魔王ワタシ
世界はワタシを嫌っている――
世界はワタシを憎んでいる――
世界はワタシを怨んでいる――
だから――
だからワタシは、世界を破壊するのだ――
その言葉がとても切なくて、とても寂しかった……。
彼女はどれほどの哀しみを背負って来て、今まで生きていたのだろうか――。
†
世界が、この世界が
燃える――
燃え尽きる
儚く―― そして 艶やかに――
全てを、飲み込みながら……
「ハッハッハッハッ! 燃えろ! 燃え尽きてしまえ! そうだ、全てを焼き尽くしてやるわ! この世など、全てなぎ払ってやる! みんな、すべて消えてしまえええ!」
ワタシは震える身体を必死に堪えながら、そう叫んでいた。
よもや、この世界に未練などないと自分の胸に言い聞かせながら……。
艶やかに広がる炎の海が、とても綺麗で仕方がなかった。
悲鳴に包まれる人間の醜さが、とても滑稽で仕方がなかった。
だけど――。
とても爽快なはずなのに
はず、なのに――
何だか心苦しくて仕方がなかった……。
この世界は、ワタシのことを異物と見ていた――。
ワタシが生まれたことが罪だったのか、それともワタシを生まんだこの世界が罪だったのか、そんなことはもうどうでも良かった。
とにもかくにも、ワタシは魔王としてこの世界に生まれて来たのだった。
よもやそれ以上でも、それ以下でもない……。
皆が畏怖する、魔王――。
この世の闇が生んだ、魔王――。
己の欲望のままに、そして己の気の向くままにワタシは残虐非道なまでの行いを繰り返して来た。
けれども――
心が満たされることは、一度たりともなかった。
ナゼ――?
その問いに、答えてくれる者は誰一人としていなかった。
その問いに答えてくれる者など、誰もいるはずもなかった。
もしかしたら、答えなど初めから存在しないのかもしれない。
そう思えて、仕方がなかった時だった――。
「かわいそうに――」
そう、スメラギノオオカミ(あいつ)はワタシの前に現れては、蔑むようにワタシに向かって言って来た。
かわいそう――だと?
この言葉の意味が、良く理解出来なかった。
「この世界に、キミの居場所はない……」
ああ――、なんだそのことか。
今更、何を――。
「願わくば、ここよりも良い世界に……」
そう言って、スメラギノオオカミはワタシに剣を向けて来た――。
了