迎撃準備
こんばんわ〜
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城塞都市 ウルマト ウルマト冒険者ギルド会議室
「早速だが、今回の大移動に関してだが‥‥‥、間違いなくここに向かって来ている。何故かは知らん。がここと村々の間には警備を怠っていなかったにも関わらず大移動が発生した。警備官長、何か説明はあるか?」
会議室の上座。指を組みながら鋭い眼光を蛇に睨まれた蛙のように直立不動する警備官長に投げかける幼い外見をした女性がいる。
黒髪のショートに黒い狐耳。椅子の背もたれにははみ出た黒いふさふさした尻尾が彼女の感情を示すかのように揺れる。
「黙ってないで、何か言葉を発せよ。人形か貴様。言い訳でもいい、手かがりになるものがあるなら申せ。ないならないと言え。」
ルディナ・カシフォルダ・ネルク
冷酷な司令官みたいな口調を話すがここのギルド長を務めているのだ。狐の獣人であるがこの国の将として一時は英雄とまで言われていた。アーサーによりそれは薄れていたが。
余計なことは言うなと暗に伝えてくる迫力。冒険者上がりのこの面子だからこそ冷や汗で済んでおり冒険者上がりでない警備官長もそれなりの修羅場をくぐっていたからこそまだ大丈夫だった。一般市民なら卒倒ないし心臓が止まるかもしれない。
「はっ、此度の大移動ですが数日前から魔物の数が増えていたことは確かです。一割にも満たないもしかしたらという程度でした。見回りも自分自身みたわけではないため気付けなかったとしかないかと。という次第です、ルディナ ギルド長。」
数日前から魔物は増えていたかもしれない→まあ、ありえないだろという認識→取り敢えず見回りを増やして対策した→が大移動を確認。周辺の村々全滅→なんで?見回りに穴があったかも、要は自分には非はない役目は果たした。という開き直りにも似ている。
「随分と自分の部下をなじるのだな、警備官長。警備官長になる前の貴様はそんなことは言わないはずだった。出世して自惚れたな。まあ、この事は今はどうでもいい。」
ふう、と一息入れて会議室全体を見渡すギルド長ルディナ。
手元にある資料、まあほぼ使い物にならないまとめがあるだけなので一瞥しただけで読む事はしない。
「重要なのは魔物の群れがここに逃げ込んできた。これをいかに迎撃するか、それに限る。取り敢えず王都に早馬を出す。緊急依頼を貼り出せ。ここのSランク冒険者も喚び戻せ!グズグズするな、時間はないぞ。エリザ、現時点で魔物はどの辺にいる?」
手元の資料を見ながら後方で待機していたギルドの受付嬢のエルザはギルドマスター呼ばれたことで、はいと返事をする。
「今現在ですとまだ大森林を出たばかりのようです。ただその道中にあった村々は壊滅、損害の程を測れないほどであると。この距離であるなら早くて3日以内に準備を整えなければ迎撃の成果はあげられないと進言します。」
ふむ、と再び腕を組みながら思案する。しかしどう考えても呼び戻すSランクの冒険者を考えると3日ではとても足りない。
いっその事自分が再び戦場に出ることも考えなければと頭に浮かぶ。
だが顔に出てたようですぐ止められた。
その後会議はあーでもないこーでもないと結論は出ないまま取り敢えず緊急依頼を張り出し頭数を揃える。要所要所を確実にこなせば被害は少なくなるとの判断したからだ。
「結論としてはSランク冒険者を呼び戻す時間がない以上、綿密に作戦を立ててやっていくしかないだろう。会議はこれで終いだ。後は迅速に動くのみ、無駄な会議は終わった後でいい。」
ギルド長 ルディナの会議終了の一言でその場にいた者達は急いで持ち場に戻る。ルディナはルディナでウルマトの領主に合わなくてはならず、王都への早馬の指示を出さなくてはいけないのだ。
「はあ、仕事が多すぎるな。毎回毎回会議のたびに威厳を出せとか‥‥。私はそんな柄じゃないのに‥‥‥‥。」
どうやら冷徹な言葉遣いは全て演技だったようだ。しかし様々な能力を持つ冒険者たちのギルドの長を勤めるには必要なことだった。
ルディナは本来は気さくな性格をしている。それでいて将としてギルドの長としてやっていくには演技でもそれにふさわしい振る舞いが求められていた。
彼女はこのシェートリンド王国の第二の矛だ。第一はアイアノス。あの男は色々と規格外だ。戦ったら勝てる確率はかなり低い。
ルディナは雑念を払うと羊皮紙に羽根ペンを走らせる。内容は避難勧告を認めさせる申請書。急がなくては手遅れになる。
だがルディナは知らなかった。かなり情報が規制されているため知らないが王都では未だ誕生会における襲撃の傷跡が残した混乱があるということ。
多くの貴族の子息たちに死傷者が出ていたことに。
それを知るのは早馬を出した使いが帰るまで何も知らなかった。
「くっしゅん!!!あーー、誰か噂してんな?多分ルディナだな、これ終わったらしばくか。」
将軍アイアノスは養娘を失い、悲観する親友を慰めるため歩き始めるのだった。
噂されたことは綺麗さっぱり忘れていた。
続く。
ふふふ、狐幼女だぜぇぇぇ‥‥‥。容姿は読者にお任せします。ぼくのかんがえた○○で。




