#9:血と現実の調和
2年3組 28人 死亡 2人
NO/1 阿木将太 男 NO/2 伊上美加 女
NO/3 石見紀子 女
NO/5 卯木多凌 男 NO/6 表真夕 女
NO/7 薫由梨絵 女 NO/8 陰山幸 女
NO/9 川丘琥珀 男 NO/10 川角緒美 女
NO/12 小林陸 男
NO/13 佐野之治 男 NO/14 柴田啓二 男
NO/15 曽根浩太 男 NO/16 田中伊代 女
NO/17 田部大吾 男 NO/18 宝麗佳 女
NO/19 千田泰葉 女 NO/20 樋乙矢 男
NO/21 寧都留香 女 NO/22 春哉将 男
NO/23 長谷川美穂 女 NO/24 藤原飛鳥 男
NO/25 松井悟 男 NO/26 松原成美 女
NO/27 三浦慶 男 NO/28 森安哲也 男
NO/29 安田沙織 女 NO/30 和久利洋介 男
りいちゃんは、死んだ。
血が流れ出して、一時間するか、しないかのところで、すでに息はなかった。
陸君は、首からだけでは血が足りなかったらしく、太い血管が走っている個所を徹底的に切り刻んでいき、2・5リットルに達したとたん、ナイフを床に落とした。
からん、と軽い音がする。
「開いたよ」
そう言って、陸君は音楽室のドアを示した。
「さて、この死体をどうにかしないとな」
まるで、荷物を見るような目でりいちゃんの死体を見つめている。
「ボイラー室にでも、運ぼうかな」
そう言って、陸君は血まみれになるのもかまわずりいちゃんの切り刻まれた死体を運び始めた。
私は、無言でその様子を見ていた。
手伝うわけでも、その様子を批難するわけでもなく、ただ、見つめていた。
少したつと、陸君は出かけたときと同じように無表情で戻ってきた。
「何やってんの?入れよ」
陸君は、音楽室のドアを蹴り開ける。
私はまた無言でその背中を追った。
「ホントだ、食料がいっぱいあるな」
音楽室を埋め尽くすように、パンやら飲み物やらが山積みになっている。
けれど、それはまた別の現実を示していた。
「こんなに、何日間も、ここにいなきゃいけないの・・・?」
つらい現実だった。
「・・・」
泣きそうな私に、陸君はただ目を向けてくるだけで、何も言わない。
「君も、生き残ればいいんだ」
そして、ぽつりとそう言った。
気付いたときには、目の前に陸君の顔があった。
背中は冷たい壁が触っていて、唇に違和感がある。
「・・・!」
陸君は直に唇を離し、笑った。
私は驚いて硬直する。
「君も、生き残ればいいんだ」
陸君はもう一度言った。
「生き残れば、何でも出来る。生きていれば、何でも出来るんだ」
繰り返すようにそう言って、食料を運び始める。
私は唇をなめた。
りいちゃんの血なのだろう、しょっぱいような、そんな味がした。
「みんな?」
私たちが調理室に行くと、みんな眠っていた。
あの薬だろうか?
そうでなければ、こんな状態であんなふうに眠ることは出来ないだろう。
「ご飯だよ」
私たちはそう言って全員を起こしにかかる。
みんな、次々に目を覚まし、陸君の血まみれの姿にギョッとした。
それでも、パンを渡すと引っ手繰るように飛びつき、全て食べ終えてからりいちゃんが死んだことをさとる。
「・・・」
みんな、真っ赤に染まった陸君の制服を眺めていた。
「・・・しょうがないんだよ」
慶君がぽつりとつぶやいた。
「犠牲は、伴わないと、誰も生き残ることは出来ないんだ」
みんな、いっぺんに硬直する。
その言葉が、魔の言葉に感じた。




