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紅蓮の姫は覇道を紅く染める【凍結】  作者: ネコ中佐
第1章: 目覚めし力
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ギルド騒動

更新します!キリッ

目の前には屈強そうな男共。しかし、装備している武器には所々刃こぼれが見られ、レザー製の防具は黒ずんで悪臭を放つ。

‥‥‥‥臭い。それが率直な感想であった。


「おい、そこのルーキー。挨拶料として今の金俺らに寄越しな。ついでにオメェも料金として貰うか。ギャハハ。」


ニヤついたドヤ顔で聞く価値もない要求をしてくる。取り巻きらしい者もそれを捲したてる。そっと目を配ってみると他の冒険者の敵意の視線が。当然自分ではなく、こいつらだが。


「なあ、エリザ。これいいのか?規律違反だろ?」


「はい、規律違反ですが、こいつらは言うこと聞かないので諦めてます‥‥。」


常習犯だった。


「おい、無視すんじゃねえぞ!」


無視されたと思ったようで、ろくに洗ってないであろうその手を伸ばしてくる。まあ、実際無視していたが。

鬱陶しいので足を引っ掛けて転ばす。派手にひっくり返り、床に頭をぶつける羽目になった。


「触るな、汚れる。清潔にしたほうがいいぞセ・ン・パ・イ?」


どっと馬鹿笑いが起こる。もちろん無様に転んだ自称先輩だ。

顔を真っ赤に染めてブルブル震えている。怒りか羞恥かあるいは両方かは知らないが。


「こ、このクソアマァ!ぶっ殺してやるぅ!」


怒り心頭といった感じで、(ロング)(ソード)を背中から引き抜こうとする。が、ここで注意だ。(ロング)(ソード)などの剣を背中から抜くというのはゲームやマンガとは違って非常に難しい。


理由は簡単。長剣というのだから人の腕より長いのである。

故に抜けきるまで時間がかかるし、隙だらけなのだ。

よってどうなるかというと‥‥‥‥。


「ぶげらっ!?」


振り上げたエストレアの靴底が男の顔面にもろに直撃する。男は鼻血が弧を描いて吹っ飛んでいく。


「寄るな、匂いが移るだろ。」


蹴り飛ばしたエストレアに周りから賞賛の声が上がる。蹴っ飛ばされた男はだらしなく失神していた。

取り巻き達が失神した男を連れていき、去り際に覚えてろっ!とテンプレじみたセリフを残しギルドを去った。



ーー



「ありがとうございます。あの人たちは乱暴すぎていて手を焼いていたんです。」


エリザは頭を下げ感謝の意を示した。


「さすがにあれは罰するべきだろう。剣抜いてたし、私でなければどうなってたやら‥‥‥‥。」


どう考えても違法であり、冒険者同士のいざこざに関与しないギルドも見逃すわけにはいかない事態なのは明らかであった。


「そう言われますと返す言葉がないです‥‥。彼らはギルド規則のギリギリでやっていたので周りに迷惑がかかっているのに手が出せなかったのです。申し訳ありません。」


今度は深く頭を下げるエリザ。ギルド職員として負い目を感じているようでこのままでは土下座までしかねないのではと思い始めた。


「別にエリザのせいじゃないだろう?それにギルドの受付嬢が謝る姿は嫌だな、笑っている方がいい。」


「でも貴方に迷惑が‥‥‥‥。」


「別に迷惑ではないさ。あれはゴミを捨てただけさ。まあ、あの様子じゃまた突っかかってくるだろうけど。」


あのタイプの人間はしつこい。それは前世でも同じであり、ストーカーのほうが善良的に思えるぐらいにしつこいのである。おそらくは人影のない路地裏かスラム街、あるいは依頼中で仕掛けてくる可能性があった。


「でしょうね。最悪、殺されても文句は言えないくらいのことをしでかすかもしれません。気をつけてくださいね。」


「ああ、気をつけるとしよう。ところでエリザ、ここらでオススメな宿は何処だろうか?出来れば風呂付きがいい。」


先程の騒ぎのせいで聞きそびれていた。街に来てから真っ先にギルドに来たために宿泊先を決めていなかった。エストレアは前世での習慣にこだわる所があり、風呂もその一つだった。


「そうですね、ここらだと大通り一つにある【風見鶏の大樹】がオススメです。料理も美味しいですし、部屋ごとに風呂が置かれているんですよ。もちろん大浴場もあります。少々値段がはるのがネックですけれど‥‥。それに一般の人に開けている風呂付きの宿はそこしかないんです。あとは貴族御用達の高級宿しか‥‥‥‥。」


「むむむ、仕方ないか、大通りだな?情報ありがとう。明日、ギルドカードを取りにまた来る。」


「またのお越しをお待ちしております。」



ーー



エストレアはギルドを後にして大通りを目指した。

ギルドを出るとウルマトまで道を同じにしていたジッドたちがいた。


「よ、無事にギルド登録できたらしいな。これで晴れて今日から冒険者だな。あ、いや正式には明日か。」


手を振りながらジッドはエストレアの肩をたたく。


「先程、ゴレスの取り巻きどもがゴレスを連れて行ったのが見えたが、まさかお前に‥‥‥?」


僧侶のドランがギルドの方を見てエストレアに尋ねる。あの(はいきぶつ)、ゴレスとかいう名前があったのかと何故かしみじみと思ってしまう。


「ああ、いきなり突っ掛かってきたので、退場して貰ったのさ。臭くてかなわん。移るかと思ったぞ。」


「なるほど、相変わらず新人にちょっかい出してやんのか。ま、今回は相手が悪かったな。」


「当たり前でしょー、エストさんは強いもの。それにあいつ私は嫌い。いつも粘着質な目で見てるから。」


女性であるアンナも同じ気持ちだったらしい。どうやらゴレスとかいう男はギルドではかなりの問題児のようで新人に対して突っ掛かっているらしい。男なら路地裏でボコボコにして金品を巻き上げ、女なら金品を巻き上げた上で、陵辱して娼館に売っぱらう。しかも証言があるにもかかわらず足がつかないというのだから裏組織と繋がりがあるという噂がある。

今後、気をつけようと心の中に留めておく。ああいう人間はしつこいのだから。



そんな中、アンナはハッと思いついたように話しかけてきた。

「エストさんはもう今日の宿は決まっているんですか?」


「ん?とりあえず大通りの【風見鶏の大樹】に行ってみようと思っているが‥‥?」


「あ〜〜、あそこは止めておきな。最近じゃ不正が進んでいるからな。おまけにたけぇし‥‥。それにギルドのエリザから薦められたんだろ?エリザはそこの娘なんだよ。」


「!?何故宿屋の娘がギルド受付嬢をしてるのだ?それに不正だと!なんということだ。風呂に入りたかったのに‥‥‥。」


手と膝を付きorzの形になる。それほどの落胆だった。


「まあ、あそこほどじゃねぇけどよ風呂がある宿屋はあるぜ。俺らが借りてる宿屋がそうだな。」


「エストさん、まだ決まってないんでしょ?うちの宿に行きましょうよ。」


「ああ、案内を頼む。風呂があれば、風呂があれば‥‥‥‥。」


ジッドらの案内のもと風呂もとい宿屋を目指して彼らについて行った。


続く


次回はエリザ視点の閑話になります。

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