#19:憎むもの、憎まれるもの
2年3組 17人 死亡 11人
NO/3 石見紀子 女
NO/5 卯木多凌 男 NO/6 表真夕 女
NO/7 薫由梨絵 女
NO/12 小林陸 男
NO/13 佐野之治 男
NO/15 曽根浩太 男
NO/19 千田泰葉 女
NO/21 寧都留香 女 NO/22 春哉将 男
NO/23 長谷川美穂 女 NO/24 藤原飛鳥 男
NO/25 松井悟 男
NO/27 三浦慶 男 NO/28 森安哲也 男
NO/29 安田沙織 女
「どこだ・・・」
陸は、ものすごい形相で哲也を探していた。
今まではみんなと一緒に行動していたから、目立って哲也を探すことはできなかったけれど、今、俺は一人。
裕樹を殺した復讐。そして、凌に対する制裁。
全部、俺がやってやる。
模擬校舎をぐるぐると回り歩く。
それまでに、たくさんの死体を見つけた。
佐野之治。曽根浩太。首にロープで縛ったような後があった。
おそらく、宝麗佳がやったのだろう。実質、ナイフなんかで女子が男子を殺すことはできない。
でも、絞殺なら・・・可能な点はいくらでもある。
それから、石見紀子。こいつのことはあまり知らないけど、裕樹はいつも気にかけてたっけ。
地味だったから、次にいじめられないかってずっと言っていた。
でも、そんな心配は虚しく、彼女は死んでいた。
どれもこれも、哲也のせいな気がした。
ううん、気がした、じゃない、哲也のせいなんだ。
だから、俺は絶対この手で哲也を殺してみせる。
その勢いで、俺は走りつづけた。
でも、これだけ走っているのに生存者になかなか出くわさない。
今、何人が生きているのか?
それすら把握することはできなかった。
その時、俺は大吾を見つけた。
「おま・・・」
死んでいた。後から背中を刺されて。
一体誰が?
俺は冷たくなった大吾に触れて、疑問を考えつづけた。
そして、結論が出た。
「・・・哲也だ」
あいつしかいない。
あいつに利用されて、殺されたんだ・・・!
ふつふつと怒りが湧き上がってきた。
絶対、コロス。
俺は心に誓い、再び走り出した。
――――――
「畜生」
森安哲也はあれから一人で数学教材室に身を潜めていた。
教材まで緻密に再現してあって、隠れるのには最適だったから。
俺は死にたくない。
だから、これ以上走っているのは危ないと、直感で感じた。
そして、今にいたる。
俺は、死ぬわけには行かない。ここから出たら、危険だ。
それは、あれから先のゲームがどうなったのか知らない俺でも把握は可能だった。
これだけ悲鳴が聞こえてくれば、今どういう状況なのか理解は十分にできる。
数学教材室にいても、外からの悲鳴はすごくよく聞こえた。
いくつもの断末魔の叫びが、鼓膜を劈くように聞こえてくる。
俺は悪くない。
何度もそう言い聞かせて、自分を納得させて、その悲鳴を振り払った。
だけど、このゲームは何時まで続くんだ。
いや・・・ゲームじゃない。なんて呼んだらいいのかわからないけれど、もう、ゲームなんて域はとうに超えている。
俺は不意にSYADO=からの文章を思い出した。
“これは、ゲームです”
“あなたたちが、いつもやっている“遊び”と同じ”
何が遊びだ。
思い出したとたん、腹立たしくなってきた。
裕樹の件も、大吾をいじめていたのも、全部俺のせいにされて、面白いワケが無い。
絶対生きて帰って、あいつらの鼻先をへし折ってやる。
そう誓った矢先だった。
「みーつけた・・・」
俺には、その声が誰の声なのかわからなかった。
あまりにも、突然すぎた。
バン バン バン
そんな乾いた音が数回して、俺は教材の山の中に倒れこんだ。
何だ?
状況が理解できなかった。
胸や足が鈍く痛む。撃たれた・・・のか?
視界が曇っていく。
俺は薄れていく意識の中で、自分の方を見てにやりと笑っている奴を見た。
「お前は・・・?!」
そうつぶやいたところで、もう一度銃声がした。
やだよ・・・しにたくないよ・・・シニタクナイ・・・
その願いも虚しく、俺は、
死んでいった。




