序曲の名は『魔法少女ハーモニクス♪のどか』
あたし、調辺のどか。
好きなものはイチゴショートと音楽と、たくさんのお友達、嫌いなものは虫と算数。
週に一度のブラスバンド隊活動を楽しみにしてる、ドコにでもいる、フツーの女の子。
そんなあたしの子供部屋に、『冒険のタネ』は、ある日突然落ちてきた。
それは、ふわふわで、白くて、可愛い、ウサギみたいな生き物の形をしていて――。
なぜか人の言葉を話せるその子に、あたしはハモりんと名前を付けた。
ハモりんは、不思議なステッキをあたしに渡して、こう言ったんだ。
『調和者になって、世界を救って!』
そう、あたしたちの平和な毎日は、狙われていたの。
憎しみ、ねたみ、争い、絶望――
幸せな心が壊されたときに鳴り響く、悲しい『不協和音』。
その負のエネルギーで、世界のバランスを破壊しようと企む謎の魔物たち、『ヴェクサシオン』によって。
むずかしいことはよくわかんなかったケド――
『ヴェクサシオン』はすぐに現れた。
壊されていくあたしの大好きな街。
怖がって泣く、大親友の奏ちゃん。
こんなの、イヤだ!
あたしはみんなに笑っててほしい!
お友達が悲しむ姿なんて、見たくない!
ハモりんに導かれるままに、ハーモナイズ・ステッキを手にして、あたしは魔法の言葉を叫ぶ。
『ポリモード・カデンツァ!』
『ハーモナイズ・オン!』
あふれ出す光が、あたしの服を、髪を覆った。
そう、それはまるで、お姫様みたいで――
アイドルみたいで――
そして、ヒーローみたいな。
華やかな衣装に身を包んで、あたしは最初の名乗りをあげた。
『世界に響くハーモニーは、誰にも止めさせない!』
『魔法少女ハーモニクス♪のどか、参上!』
……それは、10年くらい、昔のお話。
思い出の中だけで響く音楽の、楽しく、懐かしい序曲。