#21:公開処刑
2年3組 12人 死亡 18人
NO/5 卯木多凌 男 NO/6 表真夕 女
NO/7 薫由梨絵 女
NO/12 小林陸 男
NO/19 千田泰葉 女
NO/21 寧都留香 女 NO/22 春哉将 男
NO/23 長谷川美穂 女 NO/24 藤原飛鳥 男
NO/25 松井悟 男
NO/27 三浦慶 男
NO/29 安田沙織 女
その時、テレビに、由梨絵が映し出される。
沙織は息を呑んだ。
天井に、たくさんの太い針がついたベッドに由梨絵が寝転がっていた。
これから起きることは容易に想像がつく。
「くし・・・ざし・・・」
美穂が小さくつぶやいた。
「嫌・・・あんなので死にたくないよ・・・」
それは、みんな同じ。
私だって、憎むべき人なら殺せると思った。
でも・・・そんなの簡単なことじゃない。
誰だって、人殺しなんかになって嬉しいわけが無い。ましてや、死にたいはずもない。
少なくとも、この中にいる人間は、そのはずだ。
「何か、最後に言いたいことはあるか?」
機械の合成音が由梨絵に問い掛ける。
「無い。将も一緒に逝ってくれたから」
ずきんと胸が痛んだ。
やっぱり、将君も死んだんだ。
私は小林陸をばれないように睨む。
お前のせいで・・・。
憎しみを込めて、目をさらに細める。
「そうか、では・・・」
指を鳴らす音がした。
とたんに・・・映像の片隅に、手が小さく写り、命綱である太い綱を手放した。
そして、ベッドの天井は、音を立てて由梨絵の上に容赦なく降り注いだ。
みてなんて、いられるはずも無い。
ぎゅっと目を閉じて、でも、ずっとそうしているわけにも行かず、私は目を開けた。
「ひっ・・・」
小さく悲鳴が漏れた。それ以上の声は、上げられなかった。
完全に串刺しになった由梨絵は、目をかっと見開き、口からも血を吐き出し・・・死んでいた。
死んだ。
死んだ・・・なんで?
なぜ、由梨絵は死ななきゃいけなかったの?
他の人もだよ。
何で、彼ら、彼女らは死ななきゃいけなかったの?
「俺らだって・・・殺しの対象外じゃないだろ」
小林陸の言葉を思い出す。
あの日のいじめが・・・原因なの?
だって、関係ない人だっているじゃない。
泰葉も、死んだ裕樹君も、あのいじめに関係ない人じゃない。
じゃあ、どうしてみんな死んでいくの?
嘉人君が、死んでしまったから?
その時、不意にテレビが消えた。
「次」
その合成音は、私には笑いを含んでいるように聞こえた。
「長谷川美穂」
「い・・・や・・・嫌ぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
美穂は、泣き崩れた。
誰も、声なんてかけてやれなかった。
かけてやれるはずも無い。
「死にたくないよ・・・死にたくない・・・」
「後5分以内に来なければ、建物を爆破する」
まるで、氷のように冷たい合成音は、美術室中を凍りつかせた。
「凌、陸・・・今まで仲良くしてくれて、ありがとう・・・」
美穂は、合成音の言葉で正気に戻ったように・・・戻れるはずも無いのだが、とりあえず心を落ち着けさせ、立ち上がった。
どちらにしても、生きては帰られないと思ったのだろう。
「美穂・・・」
「バイバイ」
その言葉が、この場にいる全員の背中に重くのしかかった。
美穂は、ゆっくりと美術室の扉を閉める。
その後、由梨絵のときと同じように、美穂はむごく殺された。
みんな、何もいえなくて、何か言えるはずもなくて、ただ、沈黙が流れた。




