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君にさよならを言うまで  作者: のにのと
2/2

部活スタート

 バスケ部が活動中の体育館に行くと、男子女子合わせて十数名程の部員が、アップをしているところだった。

 部活に関しては何の下調べもせずにここに来た私たちは、人数の少なさに驚いた。

「あ、体験希望の子?」

 眼鏡をかけた、優しそうな先輩男子が、私たちに気づいて駆け寄って来る。

「はい。仮入部届け持ってきました。」

「俺もです」

 と言いながら、井原君と遠田君は、眼鏡の先輩に紙を渡す。

「えっ、もう仮入部してくれるの!?他の部活見に行かなくて良い?」

 やけに遠慮がちな先輩に、

「はい!俺最初からバスケ部入るつもりだったんで!」

 元気に返す井原君。

「そっかそっか。いや見ての通り部員少ないし、この高校サッカー強いから、部員もマネもそっちに引っ張られちゃって…あれ、そっちの2人はマネージャー志望?」

 突然話の矛先が私たち2人に向いた。

「いえ…女バス入部希望です。」

「あっ、私もです」

「そっかそっか。じゃあちょっと待ってて」

 眼鏡先輩はそう言って私たちのもとを離れると、アップ中の女子の方に言って、1人の先輩を呼んできた。


「女バスの部長の宮本遥です」

 と言って軽く頭を下げたのは、長い髪をポニーテールで結っている、美人の先輩。

「浦辺千早です」

 と、千早も小さく頭をさげたので、私もそれに倣う。

「ぁ、坂木華蓮です」

「千早ちゃんに、華蓮ちゃんね。2人は経験者?」

「はい。私は小2からやってます」

「私は5年生から…」

 千早は、先輩相手でもスイスイ会話を進めていく。私の声も、ちゃんと先輩に届いているだろうか。

「おお、2人ともミニバスからやってんだ!…それじゃあ今からシュート練なんだけど、参加できそう?」

 もちろんです、と千早は答え、私は小さく返事をした。


 久々に履いたバッシュ、久々に持ったボール。少しついてみた。いつもみたいに、力強く私の手に戻ってきた。

 ゴール下が私のポジション。ミドルもゴール下もこなす千早のようには出来ないけれど、5年間やってきたポジションなので、愛着みたいなものもある。中3の夏以来やってなかったけど、久々にやったバスケは、やっぱり楽しかった。

 男子の方を見ると、そっちでもシュート練をしていた。

 人数が少ないとはいえ、やっぱり男子と女子ではレベルが違うんだなあ、と思った。

 そんな時、遠田君がボールを持ってコートに出てきた。彼はコート上の大きな半円、つまりスリーポイントラインに立った。何度かボールをついて、そして、打った。

 私はつい、見惚れてしまった。フォームも、軌道も、回転も。とっても綺麗だった。ボールは吸い込まれるように、リングの中を通り抜けた。小気味のいい音を残して。

 ただ単純に、「かっこいい」、そう思った。


「やっぱりバスケは最高!!あたし明日からでも正式に入部したいくらい」

 帰り道、まだ興奮が冷めない千早。

「ふふ。…まあでも、楽しかったよね。先輩達優しそうだったし」

「うんうん。あ、けどあの人数の少なさには驚いた」

 今日のこと(ほとんど部活のこと)を話しながら、いつものように2人で帰って、また明日、っていつものT字路で千早と別れる。

 1人で家への道を歩きながら、私は遠田君の事を思い浮かべていた。

 真っ白な肌に、女の子みたいに大きくて黒い瞳。髪の毛も黒い。ストレートで、サラサラ。優しくて落ち着いた声。

 初めて話しかけてくれた時の、笑った顔。そして、あの綺麗なシュートフォーム。

 ぼーっと考え込んでいると、

「ワンッ!!」

 坂木家の愛犬、ユキの声ではっとする。もう家に着いてたんだ。

「ただいま〜ユキ、いい子にしてた?」

 庭の犬小屋の前でこちらを見て嬉しそうなユキをひとなでして、家に入る。部屋着に着替えて、すぐに2階の自分の部屋へ。とりあえずベッドに身体を投げ出す。ああ、落ち着く。

 またもやぼーっとする頭に浮かぶのは、やっぱりあの顔。

「とおだ、ぜん」

 その名前を口に出すと、おかしいな。なんだかどきどきしてきた。誰も聞いてはいないはずなのに、恥ずかしいことなんて何も無いはずなのに、顔に熱が集まるのが分かる。

 ''気づいたら、彼のことばかり考えていた。''

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