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お嬢様は魔法が得意  作者: 灰色 洋鳥
第三章 光の都アウローラ
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再会

 祐司は市場の中ほどにいた耕輔を見つけて両手を挙げて呼びかけた。耕輔も祐司に気がついて満願の笑顔で駆け寄っていく。祐司は両手を広げて飛びつかんかの勢いで駆け寄って抱きつこうとした耕輔のひたいを突き出した右手で押さえたので耕輔の両手が宙を切る。


「ぐえっ」

 蛙のような声を出して耕輔は仰け反(のけぞ)ってしまった。

「祐司。なにすんだよひどい!」

 真っ赤になって文句を言っている耕輔に向かって心からの笑顔を向ける。

「いやー、すまん。

 耕輔がすごい勢いでくるから思わず」


 祐司は悪びれもせず返事をする。その顔は含みのない喜びに満ちた笑顔をしているので耕輔もそれ以上言えなくなってしまった。


「本当にひどいんだからもー」

 そのひと言で人のいい耕輔はすっかり祐司の仕打ちを忘れて嬉しそうにしている。互いに別れたのはほんの二日前だった。でももっと長かったように思えていた。

「あははは、祐司は元気そうだね」

 耕輔はなんだか照れくさくなって横を向いている。


 祐司も耕輔が照れているので自分も照れくさくなって返事を返す。

「おう、耕輔も随分雰囲気が変わったな。なんというか……

 頼もしくなった感じがする、気がする……」

「なんだよ、それ。どっちなんだ。

 いや、散々だったよ。あれから……」


「まあ、詳しい話は場所を変えよう」

 祐司は、話を続けようする耕輔を手振りで押しとどめ場所の移動をうながした。

「そうだね。立ち話でする話じゃないな。

 それと、少し休める場所あるかな?

 朝からずっと歩き通して疲れたよ」


 先に立って歩き始めた祐司に遅れないように並んだ耕輔は、まちきれずに喋りたくて落ち着かない。ふと、視線が気になり振り向いた耕輔は後ろから付いてくるファーファに気がついた。ニヤリとして祐司の肩に手をかけて話しかけた。


「ねえねえ、後ろから付いてくる子知り合い?

 すごいかわいいじゃない」

「あの子⁈

 女の子ってすぐわかったのかよ」

 祐司は驚いて思わず立ち止まった。

「そんなの見ればわかるだろ。

 ボーイッシュですごくかわいい美少女じゃんか」

 耕輔はちょっと呆れ顔をしている。


「まあ、とにかく。

 落ち着いてからと思って、紹介が遅くなってごめん。

 こちらはアウローラの領主の令嬢のファーファ。

 俺はいまお世話になっている」

 祐司は、紹介を忘れていたことに気がついて慌ててファーファを紹介する。


「ファーファ、こっちが俺の親友の耕輔」

「僕は矢野耕輔。よろしく」

 領主の令嬢と聞いて驚いたが、すぐに親しみを込めた笑顔になり耕輔は自己紹介した。

「ボクはユウジの一番弟子のファルデリア・ア・ファールン。

 ファーファと呼んで」

 ファーファはしれっと祐司の弟子だと自己紹介する。

 これにはファーファ以外の二人は唖然として口を開くが出てきた言葉は違っていた。


「えっ。弟子を取ったの⁈

 祐司らしくない、ずいぶん手が早い」

「ファーファ弟子じゃないって言っただろ!

 てか、違うから、弟子にはしてないって。

 それになんだよ手が早いって」

 慌てた表情からムッと表情になりながらも弁解している。


「まあ、とにかく移動しよう」

「ふーん」

 耕輔は疑いを残した表情で祐司の後を追うが、そこで思い出した。

「そうだ、玲奈のことを忘れていた」

 周りを見回して近くの屋根にいた玲奈を見つけると腕を振って呼んだ。


 玲奈の話題が出たので祐司は歩く速度を緩めるが、耕輔の仕草を不思議に思っていた次の瞬間、金色のフクロウが音もなく飛んできて耕輔の肩に止まったので喫驚してしまった。

「耕輔、おまえいつからフクロウ使いになったんだ」

 祐司は呆れ顔をする。


 その反応を予想していたからか、ちょと得意げでもったいぶって口を開こうとした耕輔はファーファに先を越されてしまう。

「すごい、金色のフクロウって初めてみた」

 ファーファは純粋に感動していた。


 耕輔はタイミングをはずされて腰が砕けてしまったが、なんとか取り返す。

「これが、玲奈だよ。

 詳しくは後で説明するけど、間違いなく玲奈だよね」

 バツの悪い顔を取りつくろい説明を続けた。


 最後の言葉は玲奈に向けられていて、その声を受けて玲奈が喋る。

「そうだよ。玲奈だよー」

「すごいすごい喋るフクロウだ。祐司といると退屈しないね」



 やっと部屋に戻ってきた時には祐司は疲弊ひへいしていた。途中で耕輔とファーファが玲奈を追いかけて行ったり来たり。退屈したアギーが空から探しに来て玲奈フクロウと一悶着ひともんちゃくあってなんだかんだと部屋に戻ってこれなかったのだった。


 使用人に飲み物を用意してもらって、やっと落ち着いて話ができるようになった。場所はファーファの邸宅にたくさんある空き部屋のひとつ、時々使用人がプレイルームとして使っているので小さな机と椅子が数脚置いてある。他人に聞かれたくない話をするのにもってこいの場所だった。そこの机に耕輔と祐司は向かい合って座っている。


 耕輔は疲れているのか椅子に浅く腰かけ、背もたれにぐったりと寄りかかっている。アギーは相変わらず耕輔の頭の上に居て、今は腹ばいになって小分けしたミルクを舐めながら下を覗き込んでいる。玲奈は明り取りの窓の枠につかまって羽の中にくちばしを突っ込んで微睡まどろんでいる。ファーファは祐司の右斜め後ろで椅子をまたぎ背もたれに両肘を置いて方杖ほうぼえをついて二人の方を興味深げに眺めていた。


 お世辞にも行儀がいいとは言えないその格好を見ていると美少年としか見えないが、美少女だとするとさらになかなか絵になるな、そんな考えが耕輔の頭を瞬間横切った。すぐに彼は頭を振って祐司に視線を戻した。砂色短髪で濃い緑色の瞳の美少年のような少女、初めてあったはずなのに耕輔はなぜか親近感を持っていた。そのことに疑問を持ちつつも祐司に意識を向ける。


 祐司は、耕輔の視線がファーファにしばらく止まっていて、頭を振った後に自分に戻ってきたことには触れず話を始めることにした。

「それで耕輔はどうしてたんだ」

 祐司はそういったものの、すぐ思い直して質問を変える。

「まて。

 その前にあれ、は本当に川原さんなのか?」


 視線で窓枠のフクロウを指し示し耕輔に問いかける。

「間違いないと思う。

 いや、僕は確信している。

 あのフクロウは玲奈の一部がこの世界で実体を得たものだと。

 僕らとの違いはあの時の位置によるんだと思う。

 彼女はだいぶ離れていたからね」


 耕輔も視線を玲奈に投げかける。

「今は元の世界の玲奈の意識とはつながっていないようだけど。時々話し方が変わるのでわかるよ……」

「へえ、耕輔は川原さんを名前で呼ぶようになったんだ」

 ニヤリと笑う。

「深い意味ないよ」


 耕輔は慌てて弁解した。

「フクロウを『川原さん』とは呼びにくくてさ……」

 さらに説明を続けようとする耕輔を手のひらで押しとどめる。


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