幼女がろんぱ(?)で兄を叩きのめす
と言うのを目指したんだ。
「アキコ・シノノメ。お前との婚約を破棄する」
数か月前に異世界から召喚された聖女に向かって、王太子が宣言する。
「未来の王を支える聖女でありながら、俺の言うことを聞かず。勝手なことをしているお前に愛想が尽きた」
そんなことを言われてもアキコにとってはただただ困惑しかない。
学校帰りにいきなり、足元が光ったと思ったら。聖女だと言われて困惑して、ろくな説明もされずに聖女だからという一言でいろんなことを押し付けられて、文字も分からないと告げても役に立たないと舌打ちされる日々。
帰りたいと何度も泣いたが、帰る術はないとか聖女の役割を放棄するのかと此方の意見を尊重されず責められて気鬱になっていった。
それすら責められて、いっそ死ねば帰れるかと思ったほどだ。
『ねえ、お姉さん。一緒にご本を読みませんか?』
だけど、そんな追い詰められている自分に一人の少女が声を掛けてきた。
蜘蛛の糸と捉えるか、希望はより深い絶望を与えると捉えるかは人それぞれだったけど。少なくとも命を断つ選択を捨てさせてくれた。
「そんなお前には聖女の名は相応しくない。新たな聖女を迎えるために処刑する」
だけど、命を捨てるのも惜しくなったら今度はいらない者として処刑する……ああ、この世界に本当に神がいるのなら何て残酷なことをするのだろうか。
少なくとも聖女と言う役割を押し付けたその神とやらがいるのなら今すぐ蹴り付けて殴り続けてやりたい。
神は神でも疫病神だと罵りながら。
そんな私の心中を察していない王太子が部下に命じて、私を拘束しようとする。だが、
「おにいさま。それでは【誘拐犯】と【殺人犯】ですよ」
いつの間にか私を守るように前に立ったのはスイートピー姫。
「ひ、姫……」
みなが呆然としている中。
「異世界から聖女を【しょうかん】するという時点でもとの世界から【誘拐】になり、それでも聖女を大事にするからかろうじて許されていると判断して、ならば、あずかっている聖女をていちょうに扱っているのが前提。なのに、おにいさまはまず生活にこまっている聖女の【せいかつきばん】をととのえてあげるのがひっす。なのに、それをおこたっています」
舌ったらずの難しい言葉に苦戦しつつもしっかりと自分の言いたいことを述べていく姫(御年6歳)の言葉に、
「そ、それはだな……」
説明をすれば言い包められると思っているのか何かを言い返そうとしている王太子を放置して、
「そもそも。聖女の生活をととのえるために侍女をつけるはずなのに聖女には一人もいません」
「そういえば……」
「お世話しているのは誰かしら……」
今更気付いたというかのようにそんな声が聞こえる。
「そこの女が必要ないとっ!!」
「ならば、侍女をつけなくても【影】をつけるのがきそく。みのまわりの生活をささえるためにてをまわすべき」
「うっ……!!」
姫の言葉に王太子が言葉を詰まらせる。
「あと、おききしたいのですが、聖女には生活をしえんするはずの【しきん】がありました。ですが、聖女はつかっているようすがありません」
資金? そんなものがあったの。
「どこにやりましたか?」
「はっ。身につけていないだけで、使われているのなら使っているのだろうっ!! どうせギャンブルとか、男に貢いで」
「おにいさま。わたくし【せけんのじょうしき】をおしえてもらえなかった聖女がつかっているようすがありませんといいました」
「なっ⁉」
「そして、お兄さま。【墓穴】をほりましたね」
姫の側に控えていた侍女たちが動く。
そして、
「ありました」
その報告と共に本来なら聖女の生活を整えるために資金を着服している事実が発覚した。
使用用途はギャンブルと女に貢ぐため。
「アキコが悪いのだろうっ!! 私の婚約者なのにつれないで、私のいうことを全く聞かないのだから。せめて嫉妬ぐらいすればいいのに」
「おにいさまはばかだとつねひごろからおもっていましたが、やっぱり頭にゴミしかつまっていなかったのか。腐葉土がいっぱいだったのか。お花が満開だったのですね。ろくにしりあってもいない男につめたくされてもしっとするわけありませんわ。はんたいにやさしくすればまだましだったのに」
牢に収容される王太子……だった者に冷たく吐き捨てて、姫がそっと私に触れる。
「お姉さん。いえ、聖女。ごめいわくをかけました。おうぞくをだいひょうしてしゃざいします」
頭を下げる姫にどう対応すればいいのか迷うが、
「いえ……助けてくれてありがとう。また、助けられた」
こうやって助けられるのは二度目だ。
お礼を述べると照れ臭そうに顔を赤らめる姫。
その後、王太子のやらかしは問題になり、王太子は廃嫡。新たな王にと選ばれたのはスイートピー姫。
「お姉さん。これからよろしくお願いします」
頭を下げてくる様を見て、そういえば、元王太子の言っていた聖女は王を支えるものだと言っていたけど。あの王太子はお断りだけど、この姫なら支えがいがあるなと思えたのだった。
まあ、この世界に連れてきた神がそれを目論んでいたとしても叩きのめしたい事実は変わらないが。




