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紅蓮の姫は覇道を紅く染める【凍結】  作者: ネコ中佐
第1章: 目覚めし力
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素材採取と謎の追跡者


やっと投稿できました。



【依頼掲示板】



『魔物退治ゴブリン』


依頼者 開拓村二号村長


依頼受注ランク 問わず


受注料 銅貨三枚


報酬 半銀貨二枚


場所 開拓村二号



『ヴィミィール領ミルド街護衛』


依頼者 キャラバン隊長 オッズ


依頼受注ランクD以上


受注料 銀貨5枚


報酬 金貨3枚銀貨35枚


場所 ウルマト内空き


追記 ヘンリィード平原にて他の商隊と合流



『山賊討伐依頼』


依頼者 木工組合会長トマス


依頼受注ランクD以上


受注料 銀貨二枚


報酬 金貨二枚銀貨15枚


場所 シント村



『教会の炊き出しの手伝い』


依頼者 開拓村聖堂教会監督役兼司祭ウォード


依頼受注ランク 問わず。(なお、D以上は優遇する。


受注料 銀貨1枚銅貨3枚


報酬 銀貨10枚 (賄いを用意します


場所 開拓村二号聖堂教会



『素材鑑定の手伝い』


依頼者 鑑定屋店長クリスィル


依頼受注ランク問わず


受注料 銀貨2枚銅貨5枚


報酬 仕事の出来による。


場所 ランディラ商会


追記 スキル『鑑定』系所持者優遇あり




『石材荷役の手伝い』



依頼者 宮殿建設団代表秘書ミル


依頼受注ランク D以上が望ましい


受注料 銀貨3枚


報酬 金貨2枚銀貨12枚


場所 ウルマト衛兵所


追記 腕力に自身がある方優遇します




ここにあるのが、ギルドの発行したDランク、それに近いものの依頼である。他にも依頼はあるが、他の高ランク冒険者と一緒だったり、または隣国への出張みたいな依頼だったりする。


今回、エストレアは日帰りで依頼を受けるつもりだった。なので、この中から選ぶ必要があるーーーのだが、どれも日帰りで終わらせるのは厳しい。



「むぅ、どれにしたものか‥‥‥‥。Dランク、に限定してみたが日帰りで終わらせるのはいささか厳しいな」


いくつかは無理してでもできそうなものはあるが、素材の鑑定は冒険者ランクが上がったとはいえまだなりたてのエストレアには厳しく、教会の炊き出しなどあまりにも遠い。


行けなくはないが、スタミナが尽きる。



ふむ、と顎に手を当てながら足元で動く馬鹿を踏みつけている。


何があったかといえば、酒に酔った冒険者がエストレアに絡んできたのだ。

人数は三人。掲示板を見ながら三人とも右足を払うだけで転び、足を回して段重ねにして踏みつけておく。


僅か三秒。

冒険者からしてみれば何をされたのかわからないだろうし、仮にわかっているとしても女性に絡んで無様に這っているという現実だけだ。


要は、恥をかいただけ。


昼の明るいうちから酒に酔っ払って迷惑をかける人は、エストレアとしては感心できないししたいと思わない。

なんだかんだと喚いているので、周りに配慮して衝撃を透過させる。狙うのは背中、肩甲骨の中心。


ズンッという鈍い音を出して喚く男どもを黙らせる。

チラ目で確認すると足を離し、掲示板に目を向けた。


もう彼らには一切の興味はない。


「しかし、何を選ぼうか。時間はもう少ないし‥‥‥」


「エストさん、クエストのお悩みですか?」


声がかかった方は向くと受付のカウンターから受付嬢のエリザが手を振っている。

手元にはいくつかの書類が置かれており、何枚かには付箋が貼られ見やすいようになっている。


「何か悩んでいるようでしたので、声を掛けさせてもらいました。ご迷惑でしたか‥‥‥‥?」


「いや、そうでもない。ただ鍛錬場を覗きに行きたいから日帰りで出来る依頼を探していた。…‥‥ふぅ、なかなか見つからなくてな」


やれやれと嘆息するエストレアにどこか納得するエリザ。

「鍛錬所というと、ああ。エストさん格闘術習得されていたのでしたね。うーーん、どこかにあったはずなんだけどなぁ」


あれでもない、これでもないと付箋が貼られたおそらく依頼書を探すエリザ。

目当てのものが見つからないようで引き出しを開けたりして探している。それでもものがごちゃごちゃにならないあたり彼女が有能な職員の証明である。



「ありました!Dランクではないですけど、日帰りでこなせる依頼書がありましたよ。ええっと、薬草採取の依頼ですね、ウルマトのすぐ近くにある薬師さんが腰を痛めたそうなので代わりに娘さんが持ってきたみたいです」


採取系の依頼。


基本的に冒険者の基礎たる依頼だと思う。採取の知識があればいざという時に対応できるだろうし、戦うことだけが冒険者の全てではないのだ。

そもそも採取の依頼は特定のアイテムを一定数集めるだけで良いし、依頼中、高額で買い取ってくれる珍しいモノが取れることもある。


盲点だった。採取だって立派な冒険者の仕事だし、依頼によっては一攫千金だって夢でないのだ。


「わかった、それを受けよう。詳細をくれないか」


「かしこまりました」


エストレアは、エリザから依頼書を受け取ると隣のカウンターから自注証明を受け取る。これがないと、正式に依頼を受けたことにならないし、脱税等で捕まる可能性がある。無論、無くした場合も、この世界には魔道具というものがある。これで、誰が受けて、自注証明を受け取ったということが証明できるのだ。



