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三話

 ここにきて、真樹の心に影が差した。天井に懐中電灯を向ける。もちろん、何もぶら下がっていない。……気のせいかしら、と真樹は首をひねる。

 フワリ。

 突如、カーテンが風もないのに大きく揺れた。

 「え!」

 突然のことに硬直しながら、揺れているカーテンを見やる。カーテンは前後に振り子の如く振れている。ドックン。ドックン。世話しなく血液が排出されていく。

 ……なんで勝手にカーテンが揺れてるの?

動けなくなる真樹をあざ笑うように、シャーという擦れる音を出しつつ、勢いよくカーテンが左右に押しやられた。誰かが引っ張ったような、スムーズな動き。窓は、閉まっている。

 「……誰か、いるの?」

 窓ガラスに映し出される、真樹の黒いシルエット。懐中電灯の光が、閑散とした教室を反射させるのだ。

 足がすくんで動けない真樹と。

 両足が地面から離れ、宙づりになっている女性の姿を。

嫌な汗が、額から垂れる。静寂がキーンという耳鳴りが、とても煩い。

 感じる、邪悪な気配。音もいつの間にか大きくなっている。両手両足が冷たくなっていく。過呼吸寸前になりながら、真樹はゆっくりと視線を後ろへやる。

黒い影が見えた。

 振り返ってはいけない、と本能が囁いていた。振り返ったら絶対に後悔する、と。しかし、出来の悪いマリオネットのように、真樹の体は勝手に振り向いてしまった。背後にいる『ソレ』を直視してしまう。

 思考が、止まった。

 首を吊り、極限まで見開かれた目をした女性と、目が合った。

 反射的に叫ぼうにも、ゼェゼェという枯れた声しか出なかった。地面に垂れた女性の排泄物の臭いが鼻をつく。背中まで伸びたばさばさの髪。ぼろぼろの制服。痙攣し、爪がはがれた両手をゆっくりと真樹に差し出す。

 『ヨコセ……』

 老婆に似た嗄れた声とともに、真樹の記憶が途切れた。


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