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お嬢様は魔法が得意  作者: 灰色 洋鳥
第二章 妖精の国
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魔法暴発

 玲奈は病室のベッドに腰掛けて足をブラブラさせている。検査の結果、残りの三人ほどではないがやはり脳の活動度が上がっていることがわかったので、経過観察と様子見のため入院することになったのだ。春華の父親は娘のために個室を望んだが事情が事情なので四人部屋で同室となった。


 いまは、母親が着替えなどを持ってくるのを待っていて、時々三人の様子を眺めたりしている。

 三人はそれぞれカーテンで仕切られており、いろいろな電極が付けらている。側に測定器が幾台も置いてあって定期的に電子音と測定結果を表示している。部屋の隅に置いてあるくだんの魔法アイテムをしげしげと眺めたりしていたが——事情をかんがみて不用意に触れないようにした上で同じ病室に置いてある——今は退屈していた。窓の外は夕暮れの気配が迫っており、だんだん暗くなる空をベッドに横になって眺めていた。


 そのとき離れた場所でパチッと物音が聞こえた。

「なんだろう」

 弾けるような音がパチッ、パチと続けて聞こえてきた。音の方を振り返ると耕輔のベッドのカーテン越しに光の点滅が見える。


 急いで近寄って覗くと耕輔の全身から火花が出ておりベッドの金属部分へ太くて長い火花が幾本も連続で飛んでいた。慌てて側を離れた途端、測定器が火花とともに煙を吹き出し、別の機械が耳障りな電子音を響かせた。


 そこに看護師が慌てて走ってくる。カーテンを引き広げてその状態に立ちすくむ。まるでプラズマボールのように耕輔の周りを稲妻が取り巻いていた。続いて数人が走り込んで来るがやはり立ちすくんでしまった。放電を放つ患者など初めてのことだったろう。


 そのうち看護師長らしい人物が怒鳴り指示を出す。

「ほら、さっさと他の二人をもっと離して。

 そっち機械の電源抜けそうだったら抜いて。

 誰か電気を通さないもの持ってきて」


 テキパキした指示に立ちすくんでいた他の看護師たちも動き出す。動き回る人々の邪魔にならないように離れた場所でその様子を玲奈は見ていた。耕輔から稲妻が走っているのだが、体から少し離れた場所から始まっているのか着衣には全くダメージがないように見える。あれだけの稲妻を発しているのに服が焦げていないのだ。それに対して布団や毛布には黒々とした筋が入っており一部はくすぶっていた。


 玲奈は場違いにも感心してしまった。玲奈も魔法使い(の卵)である。事象改変は起こすのも難しいがコントロールはもっと難しいということをよく知っている。


 そのうち医師もやってきて指示を出し始めた。玲奈は病室から追い出されしまったので廊下でさっきまでいた病室の騒ぎを見ていた。春華のベッドを病室から出し、祐司を出そうとした時にまた騒ぎが起きた。看護師の悲鳴が上がる。


 祐司のベッドが浮き上がりかかっているのが病室の外から見える。慌てて数人の看護師が飛び出してきた。師長と思しき人物が一所懸命ベッド引っ張り耕輔から離そうとしていた。そこでデイルームまで連れていかれたので玲奈はその先はわからなかった。


 デイルームで待つように言われた玲奈は本を読んでいたが、字面を追うばかりで内容がちっとも頭に入ってこない。

「あー、気になる。

 春香、大丈夫かな」


 春香のことが心配で思わず声が出てしまう。みんなのことが気になって仕方なく、しょっちゅう病室の方を見るので尚更ページが進まないでいた。


 そこに原田医師がやってきて三人の状況の説明をしてくれた。いまは三人とも落ち着いているが、耕輔が傷だらけになっていると、とても不思議がっていた。その後質問があるというので、さっきの状況を聞かれるのかと思っていたら違った。


「川原玲奈さん、調子はどうですか。

 頭痛とか幻覚とかありませんか」

「いえ、大丈夫です。なんともないです……」


 そこまで言いかけて『幻覚』という言葉に誘導されたのか、玲奈は視野が急に変わった。目の前には原田医師がいて自分を見ているが、それと重なるということとも違う。別の目で見ている風景が別の視野に映っている。そうまるで自分は一歩後ろにいて二つのスクリーンを同時に見ている感じだった。


 その視野では眼下に広大な森が見える。そこを自分は羽ばたきながら降下していく。探していたものを見つけた。それは、変な服を着た耕輔で木の枝にぶら下がっている。そばまで降りていくうちにも耕輔はゴソゴソと移動していってる。その仕草がおかしくて、よく見るとやっぱり傷だらけで玲奈はクスッと笑ってしまった。そばの枝に止まって見ているとこちらに気がついた。


 あまりにびっくりしているのでなんだか楽しくなって、耕輔のそばの枝に止まり話しかけた。

「あなた。耕輔。矢野耕輔?」


 その時、玲奈は肩を激しく揺すられた。

「川原さん、川原玲奈さん。大丈夫ですか?」

「あ、はい。大丈夫です。

 森の中で矢野くんを見つけて、思わず声をかけちゃったんです」


 原田医師は、何を言っているかわからず、顔を不信感だらけにして玲奈のそばの椅子に腰掛けた。腰を据えて話を聞くことにしたのだった。


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