天翔演舞
この度は、大幅に遅れに遅れ申し訳ありませんでした。リアルで多忙すぎ、なかったなかなか手につけられなかったのであります。その為、少しずつ修正はしますが無理矢理感満載な内容ですので‥‥‥‥‥ご了承してください!お願いします!
ーー 砦に猛き空駆ける者が現れた。
其の灯浴びたる者はたちまちに塩の柱になるであろう。
其の爪牙に掻かれるもの癒されぬ邪の痛みを齎す。
怖れよ、讃えよ、かの者は猛き空駆ける蛇である。
旧約ラムダ創世記第34節 燃ゆる門と閃より一節を抜粋。
ーー
凄まじい轟音が響いた。砂埃が周囲を覆い、一時的に周りが見えなくなる。
瓦礫と化した建物は雄大さを備えた大森林の王に踏み潰されている。
「GAAAAAAaaaaaaaa!!!!」
異常に発達した翼、山羊を思わせる湾曲した角。ギラついた瞳に絶えず漏れ出る灼熱の息。
身じろぎするたび高熱の熱波が発生し、周囲を焼き尽くす。
その口から発せられた咆哮はその場にいたものの殆どの鼓膜を破り聴覚を奪う。
ただ一人除いて
かの王が見つめるのは一人の怪物。年若き少女の姿をしていてもそれの纏うオーラは形容しがたいナニカ。
こいつが自分の縄張りに異変を起こした元凶、許しがたい。
全力を持って焼き焦がしてやる。
王である我が縄張りを汚したその罪、死をもって贖え。
ーー
エストレアが砦正門に来た時には正門は混沌としていた。魔物一つに対し三人で対応している点は指揮能力が高いということがわかる。が、問題は次から次へと魔物が押し寄せていることである。そうなると次第にその布陣は綻びが生じる。
そういった対処できない所をAランク冒険者が対応するのだろう。
事実1組の兵士に乱入しようとした鳥のような魔物が閃光の如く光で貫かれていた。
エストレアは横目で彼を見つつ魔物を片手間で切り捨てる。彼女でも聞いたことのある冒険者。
アルケシュ、アルケシュ・メルタードと言うのだがエストレアが聞いた話だと常に一人で依頼をこなしている弓使い兼精霊使いである。
そのためつけられた二つ名が森の狩人。
風の精霊に愛されている彼の放つ矢は音速を超え見ることはできないと言われるほど。
事実エストレアの動体視力でもってもかろうじて見えるだけである。
エストレアがおかしいだけで、魔法で強化された矢を捉えることは一流の戦士でも難しい。
「助太刀感謝する!狩人殿!」
「気にすんな、当然だろ?っと、射っ!」
すかさず矢を連射し、近づいていた邪鬼や甲蟲を射抜いていく。
弓には大きく分けて三種類ある。
例えるならば、弓道等に用いる長弓。超遠距離射撃に適しており、熟練ならば数キロ離れた的にいることさえできる。当然威力は折り紙付きだがその大きさ故取り回しに難がある。
狩に赴くときに用いる狩猟弓。
射程、取り回し、威力等に優れた万能型。弓といえば大体これを指すことが多い。
騎馬兵などが使う短弓。射程、威力は最低であるが取り回しに関しては上二つを凌ぐ。
アルケシュが用いているのは短弓をカスタマイズした狩猟弓に近い形状の弓だ。狩猟弓にしては小さく、短弓にしては少し大きい。
彼によれば精霊が生み出したものだとか。
結局、何が言いたいのかというと、エストレアは視えていた。
ここ目指して高速で飛翔するソレ。飛竜の存在を察知していたが故対空攻撃が出来る彼を疲れさせないためだ。
無論、次期宮廷魔術師や付与魔術師や魔法剣士もいるがかの赤飛竜相手だと魔力量や魔力耐性等に問題がある為カウントしない。
屋根伝いに駆けていきながら魔物を切り、殴り、蹴り落とす。
しなる鞭のように音を置き去りにしながら敵を切り裂く様は正に流星の如く。
兵士はおろかここにいる高ランクの冒険者でも何かが通ったくらいにしか認識できないであろう領域。
彼女の目的は弩である。
何故か。
それは先ほど言った通り対空手段を手に入れる為である。弩を解体して即席の大型弓を作る。弦も吸血姫の力を使えば長弓とあまり変わらない。
後にズレていることに指摘されるまで彼女は気づくことはなかった。
誰も弩解体して弓を作るなんてことはしない、と。
ーー
