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紅蓮の姫は覇道を紅く染める【凍結】  作者: ネコ中佐
第1章: 目覚めし力
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迎撃開始: 零 2

おまたせです。

「ふぅー、こんなものか。もう少しいい武器なら良かったんだがな‥‥。」



エストレアはギルドから少し歩いた所にある武具を取り扱う店で装備を物色していた。現在、黒い毛皮のコートを着ているが用心のため籠手や脚絆などを試しに装着していた。ついでに武器も探すことを忘れない。



「たく、嬢ちゃんの要求を満たす武器なんてウチにゃねぇぞ?ギルド御用達の武器屋だからあえて知らねぇけどよ、普通の武器屋だったら追い出されてるぜ?」


彼女、エストレアがいう武器とは前世でよく使っていた愛刀と旋棍(トンファー)である。が概要を言っても店主にはわからないようだった。

わかるはずもないかとエストレアは自笑する。刀も旋棍(トンファー)も前世でいえば何世紀先の武器だ。

こういう客には慣れているのか少し苦笑していた。




「だから、聞いたのだ、店主。こういう武器あるいは類似した物はあるかと期待してギルド御用達である武器屋に来たのだ。」



ボリボリと頭を掻きながら店の奥に消えていく店主。

少し間をおいて店の奥からおそらく在庫である武器が入った箱を持ってきた。


「よっこらしょ、っと。あいにく店にあるものじゃ嬢ちゃんの要望は答えられねぇ。だがここにあるのは俺が若え頃に集めてきた代物だ。ひょっとすると要望に答えられるものがあるかもな。」



「ふむ、では見させて貰おう。」


そもそもこの世界は古代中世、わかりやすく言えばイギリスの別名ブリテン、アーサー王伝説あたりの時代と近いと言えるだろう。


箱を漁ってみてみるが、品として並べるつもりはなかったのかそれとも忘れていたのか、管理がかなり杜撰で所々錆び付いている。

品は鋳造仕様の長剣、短剣やソードブレイカー、馬上槍といったものやメイス、弓などがあったが先ほどいったようにほとんど使い物にならない。弓など論外だ、弦はゆるゆるで材質である木はカビが発生している有様。正直言ってこれで客である自分に見せられるものなのか。喧嘩売ってるとしか思えないくらい酷い。これでこの街で大きい武具屋なのだから他を見ても変わらないだろう。


もはや諦めに近い感じで全て見てみる。やはり全て使い物にならなかった。蓋を閉じ後ろを振り向くと店主が新しい箱を引っ張り出してきた。その時だ。懐かしい感覚に囚われたのは。


黒光りする漆黒の鞘。鯉口には桜の紋様。下緒は通常より長めで目貫には二重で巻いてある。


間違いない。



かつて前世で愛用していた二振りの一つ。


「よいしょっと、これが最後のやつだ。その感じだと駄目だったよう「店主!これをどこで!?」うおお!?なんだぁあぁ!?」





その名は






無銘 兼丸夜叉姫櫻(かねまるやしゃひめざくら)




という。





ーー




「申し訳ない、取り乱してしまった。」


「気にすんな、びっくりしたがな。」


あの後、どうやってこれを入手したのかとかちゃんと手入れしてあるのかとか予想を上回る出来事のせいで正気をたもってなかった。

気づけば白目をむいてガクガク揺れる店主の姿が映っていると始末だった。


この事態を収拾したのは外で待機していたドランとガペットでいつまでたっても来ないから見てみれば‥‥ということらしい。



「しっかし、見たことねぇ剣だな。切れ味は良さげだが、脆そうだぜ?」


ドランは刀身を抜き刃を眺めているエストレアを見ながら感想を述べる。

刀とはわかる人にはわかるが基本引いて切るコンセプトに基づいている。が、鎌倉の時代に打たれた刀は引き切り、叩き斬ることができたという。刀で叩き斬るにはかなりの強度と練度を織り込まなくてはいけない。



この無銘兼丸夜叉姫櫻(むめいかねまるやしゃひめざくら)は鎌倉の打ち方に則って作成された。何より特徴的なのはその刀身は薄い青紫色をしており、妖美な美しさは見るものを修羅へと堕としてしまうだろう。


古来より一級品の刀は魔性の魅力を持つという。いわゆる妖刀と言われるもの。この刀も妖刀である。

その妖刀の切れ味はこのウルマトに進行する魔物共に見せつけることとする。



「問題ない、これは斬るための武器だ。それを保証するだけの業物だ。」



ドランはよくわかってないのかやや不安げだ。まあ、それも仕方ないといえば仕方なしかと自分で完結させる。実は今疑問に思っていることがある。刀はこの時代にそぐわない異質な武器カテゴリだ。早い話がオーパーツである。


「‥‥‥何故だ?」


小さく呟く。そう思わずにはいられない。この時代にそぐわない異質なそれをしげしげと眺める。が思い当たるものがある。それはエストレア自身もまた異質な存在だからだ。前世の記憶、とりわけ近代の学生であった自分を持つのも異質であろう。だから気づいた。


この刀から発せられる覚えのある感覚。虚無の空間に縛られた至高にして原初<リリス>の力を。


すなわちこの刀はリリスの贈り物に他ならないだろう。リリスに心の中で感謝し、刀を納刀、帯刀する。


そして表で待つ彼らを追いかける。目指すは魔物の進行先のメルキア砦。そこを落とされたらここウルマトで犠牲覚悟で迎撃しなければならないためメルキア砦が最初で最大の重要要素。


すでに馬車は来ている。あとは向かって魔物を撃退させるだけだ。










ーーー 今こそ魅せよう、稀代の切れ味を



押し寄せる魔物達よ、いざ仰げ。



汝らに恨みはなく、自らの自己満足のため



大地を紅に染め、刃は血の桜を咲かせるだろう



血飛沫を浴び、吸い、さらなる闘争を求め



神の気まぐれか次元を超えた記憶を携えて、産み落とされた鬼子よ


紅の髪をなびかせ刀を振るいし修羅よ、



無双をここに、



示す。


最近、暑くなりましたね、蝉の声が‥‥‥あれ?聞こえない。なんで?

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