「いってらっしゃい、怪我のないように」


エリザの声を背後にギルドを後にするエストレア。その後、衛兵がすれ違いでギルドに入っていくのを見た。しかし、エストレア本人にとってどうでもいいことだった。




ーー



「…………?尾けられている、のか?」


エストレアはウルマトを出てから依頼をこなすために大森林を目指す途中、背後に感じる気配に足を止めた。違和感を感じたのは出てから少しした後。

割とすぐだった。


ーー手慣れている。


そもそも尾行の難易度は遮蔽物が少なければ少ないほど難易度は上がる。

対象の認識できる情報量が多い方が尾行しやすいのだ。しかし、エストレアのいるのは一本の道と平原。背後にはわずかながらの茂みに常緑樹のみ。


しかし、気配は感じられるのに、茂みや常緑樹には息づかいや心音、熱を感じない。

だが、割と近くにいるというのはわかっている。


「ふむ…………試してみるか」


ーースチャっ


腰に帯びた愛刀、丸兼定刀匠作『兼丸夜叉紋様姫櫻』の柄を手にかける。


狙うは、あの木の陰。


「シッ!!!」



ーーではなく、足元の影だ。勢いよく切っ先を陰に向けて突き刺す。



手応えはあった、がーー


「逃げられたか、察しの良い。 ………やはり手練れだな」


深々と突き刺さった刀身を引き抜くとポタポタと血が垂れながしている。

と、同時にエストエアが感じていた気配も遠ざかり後は静寂だけ。


「空間系の魔法?いや、系統としては雷に近いな。あるいは複合かーー?まあ、いい。次は返り討ちにするまでだ」


ピッ、と一振りして、着いた血を払うと、腰に下げたポーチからキメの細かい布を取り出し、刀身を拭いた。

拭き終わると、どこも異常がないことを確認して鞘に納め、再び依頼をこなす為に歩き出した。











ーー「痛てて…………!あそこで気づくなんざ普通じゃねえな。こりゃ、旦那たちの依頼は難しそうだねぇ。一旦引きますか」


エストレアが去った後、少し離れた場所で肩を抑えてうずくまる中年の飄々とした男がいた。


気配は消したはずだった。そして、人気がない場所で、手渡された怪しいまでに塗りたくられたダガーを刺して、連れて行けば良いはずだった。ダガーを見る限り、麻痺毒と思った。


「ありゃ、ウサギじゃねえ獅子の類だ。あんなの誘拐しろとか旦那も無茶言ってくれるぜ」


よたよたとよろめきながら林の中に消えていった。しかしーー


「見抜かないと思っていたのか。匂いは覚えた。次はないからな」


男とは反対の方向へ歩いていた少女の口元は、僅かににやけていた。





ーー


「ふぅ、えっとこれが『蜜香草』で、あとは、『龍眼根』、『蛍草』、『ヒカリゴケ』、『青カビ』…………『青カビ』?この世界にはペニシリンがあるのか?」


ペニシリン。前世において、1928年にアレクサンダー・フレミングによって偶然発見された世界最初の抗生物質である。ペニシリン そのものは菌類に作用するため、ウイルスなどの生物には効果が薄かったが、時を経ながら様々な改良が加えられた。


近年では、耐性を持つ菌類やウイルスが現れたが、未だその高い抗菌性は維持されたまま。


ペストをはじめ、破傷風や、撲滅された天然痘、性感染症の各種の病気を駆除してきた。


これを保有する青カビはどこにでもある。胞子そのものが空気中にあるためだ。集めるならば、植物にコロニーを広げているのを集めるべきか。


代表的なものは、ミカン青カビ病、サツマイモ青カビ病だ。しかしーー


「そんなもの、あるわけがないじゃないか………」


そういうことだった。他の薬草や素材は集められる。しかし、どこにあるかなど分からない、そこら中にあるが故に青カビはかえって見つけにくいのだ。


思わぬところで躓くことになるとは。いや、そうじゃない。これは己の恥ずべきことだ。やろうと思えば調べることも出来たはずだ。これは自身が招いた慢心が故。


エストレアは思考する。

青カビは、所詮はカビ。カビの発生するための条件、第1として湿度が高い。つまりは水辺か、こういった生い茂った大森林の中。


第2として空気があまり動かない、温度が一定であるということ。30度あたりが理想とされている。


第3として、カビは真菌類、キノコとドッコイであること。


「水辺を探そう。水溜りでもいい。………ん?魔獣か、こちらを伺っているのか?あ、逃げた。」


自身の背後4時方向に気配がしたので振り返れば、逃げるように去っていく。足跡からして二、三匹目の邪鬼ゴブリンだと思われる。


ふと、エストレアに勘が働いた。


『魔物といえど、獣と大差ない。したがって見つけにくい素材は獣を追いかけていけば見つかるのでは?』ということだ。


無論、闇雲に追いかければ迷子になって死ぬか、最悪、奴らの巣の中に。


ポーチからヒカリゴケから作られた印粉しるしごなを散布しながら先ほどの魔獣の後を追いかけるのだった。








ーー続く

次はいつになるかな………。

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