1/36
バナナの皮で滑って転ぶ
その日、私は大学の入学試験を受けるため、電車に乗ろうと駅へと向かった。
残り少ないわずかな時間さえも無駄にしない為に、私は小さなノートを片手に持ち、その内容を暗記しながら階段を降りていた。
最近はスマホを操作しながらの歩行が危険だとよく言われているが、よくよく考えれば危険なのはスマホに限らず、ノートを見ながらの歩行も危険だという事実に私が気づいたのは、まことに残念ながら、階段の途中に落ちていたバナナの皮を気づかずに踏み、世界が一回転した後だった。
後ろのおばさんの危ないという叫び声が聞こえたときには私は既に頭から地面に激突した後だった。
それが私の覚えている最後の記憶だ。