#17:一番脆いモノ
2年3組 18人 死亡 12人
NO/3 石見紀子 女
NO/5 卯木多凌 男 NO/6 表真夕 女
NO/7 薫由梨絵 女
NO/12 小林陸 男
NO/13 佐野之治 男
NO/15 曽根浩太 男
NO/17 田部大吾 男 NO/18 宝麗佳 女
NO/19 千田泰葉 女
NO/21 寧都留香 女 NO/22 春哉将 男
NO/23 長谷川美穂 女 NO/24 藤原飛鳥 男
NO/25 松井悟 男
NO/27 三浦慶 男 NO/28 森安哲也 男
NO/29 安田沙織 女
私は、何も知らなかった。
何も知らずに、クラス委員などしていたんだ。
泰葉はその事実を必死で飲み込もうとしていた。
2−3の級友の過去。
なぜかそのいじめにかかわっていた人間がそろったクラス。
これは、偶然なの?
その思いに刈られ、目の前が暗くなった。
その時、
急に目の前に人が飛び出してきた。
「麗佳?!」
沙織が驚いて声を出す。
その声には、安堵も含まれていた。
でも・・・麗佳の目を、手を、様子を見て再び空気は凍りついた。
「な・・・麗佳?!」
「いやぁぁぁぁぁぁ!」
麗佳は叫びながらこちらに向かって突進してきた。
血走った目、血がこびりついた手、そして、ナイフ。
もはや、麗佳では無かった。
みんな寸でのところでナイフをかわし、左右に逃げる。
「みんな死んじゃうのよ!嫌だ!嫌なの!」
麗佳はそう叫んでいた。
「だから・・・私の手で・・・」
その豹変振りに一番驚いているのは、慶君だった。
「な・・・麗佳・・・どうしたんだよ!」
目を見開いて、麗佳の様子を見る。
慶君と麗佳は幼馴染。ずっと昔から、一緒だったらしい。
その幼馴染が、こんな風に豹変すれば、戸惑うのもあたりまえだろう。
「約束が・・・違うじゃないか・・・」
慶君はそう言って涙を流していた。
約束?
私は疑問に思ったけれど、麗佳のナイフをかわすのに必死で、そんなことはもう忘れていた。
「わぁぁぁぁぁぁぁ!」
血迷ったような叫び声をあげ、またこっちに向かってくる。
小さく鈴の音がした気がした。
麗佳の動きがぴたりとやんだ。
「嫌・・・嫌ぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
そして、麗佳は・・・麗佳は・・・
「止めろ!」
慶君の悲鳴に似た叫び声が聞こえる。
麗佳は、ナイフを自分の首に突き刺した。
「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
慶君は、麗佳を抱きかかえ、叫んだ。
そして、私たちを睨んだ。
誰を睨んだのかはわからない。でも、私たちの中の誰かを睨んだ。
「絶対許さない!」
そして、そのまま駆け出す。
「慶君!」
私は叫んだ。思わず体が前にのめる。
でも、凌君に引き止められる。
凌君は、小さく首を横に振った。
状況が飲み込めないまま、私は麗佳の姿を見ていた。
涙すら、あふれてこない。
ただ、呆然と様子を見ていた。
このゲームの恐ろしさを、私はまだ、これだけ人が死にながら、遠くに感じていた。
でも、豹変した麗佳を見て・・・
すごく、近くに感じた。
やっと、自分も、自分の心も、いつ崩れるかわからない、もろい存在なのだと知った。