少しづつであるが冒険者も集まり、数に対応できるようになる。
魔物の数がようやく減り始め、一段落つくと思われる頃、
ーー厄災は訪れた。
「GAAAAAAAAッッッッッッッッッッ!!!」
鼓膜を破る勢いの砲吼が聞こえてくる。
丁度、兵士の目を盗んで、弩の金具を外していると、エストレアに影が覆いかぶさる形で差し込み、丁度真上からの警鐘を感じ取った。エストレアは咄嗟に近くの施設に転がるように回避すると耳をつんざく爆音が起きた。先ほどまで彼女がいた場所は焼き焦げ、一部が溶けプラズマが発生していた。
無論、弩は溶解していてそれはもう使えない有様だった。
見上げれば遥か上空から地上に向かって降下してくるソレ。上からは豆粒程の物体にしか見えないが次第に輪郭が見えてくる。
其れこそが
「あれが‥‥‥‥‥‥‥‥赤飛竜?」
エストレアがふと漏らした言葉に反応して周りが騒ぎ始める。
「いや、どう見たって飛竜種じゃねぇだろ。例えそうだとしても変種、だな。竜種に限りなく近い飛竜ってやつだ。」
「へ、怖気づいたのかよ、兄貴。変種だろうがなんだろうがたたっ斬るだけだろうが。それにしても見ねぇ顔だな、新人かパァ!?「世間話してる場合か?」わぁーたよ‥‥‥。」
見ない顔であるエストレアに問いかけようとするフランメルは兄であるテスラのゲンコツという制裁を食らい涙目になりながら睨みながら渋々頷く。
変種。魔物の生態系においてごく稀に発生する突然変異。変種になると基礎能力が大幅に上昇する。例えば、ゴブリンが変種になれば飛竜と互角に戦える、という報告があるくらいである。飛竜の変種。それの意味するものは‥‥‥‥‥。
冒険者達の間では飛竜と戦う時は如何に地上に引きずり落とすかが鍵となる。相手は空の王。地に生きるものが空を掛けるものに届くことが困難な為だ。
遥か上空の赤飛竜はホバリングしながら此方をジッと睨みつけるように見下ろしている。エストレアは特にだ。人間の皮を被っているような存在は野生というか少なくとも大森林の主にはわかりやすいのかもしれない。先ほど火球を放ったが避けられてしまった。威嚇を主だった為当たれば僥倖といった物だ。
ふと見れば魔力が篭ったものが一つ、確認できた。感覚でわかる。恐らくは、契約者か。そして、弓か。矮小な人間が空を駆ける我々に対抗できる数少ない手だ。
「にしてもここで赤飛竜たぁ、まさしく真打登場ってわけだ。だが、飛ばれんのは癪だな!落ちな!!」
アルケシュの精霊による加護を乗せた音速の鏃が放たれ、弱点の腹目掛けて射る。誰もがこの一撃で有利な地上戦に持ち込める、場合によっては撃墜し倒せると思っていたようだった。
確かに直撃はした。そして追い打ちとばかりに鏃の速さを補う風の魔力を暴走させて一時的な真空の風の刃を発生させたのだ。
あたりは砂埃に包まれ周りが見えない。
「やったか?」
誰かが呟く。確かにあれ程の威力を飛竜にぶつけたのだ。倒せなくても、傷くらいは負わせたはずだったーーーー
現実は非情である。
「GAAAAAAAAaaaaaaaッッッッッッッッッッっ!!!」
突然の突風。そして、耳をつんざく砲吼。それだけで身動きが取れなくなる。突風でバランスを崩され、砲吼により鼓膜を破られて耳から血を流す。
辛うじて立ち上がったエストレアが見たものは傷が一切ない五体満足の飛竜の姿。他の者達は突風で吹き飛ばされたようで、地面に転がっているのは当たりどころが悪く死んでしまったらしい。
突然の出来事で体がフラフラだがあの一撃では何も効果はなかった、という結果が出ただけだった。これがーー飛竜か。
体勢を整え向き合うーーーことはなくエストレアは意識を手放した。
太く鋭い荊のような飛竜の尻尾の棘が彼女の身体を引き裂き、遠心力を持って崩れかけた建物に吹き飛ばし、そして剥がれ落ちた鱗の欠けらがトドメとばかりに放った火球に連鎖的に起爆。エストレアごと巻き込んだ大爆発を引き起こした。
続く
ふう、年内には描ききったか‥‥‥‥‥。
もはや何も言うことはない。言い訳は‥‥言ったと思う。
誤字、脱字等感想あればお願いします。




