#13:死にたくない
2年3組 25人 死亡 5人
NO/1 阿木将太 男
NO/3 石見紀子 女
NO/5 卯木多凌 男 NO/6 表真夕 女
NO/7 薫由梨絵 女 NO/8 陰山幸 女
NO/9 川丘琥珀 男 NO/10 川角緒美 女
NO/12 小林陸 男
NO/13 佐野之治 男
NO/15 曽根浩太 男 NO/16 田中伊代 女
NO/17 田部大吾 男 NO/18 宝麗佳 女
NO/19 千田泰葉 女 NO/20 樋乙矢 男
NO/21 寧都留香 女 NO/22 春哉将 男
NO/23 長谷川美穂 女 NO/24 藤原飛鳥 男
NO/25 松井悟 男
NO/27 三浦慶 男 NO/28 森安哲也 男
NO/29 安田沙織 女 NO/30 和久利洋介 男
「みんな・・・何処?」
緒美はクラスメイトの波に飲まれ、調理室を出たまま身動きが取れずにいた。
その時、調理室から勢いよく人影が飛び出してきて、私は思わず2−1の教室に飛び込む。
「コロス・・・コロス・・・」
そうつぶやく大吾君の声は狂気で満ちていて、でも、どこか寂しそうで、私は何か違和感を感じた。
その時、足元のきらりと光る物体に気付く。
「これは・・・鍵?」
拾ってみると、小ささが際立つ鍵。
私はポケットにその鍵を押し込み、あたりをきょろきょろと見回す。
その時、小さな物音がして、一瞬ドアの影に人影が移った。
「誰?」
私は顔を外に出すも、誰もいない。
疑問と不安は、大きさを増していった。
でも、その感情は、次に聞こえてきた悲鳴によってかき消される。
「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
「何?!」
思わず、飛び上がった。飛び上がって、教室の奥まで飛びのく。
誰の声か識別になんて出来なくて、ただ「何」を繰り返してその場をうろうろと歩き回った。
しばらく歩き回っていると、やっと落ち着くことが出来、私はドアから少し顔を出した。
少し離れた廊下の突き当たりに、誰かが倒れている。
ここからは、女子であることしか判断できなかった。
恐怖に足がすくむ。
だけど、今の状況は知っている必要がある。
私はそこに向かって、ゆっくりと歩を進めた。
その時、柱の影を人影が横切ったけれど、私には誰だか判断なんて出来なくて、ただびくびくして自分の「死」について考えていた。
「成美・・・」
そこには、成美が倒れていた。
胸から勢いよく血を流し、白目をむいている。
驚きに、声を上げることすら出来ない。
私は腰が抜けてしまって、床にしゃがみこんでしまった。
大吾君が・・・これを・・・
私の脳裏に、殴られ、蹴られを繰り返されているひ弱な大吾君の姿が写る。
いつも、本を読みながら少し目線を上げると、見えていた地獄絵図。
地獄・・・だったんだろうな・・・
目の前の成美を見ていると、どっちの方がつらいのかなって思えてくる。
でも、それにはラインを引くことは出来なくて・・・どっちもつらかった。
その時、
「ねぇ・・・おーみーちゃん」
グサ
私の耳に、その声とその音が聞こえた。
体が前に倒れこむ。
あれ?
何が起きたのかな。
その時、鋭い痛みが背中に走る。あれ?私・・・刺されたの・・・?
「鍵・・・どこだよ」
そのつぶやきと共に、ポケットの中をまさぐられた。
抵抗したいのに、全然体は動かない。
・・・鍵って?
あれ、あの教室に落ちていた・・・鍵。
「・・・あった」
体が勢いよく床にたたきつけられる。
なのに、もう痛みすら感じない。
遠ざかっていく足音だけが聞こえた。
あぁ、私、死ぬんだ・・・。いやだ・・・死にたくない・・・。
死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない・・・―――――――。
でも、その思いはもう口に出すことすら出来ない。
もっと、やりたいことはあったのに―――――――。
バレーだって、もっと強くなって、全国大会行きたかった。将来は、大学に行って、学校の先生になりたかった。結婚だって、したかったな。
でも、もう、私に未来は、ない。
だんだん意識が遠のいていく。
あぁ、これが 死 なんだ。
そして、私は死んだ。




