哲也 男
NO/29 安田沙織 女 NO/30 和久利洋介 男
本当に申し訳なかった。
でも、これは、学校を守るために、絶対必要なことだったんだ―――――――。
2−3担任の水橋は誰もいない教室で一人溜息をついた。
「2−3の生徒を全員この薬で眠らせること。そして、もう一枚の紙に表記されている場所へ全員を運べ」
その手紙が届いたのは、おとといの朝だった。
学校の新聞受けに入っていたのだ。
最初は、教員の誰も信用なんてしなかった。
たちの悪い生徒のいたずら。誰もが、そう思っていた。
ところが・・・
次の日、日直の先生が見つけたものは、荒しに荒らされた理科室だった。
まるで、何かが爆発したんじゃないだろうかと思わせるような変貌振りに、教員の誰もが驚いた。
そして、その日も手紙が入っていた。
「明日、あの場所に2−3の生徒が現れなかったら、学校全体を爆発させる」
その短い文に、誰が震え上がらずにいられようか。
校長は、やむ終えず、という言葉を使い、2−3の生徒をあの場所に連れて行くことを決定した。
自分の担当の生徒を、学校を守るために得体の知れない奴に売る。
それが、どれだけ苦しいことだか、きっと誰にもわからないだろう。
いや、きっと、誰もわかっちゃいけないんだ。
私は一人、生徒全員の無事を祈った。
―――
「おい、クラス委員」
男子の声で目を開けた。
まだ、視界がぼんやりしていて、誰に声をかけられたのかわからない。
「おい、ここ何処だよクラス委員!」
は?
私は慌てて飛び上がった。
裕樹君、陸君、凌君の3人が目の前に立っている。
「お前、先生からなんか聞いてんだろう?教えろよ!ここは何処で、何があったんだよ!」
「そ・・・そんな、私は何も・・・」
そう答えながらきょろきょろとあたりを見回す。
クラスメイト全員が、床にうつぶせに倒れていた。
見るとここは、いつもどおりの教室と同じ風景。
なのに、扉には妙な装置のようなものがつけられ、他の生徒の声すらしない。
今のところ、目を覚ましているのは、私と3人だけだ。
「ンな訳あるかよ!言えよ!」
陸君に肩を揺さぶられる。
「だから・・・本当に知らないのよ・・・」
私は泣きたくなった。
先生に、強制的にクラス委員にされ、いい事なんて今まで一度もなかった。
何か問題が起きるたびに、「クラス委員はどうしたんだ!」と声を上げられ、全部私のせいにされてしまう。
挙句の果てには、これだ。
学校のようで、学校でない場所で、私は全責任を押し付けられている。
本当に、頬を涙が伝った。
「っ・・・」
その光景に、やっと信じてくれたのか、陸君は私の肩を離した。
「・・・とりあえず、みんなを起こそうぜ」
凌君の声の元、私たちはクラスメイトを起こしにかかった。
けれど、私も、3人も、おきてきた残りのクラスメイトも、まだ知らなかったんだ。
地獄は、これから始まることを。
私と3人の男子は、とりあえずわかっていることをクラスメイトに粗方説明した。
「は?」
「意味わかんない」
「さっさとここから出せよ!」
そんな声が飛び交うが、私はどうすることもできなかった。
そんなときだった。
「ねぇ、これ、何だと思う?」
紀子が恐る恐るといった様子で封筒を持った手を挙げた。
「何、それ?何処にあったわけ?」
凌君が尋ねる。
「わかんない、そこのロッカーに入ってたから・・・」
おびえたように、紀子は小声で本当の学校ならば、みんなの荷物が入っているはずのロッカーを指差す。
「ロッカー?」
それを受け取った洋介君が袋を開けて、中に入っていた文章を読み出した。
「2−3の諸君、お目覚めでしょうか?我名は、SYADO=。
これから、君たちにはゲームをしてもらいます―――――――」
洋介君は、そこまで読んで、一旦みんなを見た。
「これさ、本物だと思う?」
「いいから、続き読めよ」
おもしろがって封筒を受け取ったであろう、いつも元気なはずの洋介君の目が、完全におびえている。
裕樹君が続きを促した。
「・・・そう、これは、ゲームです。
あなたたちが、いつもやっている“遊び”と同じ。
ルールは簡単。
この部屋から脱出するだけ。
ですが、脱出するのには、あなたたちの中の誰か一人以外のみ。
そして、この教室にいる人間が一人になったところで、
この教室は爆発します。
何もしなければ、あなたたちは一生をここで遂げることになります。
生贄を出すか、ここで死ぬか。
それは、あなたたちの自由です。
ただし、この教室を出たところで、まだ、ゲームは終わりません。
誰が、最後まで生き残れるでしょうか?
では、健闘を祈ります」
ざわついていた教室が、静まり返る。
全員の視線が、ドアについている装置に向いた。
「誰か一人、生贄になれば、それ以外の全員が助かる・・・」
「でも、この教室を出たところで、それ以外の全員が生き残れるとは限らないんだよな・・・」
「それでも、少しの犠牲で大勢の命が助かるんだろう?」
でも、問題は・・・――――――――。
「誰が、生贄になるか――――――――」
全員の視線が、今度はいじめられっこの大吾君に向いた。




