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生贄ゲーム  作者: 奏良
18/47

#17:一番脆いモノ

2年3組 18人  死亡 12人


  

NO/3 石見紀子いわみのりこ 女  

NO/5 卯木多凌うぎたりょう 男  NO/6 表真夕おもてまゆ 女

NO/7 薫由梨絵かおるゆりえ 女


              NO/12 小林陸こばやしりく 男

NO/13 佐野之治さのゆきじ 男  

NO/15 曽根浩太そねこうた 男  

NO/17 田部大吾たなべだいご 男  NO/18 宝麗佳たかられいか 女

NO/19 千田泰葉ちだやすは 女

NO/21 寧都留香ねいとるか 女  NO/22 春哉将はるやしょう 男

NO/23 長谷川美穂はせがわみほ 女  NO/24 藤原飛鳥ふじはらあすか 男

NO/25 松井悟まついさとる 男  

NO/27 三浦慶みうらけい 男  NO/28 森安哲也もりやすてつや 男

NO/29 安田沙織やすださおり 女

私は、何も知らなかった。

何も知らずに、クラス委員などしていたんだ。

泰葉はその事実を必死で飲み込もうとしていた。


2−3の級友の過去。

なぜかそのいじめにかかわっていた人間がそろったクラス。

これは、偶然なの?

その思いに刈られ、目の前が暗くなった。

その時、

急に目の前に人が飛び出してきた。

「麗佳?!」

沙織が驚いて声を出す。

その声には、安堵も含まれていた。

でも・・・麗佳の目を、手を、様子を見て再び空気は凍りついた。

「な・・・麗佳?!」

「いやぁぁぁぁぁぁ!」

麗佳は叫びながらこちらに向かって突進してきた。

血走った目、血がこびりついた手、そして、ナイフ。

もはや、麗佳では無かった。

みんな寸でのところでナイフをかわし、左右に逃げる。

「みんな死んじゃうのよ!嫌だ!嫌なの!」

麗佳はそう叫んでいた。

「だから・・・私の手で・・・」

その豹変振りに一番驚いているのは、慶君だった。

「な・・・麗佳・・・どうしたんだよ!」

目を見開いて、麗佳の様子を見る。

慶君と麗佳は幼馴染。ずっと昔から、一緒だったらしい。

その幼馴染が、こんな風に豹変すれば、戸惑うのもあたりまえだろう。

「約束が・・・違うじゃないか・・・」

慶君はそう言って涙を流していた。

約束?

私は疑問に思ったけれど、麗佳のナイフをかわすのに必死で、そんなことはもう忘れていた。

「わぁぁぁぁぁぁぁ!」

血迷ったような叫び声をあげ、またこっちに向かってくる。

小さく鈴の音がした気がした。

麗佳の動きがぴたりとやんだ。

「嫌・・・嫌ぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

そして、麗佳は・・・麗佳は・・・

「止めろ!」

慶君の悲鳴に似た叫び声が聞こえる。

麗佳は、ナイフを自分の首に突き刺した。

「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

慶君は、麗佳を抱きかかえ、叫んだ。

そして、私たちを睨んだ。

誰を睨んだのかはわからない。でも、私たちの中の誰かを睨んだ。

「絶対許さない!」

そして、そのまま駆け出す。

「慶君!」

私は叫んだ。思わず体が前にのめる。

でも、凌君に引き止められる。

凌君は、小さく首を横に振った。

状況が飲み込めないまま、私は麗佳の姿を見ていた。

涙すら、あふれてこない。

ただ、呆然と様子を見ていた。


このゲームの恐ろしさを、私はまだ、これだけ人が死にながら、遠くに感じていた。

でも、豹変した麗佳を見て・・・

すごく、近くに感じた。

やっと、自分も、自分の心も、いつ崩れるかわからない、もろい存在なのだと知った。

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